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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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特定危険種、15

 バッテリーは邪魔だからここで捨てる。

 そうと決めたらコリュウの行動は早く、エクエリをいったん置きイーターの攻撃を躱したのちベルトを外して重たいカバンを持つ。


 それを大きくスイングしてイーターに投げつける、しかし不幸なことにそれは攻撃中のイーターにあたり、ものすごい速度で彼に返された。


 その勢いを殺す室外機が近くになく、今度こそコリュウは屋上から落ちた。


 やっぱり兵舎によらず逃げていた方がよかったのかもしれない、すべては起こったのちで出来る反省だが。


 飛んできた鞄の勢いがあり落下は真下ではなくやや横に落ちて行った、何であれこのまま下に落ちる、運が良ければ足が折れる程度で済むだろう、木も花壇もないここでは硬い地面が待っている。

 空中でそう考え、そしてコリュウは落下した先にぶつかる。


 落ちた衝撃は痛かったが思っていたよりずっと小さかった。


 地面が大きく揺れている、地震のような小刻みな揺れではなく振り子のような大きな揺れ、気が付くと彼はクレーンからぶら下がる資材に乗っかっていた。


 二階の高さ同じくらいの位置で止まっていた資材はコリュウが乗るには足場は小さく、一緒に飛んできたバッテリーの詰まった鞄は下の地面に落ちていった。


「コリュウ、飛べるか?」

「コリュー、早く飛んで!」


 落ちてきたコリュウの姿が見えたのだろう、すぐに軽装甲車が迎えに来た、イーターの体当たりを受け軋む体に鞭打ち、コリュウは急いで目と鼻の先にある車の屋根に飛び移り車内に入る。


「大丈夫? 怪我はない?」

「ああ、ってあれ?」


 運転手はツバメに代わっており、消毒液、絆創膏、ガーゼ、包帯など医療キットで自分の手当てをしていたイグサはその途中でコリュウを車にに引き入れる手伝いをしてくれていた。


 進行方向正面には崩れた渡り廊下があるので、元来た道を戻るために狭い兵舎と兵舎の狭い場所で何度も車の切り返しをしている。


「あんまり言いたくはないけど、助かったよコリュウ。でもやっぱり囮になるなんて無茶はやめて」

「隊長の真似をしたまでです」


 コリュウに怪我がないか触って確かめるイグサ、彼がエクエリを持っていないの気が付く。


「あれ、コリューのエクエリは?」

「落とした」


 武器を失いさらに戦力が落ちた。


「私は精鋭としての活動な長いからいいけど、お前たちはまだ一般兵よりいくらか強いだけだ、私にできることがお前たちにできないことだってある。だから、私の真似はしないでほしい」

「わたしは、できないことはしないけどね」


 ツバメの真剣な話を台無しにするイグサはコリュウに怪我がないことを確認すると自分の治療に戻った。


「お前たち二人は私の隊の大切なメンバーなんだから、私より目立つの禁止。危険なことは私に任せればいいの」

「戦場でそんな余裕があればですけどね」


「とりあえず、コリューもツバメもわたしを守っていればいいと思うよ」

「あれ、私まじめな話してなかった?」

「とりあえずイーターが来る前に逃げようよ」


 などと話していると、上から金属が軋む音がするイーターがまた何やらしているようだ。


 しかしイーターは追ってこない、3人まとまると襲ってはこないのだろうか。


 車はすでに迂回し瓦礫などをよけながら兵舎を後にしようとしていた、後ろでコリュウが落ちた資材が音を立てて地面に散らばる。


「何の音?」

「俺が乗ってた資材が落ちた音です」


 ツバメがコリュウに問いかける。

 振り返り地面に落ちた資材をを確認したコリュウはツバメに見たままを報告した。


「なんで?」

「何でって……そりゃ」


 ツバメの疑問にコリュウの肩を引っ張るイグサと上を見上げると、上からゆっくりとクレーンが軋み撓む音を立てこちらに倒れてきた。


「わわっわ!」

「避けて避けて!」

「やってるよ」


 ツバメの急ブレーキで、コリュウとイグサが後部座席で派手に転ぶ。


 車の目の前をふさぐように兵舎の屋上に取り付けてあったクレーンが倒れた。


 地面に落ちた衝撃で破片が飛び散り、強化ガラスの窓に金属片が突き刺さる。


「これ、どうやっても私たちを基地から出さない気か?」

「しつこい!」


 車の側面をクレーンの残骸にこすりつけ火花を散らせながら止まる。


「隊長。俺のエクエリもなくしました。もう戦えるのは隊長だけです」

「あーうん、聞いてた。もう逃げの一択だね。はいお疲れ様でした」

「あそこまで頑張ったんだから、たおしたかったなー」


「……え、イグサ今なんつった?」

「イグサ、今日一発も撃ってなくない?」


 コリュウの質問にイグサは不思議そうな顔をする。


「そうだけど、それが何か? 気持ちの問題です。あ、違う戦場跡地でグールに撃ったよ!」

「とりあえず隊長のエクエリ貸してください、俺が使います」


 助手席に置いておったツバメの鞄からエクエリを取り出すと軽装甲車両に乗る前にコリュウから渡されていた最後のバッテリーを取り付ける。


「天窓閉めて、兵舎の壁壊してここから抜け出す」

「わかった」


 ツバメが車を動かした直後、フロントに室外機が落ちた。

 それも一つではなく、さらに上から四つ。


「みんな降りて!」

「イグサ、俺に掴まれ」

「コリュー、ツバメのエクエリ忘れてるよ」


 ツバメが運転席から転がり出る。


 イグサはその手にエクエリを持って、コリュウが彼女を抱えて後部のドアを開けて飛び出す。


 その後、落ちてきた室外機によって装甲車の天井が変形した。


 シシシシシ……


 頃合いを見計いイーターが上から降りてくる。


「どうするんですかこれ、俺達にはもうこれしかないですよ」


 イグサの方を見るとイーターに向かってエクエリを撃っていた。


「ちょっと、それもう最後のバッテリーなんだけど」

「私は撃ったよ、これでもう一発も撃ってないなんて言わせない」

「こんな時に」


 呆れているとイーターが接近してくる。


「……イグサ、最後にお前のエクエリで撃ったのって何だっけ」

「……炸裂式雷撃弾……だと思う、どうして?」


 指さす先はイーターの顎。


「何とかしてあの口の中に入ってるやつ使えるようになりませんかね」

「あのすばしっこい体をおとなしく出来たら取れるんじゃない?」


 あれだけの衝突衝撃がありながらもびくともせず口の中に挟まっているイグサの大型のエクエリ。

 あれを引き抜くには、大顎を何とかするしかない。


「イーターの行動封じて、毒に注意しながら、かなりの力で引っこ抜くんでしょ?」

「無理だね」


 3人はイーターと向き合う、これからほぼ素手でこいつを倒すために。

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