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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
9章 ただ助けたくて ‐‐戦うことを強いられる呪い‐‐
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それは光を反射して 1

 ココノエが一定のリズムで振動する地面で落盤しないかを心配し、天井に光を当てて暗い地下道をすすんでいると視界の先できらきらと水面を反射する小さな光が見える。


 地下は先ほど降った雨水が流れ込みどこにも流れていくことのできない。

 雨水が踝のあたりまで溜まっていて、地面が揺れるたびに小さく波打っていた。


 通路の先、地下通路の出口から洩れる光、日が傾き伸びた光が通路の奥にまで差し込んできていてココノエは待ち伏せに注意しながら角を曲がり光の差し込む階段を見る。


「あまり距離は離れていないがどこに出るか……」


 階段に近づくとバッテリーを確認し恐る恐る外の様子を確認する。

 近くに死んでいる方のウォークキャッスルが見え巨大な方のウォークキャッスルはその陰になって向こうから死角になっていた。


 あの巨大な生体兵器以外にまだ潜んでいないか周囲を見回してから姿勢を低くして走り死骸へと向かう。

 死骸の周囲には血だまりと別の棘のような鱗などの生体兵器の体の一部が散らばっていてそれらに囲まれるようにウォークキャッスルが死んでいる。


 死骸には主だった外傷はなく、目立つところは口から生体兵器の尾が出ているのと赤い泡を吐いて白目をむき死んでいた。


 ――食した棘が引っ掛かって窒息したのか? いや、毒か……毒を分泌する種類でこいつを丸ごと食べたから死んだか、生体兵器としては珍しく自らを食わせて生体兵器を殺すタイプなのか……。なんにしてもこの方法では倒せないか、あいつに食わすとしてももうこのあたりにはいないし、仮にいたとしてもあの怪物を倒すのに何匹必要になるのか、俺たちじゃ見つけられなかった弱点か倒す方法が何かあればと思ったが、毒じゃあまり参考にはならないか。予想してたが。


 いまだに地下通路を掘り広げている巨体に気が付かれないうちに死骸から離れ、建物の影へと隠れた。

 このまま逃げれればとも考えたが基地の外は基地のそばなら戦車の残骸などが転がっているがそこからさらに離れてしまうと見渡す限り草むらが広がり、そこを走っていれば一目でばれてしまうだろう。

 かといって今通ってきた地下通路の道の順からして基地の内側に伸びていて基地の外には通じていない。


 ――倒すか諦めてここから離れていくのを待つしかないか……倒すのは現実的じゃないな、仕方がないが夜までここで待つとするか。まぁ生体兵器が蠢きだす夜中に行動するわけもなく日が昇るまで動けないが。


 夜は昼間より、より多くの生体兵器が活発に動き出す時間帯。


 ――戦っても勝てない、見つかれば一巻の終わりで出たくても出られない、状況はだいぶ違うが昔のヒャッカもこういう感じだったのだろうか。だとしたら、たまたまだったが助けに来てくれたキュウにべったりだったのもわかるな。この状況を絶望や理不尽を吹き飛ばすことができるのなら、自分のためじゃなかったとしてもヒーローだ。


 焦っても仕方がなく鞄を漁り水筒を取り出し水を飲む。

 もう戦闘はなくひたすら隠れるだけ、相手は今度こそ完全にココノエを見失った。


 そう考え大きなため息をついた時だった。


『ノエ、ノエ! 聞こえていますか? ノエっ、まだ電波届かないのかな、もっと近づかないとダメか』

「キュウ!?」


 慌てて通信端末を取り出すを一度ウォークキャッスルの方を見て、こちらに気が付かれていないことを確認すると声を潜めて応答する。


「キュウ、気が付いたのか、どこか……」

『のえ!! 無事でしたっすね、よかった!』


 応答を返すと話の途中でココノエの声に反応したキュウの高い声が返ってきた。


「……どこから連絡しているアンテナ車か?」

『私一人です。助けに戻ってきましたっすよ!』


 目を見開く。


「馬鹿か、そのまま戻れ。一年前のクオンのこともあってわかっているだろウォークキャッスルはとても俺らじゃ倒せない、戻るんだ」

『いやです。ココノエ一人置いて逃げ出すくらいなら私も一緒に。もうすぐ前線基地につくっすよ』


 そういわれ慌てて周囲を見渡す。

 ココノエの位置からは見つけることのできない死角か、通信の間だけ見つからないように前線基地の近くの地面に伏せているのか見える範囲にはいない。


「お前はまだまだ見つかっていない、引き返せ!」

『嫌っす。死ぬときはノエと一緒に……』


「今はふざけている場合じゃないのはわかるだろう。こっちは大丈夫だ、朝まではこいつも俺を探してここにいるってことはないだろう、あきらめるはずだ。俺はこのまま隠れきる、だからシェルターで待ってろ」

『嫌です、ノエと離れるだなんて。ノエは私を助けてくれたんです私が今度は助けないと』


 ココノエの声に思わず力が入りウォークキャッスルが動きを止める。


「何年前の話だ、それにあれは人相手だからできた。こいつは生体兵器で、特定危険種で、俺らのエクエリじゃどうしようもない強者なんだぞ。戻れ」

『もう来たっす。どこにいますか?』


 話を聞かず噛み合わない会話を続けるキュウ。


「クオンが死んだのは俺が不注意だったからだ、もう隊から犠牲者を出したくないだからヒャッカと負傷したお前を逃がすために、ここの残ったのに。それをお前は……」

『もう、もうノエしかいないんです。わたしだってもう私の好きな人が誰も死んでほしくはないっすよ』


 最後にすごく寂しそうな声色でつぶやくと通信は切れた。

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