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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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特定危険種、12

 朝顔隊三人を乗せた車は丘の周り、兵舎側の駐車場、大きな通り、地下入り口側の駐車場の広場を一周するように走る、どこに向かって走っているのかわからない。


 たぶんイグサも指示がないからどこに向かっていいのかわからないのだろう。


 その指示を出すはずのツバメは、上がった息を整えるためゆっくり深呼吸をする、その後俺の隣で大きなため息をついた。


 イグサはボロボロだし、ツバメもかなり疲れているだろう、ここは俺が何とかしなければいけないのだろうかとコリュウは自分のエクエリを確認する。

 エクエリのバッテリーはあと一つ、今使っているのももうすぐエネルギーがなくなる。


「ふ~汗だく、私ちょっと休憩するからイグサ適当に基地内ぐるぐる走ってて、この車燃料持ちそう?」

「んー、まぁ、まだまだ走れそう、たぶん大丈夫」

「今更ですけど隊長、基地内で爆薬って使っていいんですか?」


 イーターが追ってくる中ツバメは一息つく。


「しらない、けどいいんじゃない? 爆弾使わなくてももう十分壊れてるし。気にしない気にしない」


 そういうとツバメは鞄から水筒を取り出し飲み始めた。


「おっと、イーターが追ってきましたよー……早いな……」


 車が一段と速度を上げる。


 コリュウは窓から外を後ろを追ってくるイーターを探す、稲妻みたいに瓦礫を躱し蛇行しながら車との距離を縮めるイーターは今までの比ではない速度で走っている。


 駐車場は戦場跡地にほとんどの車両が向かったため、もともとあまり車が止まっていなかった。

 駐車場だったこともあり障害物となる車の数が少なかった。


 追ってくるイーターは何度か車や瓦礫を飛ばしてきたが、音が大きいので運転中のイグサにも何が起きているかおおよそわかるのだろう、何も言わずに回避する。


 大きいのは避けて、軽装甲車の装甲が細かい破片をはじいた。


「おっと。うげっ水こぼした、冷たいっ」


 ツバメは一度鞄を外し濡れた制服の上着を脱いで、タンクトップのシャツ一枚になるとまた鞄を付け直した。


 制服を脱いだ白い肌に赤い線が何本も伸びている。


 強化繊維で出来た制服を脱ぐのは危険だったが、それでも脱いだのは車の中で生体兵器と一対一で戦っていないからだろう。


「よし……さて、んじゃやるかな」


 水筒を鞄にしまいながらツバメは、揺れる車内でコリュウの肩を支えに立ち上がる。


「今度は何するんですか」

「さっきと同じこと」


 ツバメは天窓から顔を出すと後ろから追ってくるイーターを確認した。


 全速力ではないにしろ、かなりの速度で走っている。


「イグサ、多少揺れてもいいから思いっきり飛ばせ、でも瓦礫に乗り上げて横転はさせるなよ」

「え、ん、はーい。さっきあんまし瓦礫が落ちてなかった場所が、食堂の近くにあったんでそこに向かいますね」

「隊長俺は何をしたらいいでしょう、ここからエクエリでも撃ってますか?」


「だったら私の足抑えていて、なんかの拍子に落っこちないように」


 そうはいってもツバメもスカートにタイツなんだよなぁ、瓦礫をよけるため車が左右に曲がるとひらひらと揺れる揺れる、コリュウはとりあえず無難に腰の鞄のベルトをつかんで彼女をささえた。


「最後のやつ使うから、とりあえず衝撃に備えといて」


 ツバメは携帯端末を取り出し片手で操作しながら、鞄から爆薬を取り出す。


「わたし運転苦手だから、ツバメ大きく揺らされるとバランス戻せないかも」

「イグサ、なるべくイーターを引きはがしてくれると助かるんだけど、まだスピード出せない?」

「もうすぐ瓦礫の少ないところにつきます、数秒だけど全力で飛ばしますどっかにつかまってて!」


 さらに速度は上がる、引きはがしかけたけどそれでもすぐにイーターの方も一段と速度を上げる。


 それでも、イグサは大きく振りかぶって爆薬を投げた。

 すぐに端末を構え飛んでくる爆薬を避けようとしたイーターと重なったときに起爆させる。


 全部で15個あった、戦場跡地でグールに10個、地下倉庫で1個、俺が合流する前の戦闘中に1個、車に乗るための時間稼ぎに2個、そしてこれが隊長の持っている最後の爆薬、できればこれは今度こそ直撃させたい。


 コリュウもツバメも強く拳を握り爆発を見ている。

 衝撃や爆風に煽られることなく車は減速を始めた。


「どうです?」

「しとめた? やっつけた?」


 ツバメの横からコリュウも天窓から顔を出す、爆発の黒煙はみるみる遠くなっていく、その黒煙からイーターは現れない、車を追ってこない。


 元々バックミラーは無く戦場跡地で片方のサイドミラーが壊れているため、後ろが確認できていないイグサは結果を聞いてくる。


「来ないですね」

「ふぅー、もう一日に二匹の特定危険種と戦うのはこりごりだ」

「たおしたの? じゃあ今度こそ終わりだ!」


 コリュウとツバメは安堵の表情を浮かべていた。


「一応、死骸を確認しないとイグサ、Uターン」

「はーい」


 ツバメとコリュウは一度車内に頭をひっこめた、その時だった。


 イグサの雑な運転で強くハンドルを切られた軽装甲車は、減速が間に合わず急カーブ、タイヤが白い煙を上げながら微妙に横滑りした。


 車内のものすべてが見えない力で片方に引っ張られる、といっても後部車両にいたコリュウとツバメのことだが。


「雑っ!」


 バランスと崩したツバメがコリュウに倒れてくる。

 二人重なるように倒れ、天窓から先に頭をひっこめたコリュウの頭に彼女の胸が押し付けられる。

 ツバメは強化繊維の上着を脱いでいたので柔らかい感触が……。


「おまっ、こんな時にどこ触ってる!」

「いや隊長が俺に当てて来てるんです、俺のせいじゃ」


 後ろの騒ぎを聞きつけイグサがボソッとつぶやいた。


「変態……」

「違うってば、イグサ。こっち見て確認してみろよ」


 シシシシシ……


「えっ! 死んでないよイーター。ツバメの嘘つき」


 イグサの報告がイーターが健在であることを伝えていた。


「避けられた? 耐えた? ……うわーまじかー、完全に直撃だと思ったのになんつう……いや、さすがに三度目だし学習されたか? で、いつまで触ってるの?」

「じゃあどいてください、隊長が俺の上にいるんですから」


 体を密着させているコリュウとツバメはお互いに起き上がらろうともがいていた。


「顔赤いよ、戦闘中なんだから変なこと考えないの」

「いいから離れてください!」


「足がお前の足の下にあるんだ、すこし腰をあげろ」


 今の状態ではコリュウもツバメもお互いに外を見ることができないので、イーターがどんな状態かわからない。


 聞こえてきた音だけでイーターが死んでいないことだけはわかった。


「ツバメ、こっちから見るとスカートめくれあがってるよ? えっちい」

「おい、よそ見すんな!」

「ちゃんと運転してなさい!」


「コリューが見ろって言ったんじゃん」

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