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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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特定危険種、10

 コリュウは急いで坂を下る、駐車場のど真ん中で戦っているツバメとイーターは遠くからでもはっきり見えた。


 彼女は無残に壊された、無数の車の陰に隠れながら戦っている。


 コリュウが坂を下りながら向かっている最中、彼女はイーターに向かって何か投げた。


 距離があってここからではなんだかわからないが、イーターはそれを回避する。


 直後それが空中で爆発する。

 先ほど戦場跡地で使った爆薬の残りだ、風で楕円形に広がっていく黒煙の中からイーターは出てきた。


 シシシシシ……


 触覚を小刻みに震わすイーター、今ので数本の足が吹き飛んだがまだまだ奴には足はある。


 俺は隊長に夢中になっていたイーターの後ろに回り込んだ。


 彼女はちらりとこちらを見ると何も言わずイーターに向き直る。


 坂を下りつ雨のもとに向かうコリュウは足音を立てずに手ごろな車の陰に隠れるとゆっくりとイーターに狙いをつける、とはいえ相手は硬いあたりはすれどダメージが入るかわからない。


 触覚が狙えればいいのだが……


 昆虫型の生体兵器ほとんどに通用する急所がそう簡単に狙えるわけもない。


 しかしイーターの触覚が動くと隠れてチャンスを窺っていたコリュウの方に向きを変える、音もたてず忍び寄ったほぼ真後ろにいた彼を見つけた。


 どうやらこいつは目で見ていないようだあの触覚で相手との距離を測っているのだろう。


 そしてイーターの動きが止まる、直感的に嫌な気がした。


「やっば!」


 刹那、残像でイーターの体が伸びた様な錯覚を見た。


 先ほど木材の山で隊長を狙った攻撃が、コリュウの隠れていた車にあたる。


 ギリギリで車の陰から逃げ出した直後、車はイーターの突撃を受け二回転ぐらい転がった。


 そのままイーターは二人を正面にとらえられるよう距離を取る。


 折角、挟み撃ちにしたのに、またさっきの睨みあった状態になってしまった。


 コリュウがいう差を探している最中ずっと戦っていたツバメの疲労状態はピークに達しているらしく肩を揺らし息をしている、


「隊長、こいつほんとに俺達だけで倒せるんですか?」

「しらない、でも、応援が来るまで、誰かが相手、していないと」


 息を乱し、汗を拭いながら答えるツバメ、イグサの件で時間を取った分ここからは一番体力有り余っているコリュウが積極的に戦わないと。


 散々迷惑かけたんだから一人でも戦う覚悟がコリュウにはできていた。


 エクエリを撃ちながらイーターの体と平行に走り出す。


 イーターはもう一を後ろに回り込もうとするコリュウに一番警戒する相手を変えたようで、ロープのような触覚が彼に向けられている。


「おい、コリュウ止めておけ、私たちは気を引きながら隠れていればいいんだ」


 そういえばさっきイグサのことであまり話を聞いていた時に、ツバメは何度かそんなことを言っていた気がする、でももう遅い。


 また、イーターの動きが止まった。


「っ‼」


 一応はよけたが間に合うような速度ではなかった。


 ツバメの援護がなかったらコリュウの体は逆くの時に折れ曲がったいただろう。


 ものすごい勢いでイーターがコリュウの真横をすり抜ける。


 頭や胴体はすれすれでよけれたが範囲的には無数の足が彼の体をひっかける距離。


 だがイーターは突撃の際、体とともに浮いている足を畳んでいるようで足が彼にあたることはなかった。


 ツバメの投げた爆弾で吹き飛んだこともあり足は体ほど頑丈ではないようだ、そのためどこかに引っかからないように畳んだのだろう。


 コリュウはすぐに来た道を戻りツバメのそばへ行く。


 遠くにちらっとイグサの姿が見えた、車の泊めてある食堂は兵舎のもっと先だ木材を杖にしながらもゆっくりだったが一歩一歩進み彼女は兵舎の陰に消えていく。


 ツバメはイーターがコリュウに追いつかないように牽制射撃を行っている、そして彼女の隠れている車の陰まで来てようやく一息ついた。


「こいつ強すぎやしません?」

「生体兵器は、何であれ学習機能があるからね、戦闘経験を積めばそれだけ強くもなるさ」


 ついこの間、特定危険種って何だっけと部下のコリュウに聞いてから、ツバメは自分で一応その生物壁についてのことを調べていた、そのため多少の知識があり少し自慢げに言ったが戦闘中だ彼は無反応。


「じゃあ、こいつも」

「基地を襲い、輸送団を襲い、今私たちと戦ってるこの時間も奴は強くなってる」


 おふざけなしで真剣な顔つきで辛そうな声を上げるツバメ、これ以上つよくなると朝顔隊だけでは相手にできない。


「聞いてから言うのも変ですが……今この時に言わないでください、心折れそうです」

「私はすでに満身創痍」


 そういって軽く笑うがツバメはコリュウが無茶なことをしている間に十分息を整え、エクエリを構え走り出した。


 後を追いコリュウも走り出す、彼女とは逆方向挟み撃ちを狙う。


 ゆっくりと後退し十字砲火の被弾を減らすためグネグネ動きながらどちらに攻撃をするか選んでいるイーター。


「コリュウ、いいかよく聞け……これが私の最後のバッテリーだ。コリュウの鞄にはいくつ予備のバッテリーが入っている?」

「3つですかね、今のうちに渡しておきますか」


 腰の鞄に手を当て中を確認する。


「ああ、二つだな私の方が攻撃する機会は多いでしょ」

「わかりました、大事に使ってくださいよ」


 コリュウからバッテリーを受け取り、ツバメは空になったバッテリーを投げ捨てる。


「無茶言うな、速攻湯水ぞごとく使ってやるよ」


 普段は基地に持ち帰るためカバンにしまうがここはその基地だどこに置いておいてもいいという判断だろう。


 イーターが後ろに下がっていることもあり客観的には優勢に見える、しかしそれは起きるべくして起きた。


 接近戦で不利と判断したイーターは資材の山に向かって体当たりをした。

 吹き飛ばした資材がコリュウやツバメに当たるように。


 そして飛んできた何本もの鉄パイプの一本が隠れていた車に突き刺さる。

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