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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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特定危険種、11

 次から次へと飛んでくる資材から、二人とも盾にしている車の陰から出られない。


 コリュウは何とか隙を見つけて攻撃しようとしているが、今出ればいらない怪我をする。


「な、頭いいだろあいつ。攻撃を遠距離攻撃にシフトしてきた」

「これさっき言ってた時間かければかけるほど強くなりますよね、時間稼ぎがマイナスに働きませんか」


 泣きそうな顔で笑うツバメ、相当心に来ているようだ。


「じゃあどうするのさ、昆虫型は頭潰しても生きる奴がいるんだ、決死の覚悟で奴にとりついたとして一箇所に集中攻撃しても死なないかもしれないんだぞ」


 資材に、建物の壁に、瓦礫に、その辺に停まっていた車に体当たりを繰り返す、しっかし頑丈な頭だな、飛ばされた車が火花を散らし豪快に地面を飛び跳ねる。


「ここもやばい離れろ!」

「いわれなくても!」


 飛んできた車と盾にしていた車がぶつかり、お互いの燃料が炎上する。


 あぶり出されるように隠れている場所からバラバラに出てきたツバメとコリュウに、イーターは一気に距離を詰めてきた。


「そっちに行ったぞ、コリュウ!」


 彼に注意を促し、こちらに注意を向けるようにツバメはエクエリを撃つ、どこでもいい当たりさえすれば。

 しかし、今回はよけない、若干の蛇行はありながらもイーターはコリュウに向かって真っすぐ走る。


「とっとと、まじか!」

「コリュウ、触覚を狙え! 今回こいつ私たちの攻撃よけないに気だぞ!」


 体勢を立て直す暇もなく何の遮蔽物もない場所に突っ立っているコリュウはエクエリを乱射する。


 さすがに触覚が大事なようで頭をそらしコリュウの攻撃は回避する、そして攻撃のタイミングを失いそのままコリュウの横をかなりの速度ですりぬけていく。


 一度こちらに向きを変えるとまた車を吹き飛ばしてきた、今度は立て続けに2台、今度は私を狙って。


 距離のある分、飛んでくる車は躱しやすく、ツバメは飛んでくる二台の間を最小限の動きで右に左にとすり抜けた。


 次は何を飛ばしてくるかとイーターに注意を向けると、やつはずっと近くにいた、彼女が二台をよけるため転がってくる車を見ている間に、その間にやつは距離を詰めて来ていた。


「なぁっだと!」


 身をよじりエクエリを放ちながら後ろに飛ぶ、コリュウも応戦しているがやはり無視。


 多少のダメージは必要経費なのだろう、イーターは止まることなく突っ込んでくる。


 まずい、非常にまずい!


「このぉぉ!」


 さっきコリュウがしたように触覚を狙う、やはり効果があるようで攻撃を受けるのを嫌がったイーターの攻撃はツバメからそれた。


 次から次へと策を攻撃方法を変えてくるイーター、おそらく無傷で勝てる相手だと思っていないのだろう、一人いないけど朝顔隊の力思い知ったか、なめてかかると怪我するぞ。


 ふとツバメは自分のエクエリを確認する。


 コリュウを助けるときと身を守るときで結構なエネルギーを使った、このまま無駄撃ちが続けばあっという間に残りのエネルギーがなくなる。


「コリュウ、いったん下がるぞ。このままの戦闘はちょっとまずい」

「でも、攻撃をよけない分あいつにダメージは与えているはずですよ」


 攻撃しながら下がればイーターは攻撃を受けないように身を隠し、多少は追ってくる速度が鈍くなるはずとツバメは撤退を選んだ。


「いや、体液が出ていないだろ結局どこも貫けていない、撃つだけ無駄だ。残りエネルギーを考えると自己防衛に回すだけで精いっぱいかもしれない」


 そんな、イーターから一瞬たりとも目が離せない中、ツバメの端末に連絡が入る。

 やっと、応援が来たそう思って着信を取った。


『ツバメ、コリュー、車取ってきましたよー。今どこにいますか? もうすぐ駐車場あたりに着きますけど、まだその辺ですか?』


 イグサの声だった。


「なっ、イグサお前何してんだ!」

『え? いやお迎え?』


 イグサは二人がヤバい状況だろうと思って車を取って来たのだが、ツバメは残り少ないエクエリのバッテリーで援軍が来るまで食い止めようと、コリュウはイグサを逃がすためにと、だれが何のために戦ってリかわからなくなっていていた。


 ツバメは今の朝顔隊は皆冷静ではないことに気が付く。


「まだイーターは健在だこっちには来るな、軽装甲車じゃ奴の攻撃を防げない」

『イーター、私のエクエリ吐き出しました?』


 聞こえているのかいないのかイグサは話題を変える。


「ん、いやまだ顎に挟まってると思うけど、頭の下だから何かに登った時じゃないとわからない。まぁ、ずっと戦ってたけど、どこかで落としたようには見えなかったからまだ顎に引っかかってると思うよ」


 イータの追撃を警戒しながらイグサの無線に意識を向ける。


『あれがあれば動けなくても車の荷台から、わたし援護できたのにー』

「いいから、イグサは無理せず隠れていろ」


 兵舎の陰からエンジン音とともに、傷だらけの軽装甲車が猛スピードで出てきた。


『もう来ちゃった』


 出てきたものは仕方がない。


「イグサ!?」


 コリュウが驚いている、ツバメも驚いている。


 ツバメはイグサが無事ということ以外何も聞いていなかったから心配したが割と元気そうだ。


「ええい、仕方がない。コリュウ、残りのエネルギー使い切るつもりで牽制しながら車に乗れ、ちょうどいい逃げるぞ」

「あ、はい。わかりました」


 コリュウと合流してイグサの乗って来た車に走る。


 イグサも軽装甲車でもやられると聞いてさすがにこっちまで迎えには来なかった。


 100メートル歩かないかの距離をイーターも私たちの後を追っては来ていたが二人分の弾幕で、さすがに回避行動を余儀なくさせた。


 ついでに残り3つのうちの2つを使う、電源を入れ4桁の番号を設定して地面に転がすと、携帯端末を操作しパスワードとした4桁の番号を打ち込み、赤いボタンマークが表示される。


 そして、そのまま車まで走り液晶に映された赤いボタンを押すと同時に私とコリュウは後部座席に飛び込んだ。


 飛び乗った車が揺れる大爆発。


 ちょっと期待したけどイーターはほぼ無傷、察知して爆破範囲から逃げたらしい。


 でもおかげで十分な距離と時間を稼げた。


「隊長も乗ったぞ!」

「いいぞ、車を出せ、イグサ」

「じゃあ、出発しますよ。しっかりつかまっててください!」


 こうして今度は私たちが追われる側になった。

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