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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
8章 新たに咲き開く希望 ‐‐最前線を目指して‐‐
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闇は笑う 3

 

 居住スペースの大きなモニターにつなぎドローンを操作していたレンカは、ドローンのバッテリーを交換し再び戦線基地に戻ってくるとすぐ、カズヒサが生体兵器に飛び掛かられている姿を見る。


「まずい、このままじゃ二人が危険だ。迎えに行かなくては」

「このまま待ってるんじゃ? 迎えに行くってこの車を誰が運転するんですか」


 一足先に帰ってきていて水を飲んでたイナホも、ソファーに座ってレンカの操縦するドローンの映像を見ていて、二人が窮地に陥っているのを見ていた。

 カズヒサがエクエリを生体兵器に取られたところで彼女の態度も変わる。


「私は……できなくはないだろうが、運転したことないから荒くはなる」

「了解です。私、隊長のエクエリ持って助手席で警戒してますね」


 ドローンのコントローラーから手を放し立ち上がると壁伝いに運転席へと移動する。

 一応大型のエクエリを持ちながらもレンカの小型のエクエリを取りに行いって、そこから運転席に移動したイナホが先に助手席について天窓を開けた。


「準備万端、さぁ助けに行きましょう」

「も少し待ってくれ、運転は久しぶりなんだ。それに目線もすごく高い、ちょっとならしながら向かう」


 やっとのことレンカが運転席につくとシートベルトを着けエンジンをかける。


「そんな時間があるんですか?」

「丘を横倒しに転がって前線基地へと向かいたくはないだろう? 最悪私たちが負傷兵だぞ。さ、発車する、運転荒いからしっかり捕まっていろよ」


 レンカの運転でトレーラーは前線基地へとむけてゆっくりとだが走り出す。



 建物内のカズヒサとコウタロウ。

 コウタロウは暗闇に消えていった生体兵器の突然な出現で動揺を隠せない。


「カズヒサ副隊長。エクエリが!!」

「そんなのいいから表に出ろ! ここは天井や壁とさっきの生体兵器に移動に有利な地形だ。取られたものはほっといてここは引くぞ、そこにドローンがいるだろ俺が今襲われたときにはいただろうから今の生体兵器を映っただろ、映像は録画されているはずだ。もうここに用はない、後日別の精鋭が討伐に来るだろうよ。今は俺らがこの基地を抜け出すのが最大の目標だ」


 死骸の奥の暗がりから笑い声のような鳴き声が聞こえてくる。

 二重、三重と重なって。


「数増えてませんか?」

「だから急げっての、囲まれるぞ」


 後ろばかり振り返るコウタロウの肩を引っ張り建物の外へと出た。

 建物を出した直後、通路の奥から小型の生体兵器が大挙として現れ、天井壁はと張り付き地は駆けるような足の速さで迫る。


「奥からたくさんきましたぁぁ!」

「いつまでも見ていないで走れ、ここを出てトレーラーまで全力で走るぞ。あれらは屋内戦闘を得意とする生体兵器のはずだ、屋外に出るまで多少躊躇するはずだ。それまでに逃げ切る」


「了解ぃぃ! にげまぁす!」


 全力で二人が建物から離れると生体兵器はそこから追って来なくなる。

 きつい猫背の二メートルに届かないサイズの大の大人と同じサイズの生体兵器たち。

 十数匹程度追ってくるのが見えたが一匹たりとも窓から外には出てこない。

 その場で離れていく二人を眺めていた。


「無事に基地から出れましたね」

「ああ、だがもう日が落ちる走るのをやめるな、死ぬ気で走れ」


「うおぉぉぉ! でも生体兵器が襲ってきたらエクエリで倒せば?」

「数が多い。それに向こうに有利な地形から出たとしても、これからの時間、夜目が聞く向こうがまた有利になる。俺らができるのは逃げることだけだ」


 それからすぐに日は落ちた、まだ空は赤と紫が混同するような色だったがカズヒサは舌打ちをする。


「判断を誤ったか、こりゃ逃げ切れない」


 基地から一番近い丘を登りきると正面から重低音なエンジン音が聞こえヘットライトの明かりの奥にトレーラーが現れた。


「おーい、こっちこっち! 迎えに来た、停めてレンカ隊長、とめて~」


 イナホが二人を見つけトレーラーは速度を落とす。

 運転手のレンカがブレーキがうまく踏めず止まるまでに丘の半分を下ることになったが。


「大丈夫か? 早く乗れ、ここから立ち去るぞ! ……ああいや、運転を代わってくれ頼む。のわわっ!!」


 シートベルトを外し扉を開けると、範囲を間違えて扉に引っ張られ運転席から落っこちるレンカをカズヒサが受け止める。


「無茶して、何してんだ。ほらちゃんと立て。さっさと逃げるぞ、先に登れレンカ、お前の足じゃ裏から戻るのには時間がかかりすぎる」

「隊長、わざわざ助けに来ていただいて、あざぁぁす!」


 レンカを担ぎ上げ運転席へと押し込むと後を追ってコウタロウとカズヒサが乗車しドアを閉める。

 半身乗り出していたイナホが車内に向かって叫ぶ。


「来た! 隊長、来た来た!! あの前線基地からたぶん30匹ほど、まっ直ぐこっちに! 早く逃げましょうよー」


 運転席についたカズヒサはヘットライトを消し丘を下りながら帰還のため、シェルターに方向を変えるようハンドルを切る。


「ほら運転の邪魔だ。レンカは後ろに行け、コウタロウはここに居ろ戦闘になるぞ」

「わかった。私は居住スペースの方にいる」


 前のめりに傾く車内はゆっくりと方向を変え丘を下り、前線基地に背を向けたころには生体兵器たちに追い付かれる。

 居住スペースを牽引している分、あまり速度の出ないトレーラー、加えて加速も遅い。


「もっと速度は? この速度じゃ追いつかれます!」

「もう道が暗い、うっかり瓦礫乗り上げて横転したくないだろ。それにこの車両の装甲なら小型の生体兵器の攻撃位ならしばらくしのげる。それより戦闘になるぞイナホも車内に入れ体捕まれたら車外へ引っ張られるぞ、戦闘は窓が割れてからだ」


 それからすぐにビタンと音がし生体兵器がトレーラーに取りつく。

 そして独特な鳴き声が聞こえる。

 居住スペースの壁の装甲は分厚く、噛んでもひっかいても嫌な音を立てるだけでほとんど傷がつかない。

 流石にタイヤに轢かれるようなものはおらず次々と居住スペースに張り付き運転席側まで移動していく。


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