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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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特定危険種、14

 イーターがどこから出てくるかわからない以上下手に動けない。


 シシシシシ……


 またあの音だ、床に開いた穴から、真下から聞こえる。


 シシシシシ……


 しかし今度は今までになく長い、すでに10秒以上続いている。

 俺たちが動くのを待っているのだろうか?

 手元でツバメがもぞもぞと動くとコリュウの鞄からバッテリーを一つ取りリビングへ投げる。


 ツバメの投げたそれはバッテリーではなくイグサが何となく拾ってきた金属の塊、急いでいたからコリュウは机にあったから何でもかんでもまとめて鞄に入れたのだろう。


 ゆっくりと放物線を描きながら回転する鉄塊が床に落ち、ガシャガシャと小さな部品をまき散らし転がる。


 直後、まるでそれが爆薬だったかのように床が吹き飛んだ。


 床を突き抜けイーターが天井に登っていくタイミングでツバメがコリュウの腕から降りて走り出した。


「逃げるぞ」


 しかし、そう言ったツバメの走り方がおかしい、右足をかばっているようなびっこひいた走りだ。

 コリュウは先に走り出した彼女に追いつくと速度を落して走る。


「足、どうかしたんですか」

「何でもない、頭ぶつけて着地に失敗しただけだから」


 ツバメのこの足では、逃げている最中も襲ってくるであろう上下からの攻撃をかわせないかもしれない、隊長は強化繊維の制服も脱いでいる、この状態で攻撃を受ければ致命傷だとコリュウは、イグサとたいして差がない身長だから、抱えて走ることもできたのだろうと考えた、がそれだとイーターに狙われたとき二人まとめてやられてしまう。


 今動けるコリュウがとれる選択は一つだった。

 部屋を出ると隊長を追い抜き真っすぐ窓へ走る。


「コリュウ?」


 そして飛び上がり彼は窓を割って表へ飛び出す、今イーターが音を頼りに襲ってくるのなら窓ガラスを割った音ぐらい聞こえただろう。


「こりゅう!」


 一階に落ちるのではない、降りた先は兵舎と兵舎をつなぐ渡り廊下。


 いまだ鉄骨だらけの骨組みだがその上を足を踏み外さないように走る。

 これだけしているのにイーターが追ってこないので、コリュウは渡り廊下の中腹ほどで止まり、後ろを振り返る、すると彼は恐ろしいものを見た。


 止まり切れなかった列車が猛スピードで崖から落ちるような、赤い砲弾が黒い残像を残して飛んでくるような、イータがコリュウに向かって二階の屋上から飛びかかって来た。


 咄嗟にエクエリを構えたがやめた、逃げた方がいい。


 イーターはコリュウのやや手前に落ちると鉄柱が撓み、ねじやボルトが弾け飛ぶ、足場の鉄骨が宙を舞い、衝撃と風圧それと吹き飛んだ渡り廊下の破片に押され、隣の兵舎の屋上にまで彼の体は打ち上げられた。


 でも、向こうの建物の窓に見えるツバメはこの間にも逃げていく、ちょうど階段を降り始めたところだ。


 コリュウはそれを確認し体勢を立て直す。


 渡り廊下を壊し屋上に登って来たイーターは、クーラーなどの室外機を破壊しながらクレーンを囲むようにUの字を描いて止まる、どういうことだろう体を真っすぐにしていれば小さかった被弾面積を増やした。


 イーターは判断を誤ったのだろう、あれだけ側面や背後を取らせないようにしていたイーターがここでこの愚行。

 勝機はある。


 コリュウは一箇所に狙いをつけ連射、撃った、撃った、撃った。


 隊長に二つ渡したが未使用のバッテリーの替えは一つ持っている、それに今さっき手に入れた使いかけのバッテリーもたくさん。

 当てられる距離、残り全部使ってやると空になったバッテリーを取り外しコリュウは最後の新品のバッテリーを取り付けた。


 触覚を狙われ嫌がるイーター、狙っていた頭が急に遠ざかるしかしU字、頭は横に移動するだけ。

 そう思っていたと同時にコリュウは、真横からとんでもない衝撃を受けた。


 勢いよく屋上を転がる、何が起こったかわからない。

 一時的に呼吸が止まりむせ返る。

 思い出せるのはイーターは逃げていった、いや……頭がさがっていった、ここにきてもう一匹いましたなんてのは御免だ。


 周囲を確認する周りにはイーターしかいない。


 コリュウのいた位置にはイーターのしっぽが、触覚にも似たアンテナ状のとげか足みたいなものがついた長い体の最後尾がある。

 頭が赤くなかったらあるいはしっぽが赤かったら一瞬どちらが頭かわからないだろう、ダミーの頭。


 コリュウのいた位置にイーターの体がある、つまり彼は今、あの長いから体の最後尾で攻撃を受けたことになる。

 U字の意味、被弾面積が増えたリスク、コリュウの中でつながる。


 赤い頭で気を引いて注意の薄い横からの攻撃。


 常にどちらかが死角に回り込んで攻撃の隙を窺う、どこかで見たことのある戦い方。


「ハハハ……これじゃまるで俺と隊長の戦い方じゃないか」


 助走がない分今までのどれより威力はないが、それでも何メートルもよろめき吹き飛ぶだけの威力がある。

それに加えて後部からの攻撃は、頭部からの攻撃より遅くあまり早くない、場所に余裕が避けられそうな速度。


 コリュウができることは距離を取って頭と尻尾の両方を見て攻撃範囲を視界に入れておくこと。

 そう思ったがこれ以上彼は距離は取れなかった、今彼がいる場所は兵舎二階屋上、広くない限られた足場に終わりはある。


 コリュウはちらりと下を見るがさすがにこの高さを飛び降りるわけにはいかない、偶然見かけた隊長は表を走り車に向かっていた。


 ここから降りるには渡り廊下のあったような一度、できれば二度ほど落下の勢いを殺す足場がいる。

 イーターの頭が室外機を放り投げる、それを目で追いかけ上に注意が行ったところで襲ってきたイーターの攻撃尻尾を予想しよける。

 しかし、尻尾が引いたと思ったらそのまま頭が突っ込んでくる。


 片方しか残っていないが毒をもつであろう大顎だけは、攻撃を食らうまいと身をよじり体当たりを受ける。

 コリュウの後ろにも室外機があったことでそこに叩きつけられ屋上から落ちなかったが、背中に受けるダメージからそんなに取りたくない手だった。


 それにしても重い、鞄が3人分の使いかけのバッテリーはコリュウの機動力をかなり奪っている。

 出来れば半分くらい捨てたい。


 そう考えているとまた室外機が飛んできた、仕方なくそれを躱す、射撃体勢を解いたコリュウにまた尻尾が襲ってきた。

 避けられない、やはり鞄が邪魔だバッテリーはここで捨てていくあきらめよう。

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