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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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疾風 8

 上に二階、下に一階、通路が見えるようになった吹き抜けとなった広いエントランス、もとは都市戦艦内に避難している人向けに開放されていた場所。

 警報とミカヅキのアナウンス、船員たちの指示などが混ざり合い騒がしいエントランスへとやってきた二人は周囲を探す。

 この近くにいるはずとソウマたちは手分けしてあたりを見回すが見当たらない。


「ミカヅキ、姉さんたちはどこ。ミカヅキ?」


 パネルに向かって話しかけるもミカヅキに反応はなく繰り返し生体兵器による襲撃個所の報告を続けている。

 先ほどはすぐに返答があったものの今は何の反応もない。


「なんだ、AI壊れたか生体兵器の襲撃で?」


 天井のスピーカを見上げ繰り返す放送を聞いて顔をしかめるシンヤ。


「いや、演算処理を全部戦闘系に振ってるんだと思う。生体兵器が乗り込んできて船内のカメラの分析をしてるんだと思う、生体兵器と人との区別と破損個所の被害状況とか、だから戦闘が終わるまでしばらくはミカヅキが使用できない」

「意外と不便だな」


「それだけ今の事態が重大ってこと。どうしよう姉さんどこに行ったか……ここからなら上にも下にも行けるし……艦橋かな? それとも避難区画に退避したのか……どっちだと思う?」

「しらないよ俺に聞くな、AIが使えないなら誰かに聞けばいいだろ」


「使えないとか言わないでよ」

「んじゃ、誰かに聞くか? それ以外になさそうだし」


 二人が話していると扉を破壊して生体兵器が入ってくる。

 羽を広げればかなり大きくなるが、その姿は2メートルほどの小型の生体兵器。

 翼に穴が開き飛び立つことはできないようだが、本来の力が出せないとはいえ暴れまわるだけで白い塗料を剥がして金属の壁や床を深く傷つけていく。


「いぃ!」

「うわっ!」


 双眼鏡越しでしか見ることのなかった生体兵器。

 突入してきた生体兵器からは遠いがその姿を見て二人同時に尻もちをついた。


 思っていたより大きな体、翼を広げどろどろとした血をまき散らし羽をまき散らす、全員がエントランス内を小さく震わす身のすくむような鳴き声を上げる。

 生体兵器は艦内に突撃してきて力の限り暴れまわると手すりを壊してエントランスの吹き抜けを落ちていく。


「い、今のが生体兵器……」

「でっかかった……あんなのが今たくさんこの船の外に張り付いているんだ」


 震える手足をたたいて足を進めると、遠くから破壊された扉からほかの生体兵器が入ってこないかを恐る恐る確かめる。

 扉からは艦内に入った生体兵器を追いかけて船員たちがフジツボから取り外した大型のエクエリが担がれている。

 何人かは負傷し体から血を流しているが手当てする時間もなく、被害が広がる前に生体兵器を倒そうと行動していた。


「アラタっ、あいつんとこ行かなくちゃ」

「待って、どこに行くのシンヤ」


 走り出すシンヤを追いかけるソウマ。

 そんなシンヤの走る先に生体兵器を追ってエクエリを担いだ教官たちが現れる。


「なにやってんだ餓鬼ども、お前たちは下に避難しておけ。お前たちに何かあったら艦長に怒られるじゃすまなくなる! 射的ゲームはおしまいだ、自分の命を守れ」

「教官っ。あの、姉さんたち見ませんでしたか!」


 ソウマたちを見て足を止める教官たち。


「あ? 先に避難していないのか、くそ、ほかの連中に連絡とる、邪魔にならないように廊下の端にいろ! ほかのやつは生体兵器を追ってくれ。二人は俺と一緒に避難区画まで移動だ、送り届ける」

「でも、姉さんが」

「アラタのやつが」


 指示を受け下に落ちていった生体兵器を追いかける船員、彼らに背を向けソウマたちは教官についてくるように言われる。


「いいか、二人も避難区画に移動するように指示を出しておいた。誰かが見つけ次第送り届けるはずだ。お前たちは心配せず生体兵器を撃退することだけを信じていろ」


 エクエリを担いだ教官を先頭に通路を進んでいると今までの生活では決してなかった強い衝撃。

 所の衝撃は船体が大きく横に傾くほどでしばらくして振り子のように反対側にも揺れた。

 壁も床も天井も通路がゆがみその付近のライトが壊れ暗闇に包まれる。


「この衝撃、嵐の波じゃない、なんだ今のは!?」


 教官が二人を暗闇から引き離す。

 天井のスピーカーも壊れミカヅキの声が少し遠くに聞こえる。


「なんだこれは?」


 目の前の暗闇には通路の壁をふさぐほどの大きな塊。

 ライトを当ててもそれが都市戦艦のものでないとわかるのに数秒時間がかかる。


「……これ、戦車だ」


 ぽつりとつぶやくシンヤに教官もソウマもあり得ないと答えた。


「陸からどれだけ離れてると思ってるんだ、それにどこからこんなものが」

「戦車なんて都市戦艦は載せてないよ、シンジュガイの予備としてのエクエリの砲台は乗ってるけども」

「ちげーよよく見ろよ! これ戦車の砲塔だろよく見ろよ、車体はないみたいだけどもよ、錆びてるしどこからか持ってきたんだろ」


 首をかしげるソウマを見てシンヤが怒鳴りつける。


「誰が!」

「生体兵器以外にだれが持ってくると思ってやがんだ! 俺は避難しねえアラタを探すんだ」


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