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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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疾風 6

 突然のサイレンに甲板にいた皆は周囲を見回す。

 雨で視界がぼやけてはいるが生体兵器が飛んでいる様子もなく、ぼんやりと輪郭の見える護衛艦がどこかへ向かってエクエリを撃っている様子もない。


「誤報か?」

「さっきの雷に驚いて誰かが警報装置にぶつかったのかな? 姉さん雷苦手なんだ。あ、このサイレンは落雷でミカヅキが壊れたのかも?」


 勤務が終わり交代が済んだソウマとシンヤはフジツボから船内に帰ろうとしている最中に警報を耳にする。

 合羽もフジツボにいる人分しかなく交代時にそれを渡したシンヤとソウマはやや小走りで船内へと向かっている最中だった。

 二人だけでなくほかの船員たちも空を見上げて首を傾げたり、異変がないかほかの護衛艦を見比べたりしている。


「誰かが雲の影を生体兵器と間違えて警報押したとかか?」

「誤報にしてもサイレン消すの遅くない? 生体兵器が現れたのはこっち側じゃなくて反対側かも」


 一通り周囲をみて何もいないとわかるとシンヤは甲板を後にし、ソウマも生体兵器が襲ってくる様子がないのでその場を後にした。


「ほんといつまでなっているんだか、見た感じ生体兵器なんていないし寒いからもう戻ろうぜ、あったかい風呂につかりたい」

「レーダーに影が移ったのかも、それなら目視よりずっと性能のいい機械だから僕らには間で見えなくてもおかしくないし……でも戦闘準備の指示が出ない」


 二人の進行先に扉の横に埋め込んであるパネルを使ってどこかと連絡を取っていた教官を見つけてソウマが駆け寄って尋ねる。


「この警報は誤報じゃないんですか?」

「ああ、ソウマ君。現在確認中で、どうやらアオイさんが見たとのことらしいとので、全周囲を警戒させているがいまだ発見できていない。ミカヅキ自体も何も感知していないらしい」


 教官もなにがなんだかわからない様子で連絡を取り二人はお礼を言ってその場を去ろうと扉に手をかけた。


「姉さんが?」

「そう聞くとなんか見間違いっぽいよな」


 濡れるのを嫌がって船内に入ろうとしていたシンヤが扉を少し開けたところで固まる。


「どうしたの、入らないの?」

「この船って水中の生体兵器の発見ってできるのか?」


「ソナーはあるよ、ちゃんと仕事してくれているはず。でも、それでもちゃんと指示は出るよ? 何の指示もなく警報だけなるなんて」

「仮にだけどよ、ミサイルに焼き落とされた生体兵器が生きていてよ、船に気づかれないように船体についていたら?」


「この船ダメージを受けたらセンサーが反応するけど、あとは船内の状況確認用のカメラしかない」

「船の側面ととか見るカメラは」


「ない。でもそんなことできる生体兵器なんて」

「鳥ってのは水の中の魚を捕るんだよ、少しは泳げる!」


 甲板の向こうで悲鳴が聞こえる。

 二人が振り返るとフジツボの一部分でエクエリの光の玉が飛んでいた。


「俺の言ったとおりだろ。なぁ、ソウマ」


 その騒ぎの中から人の声とは別の何かの鳴き声と金属の曲がる音。

 飛んで行った光の弾は雨を蒸発させて白い帯を作って飛んでいく。


「あれ一匹だけじゃない、警報を鳴らしたのは姉さんだ! 姉さんたちのそばにもいるはず!」

「俺らはフジツボに戻らなくていいのかよ!?」


「今後退したばかり戦闘はほかの人がしてくれる、僕らは消火活動やバッテリーの運送とかの補助」

「ああ、そうかそうだった。んで今どこに向かってんだ?」


 シンヤを押して扉の隙間に手を入れると開きかけの扉を一気に開きソウマは艦内へと入ると走り出す。

 全速力で走り出すソウマをシンヤは追いかけた。


「ミカヅキ、姉さんはどこ! 生体兵器は!」

『二階エントランスに向かって移動中。甲板上で7匹の生体兵器が暴れています』


 走りながらソウマが叫ぶと声を認識したミカヅキが、追いかけるように天井のスピーカーを使って返事を返す。

 アオイの位置を聞いてソウマが来た道を引き返し少し前に通り過ぎた細い通路へと入る。


「シンヤこっちが近道」

「待てそっち表に出る道だぞ。ああ、表の梯子と階段使えば廊下を移動するより早いか」


「早く、いそいでシンヤ」

「うぅ、冷たい」


 分厚い鉄の扉を開けて再び外に出る。

 都市戦艦の中も外もやまないサイレンの音が鳴り響き、濡れた甲板を走り風にあおられ雨に足元を取られて転びそうになるソウマ。


 騒ぎの方向に駆け付ける船員たちの横を邪魔にならないように通り抜け、鉄パイプの手すりにつかまりながら音を立てて鉄板の階段を上る。


『上空に生体兵器の反応を検知、距離は3000並走するように飛びゆっくり接近中、9時の方向、数200。2時の方向、まっすぐこちらへと接近中数200、250、300まだ増える!』


 雨音に負けない音量でスピーカからの報告を聞いてシンヤは立ち止まり空を見上げる。

 時々雲の中で稲光が見えるものの生体兵器は見えない。


「責めてきたぞ、こんな強い雨風でもミサイルはちゃんと飛ぶのか?」

「甲板上の生体兵器を退治しないと無理。倒すだけじゃなくて隠れていないか隅から隅まで調べないと発射できない、だから……」


 敵が見えないまま攻撃支持が出るフジツボやシンジュガイの砲が上を向き雲の奥にいる生体兵器を探す。

 雨の中どれだけ目を凝らしても生体兵器は見つけられずシンヤは、重たい扉を開けているソウマに追いつき船内へと戻ってアオイを探す。


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