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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
8章 新たに咲き開く希望 ‐‐最前線を目指して‐‐
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次なる試練 9

 

 コウタロウは飛び回るドローンを体をひねらせながら操縦し目で追いかける。

 廃墟から近い森や茂みの上を飛んでいるとフッと生体兵器がドローンの飛ぶ空を見上げた。

 姿は細長いトカゲ型の生体兵器、距離でちゃんとした大きさはわからないが近場にある自販機や廃車などと比べ中型の生体兵器と判断。


「釣れた! シラハさん、ランナーかわからないですけど生体兵器が出てきました。おぉぉぉぉ、操作間違うと壁に当たりそう」


 土煙を上げる咆哮を見てコウタロウが叫ぶ。


「んじゃそれをそのままこの団地へ、私がここからランナーかどうか確認をとる」


 生体兵器が付いてくるようにドローンは高度を下げ建物の2階部分より低い位置を飛ぶ。

 確認をとるまでもなかった。

 生体兵器は二足で立ち上がると四つ足で歩きだした時の何倍もの速度でドローンを追い始め、予想以上の速度に回避のため思わず急上昇するドローン。


「ランナーだね。一匹しかいないけどこっちで確認取れた。信号を」

「了解です!」


 リモコンを片手でもち設置したアンテナを使い牽引車両まで通信を試みる。




 牽引車両の無線機に通信が入る。

建物に遮られているようでノイズがひどく誰の声だか判別が難しいところ。

レンカは雑音な中から何とか情報を集めた。


「見つけたみたいだな。……よし始めよう」


 指揮するため待機している他の精鋭たちの端末につなげる。


『躑躅隊、鈴蘭隊がランナーと接触した。総員気を引き締めて戦闘に臨むように』


 携帯端末の通信範囲からは離れており、声は無音の廃墟内を何度も反響しこだました。


「指示を出すのが隊長である私の役目なのに……戦況がわからないと私の指示幅を混乱させるだけ。何もなければ次に私がすることは撤収の連絡をするだけか……寂しいな」


 寂しそうにそうつぶやくとレンカは改めてモニターとにらめっこを始めた。



 目的地に向かってドローンで誘導し瓦礫と障害物に足を取られながら団地内を移動するランナー。

 当初は二匹いるランナーをかく乱させ、鈴蘭隊、躑躅隊と紫陽花隊、金木犀隊の待つ道へと一匹ずつ、精鋭から囮が出てきてそれぞれの道へとおびき出す予定だったが、一匹ならそのままいけると時間稼ぎなしでそのまま待ち伏せポイントへとドローンで向かう。



 街角の曲がり角から空を飛ぶ小さな点が出てくるとカズヒサとシロヒメが来たかとつぶやき立ち上がる。


「イナホはここにいろ。俺らはここで立ち止まらせるために奴の気を引く。ここでしっかりと狙い撃て。最初は足を狙え、前にも後ろにも進ませるな」

「任せてください」


 その場にイナホだけを残し建物の外へ出た。

 別々に動く飛び出た目玉、緑と茶色のマーブル模様の体の中型のトカゲ型生体兵器、ドローンを見失い周囲を探していたランナーはカズヒサたちを発見し標的を替える。


「やばっ、ばれた! 当然か、おっしゃこーい」

「一人で前にですぎないでくださいよシロヒメ隊長。後ろに控えている躑躅隊の大型のエクエリに撃たせるのが先ですからね」


「そだった」


 部下に諭され近づいてくるランナーへと一人で立ち向かおうとしていたシロヒメは踵を返す。

 攻撃すると身を低くし2足から4足歩行に戻り近場の建物の中に逃げ込む。

 行って帰ってきたシロヒメは部下とカズヒサに合流する。


「走り回る以外は脳のないただの生体兵器でいいんだよな?」

「そのはずだと思う、戦ってみればわかるさ。私が他の隊と連携はできないから好きにやらせてもらうよ。大型のエクエリには期待してるけど、誤射にだけ注意してね」


「連携できないって、それ先に行ってほしかったな」

「私の隊そういう話で有名だから、知ってると思った。主に私だけど」


 話し合っているうちに建物の中を壁を壊しながら移動し飛び出てくる。

 しかし、ただ厄介というだけで特定危険種になったランナーは戦闘能力はただの生体兵器と変わりない。

 その攻撃は単純で容易に回避した。


 そして発射される建物内を移動し襲うため飛びタイミングで隠れていたイナホの攻撃。


「ぶち抜けぇ!」


 咆哮とともに光の弾が3人の頭上を通過し命中とともにランナーの頭がはじけ飛ぶと、そのまま向かいの建物まで転がっていく。


「ん?」

「え!? ……足を狙うのではなかったの?」


 頭部を失い力なく転がるように倒れるランナーだったもの。

 一撃であっけなくランナーとの戦闘は終了し、楽しみにしていたシロヒメが崩れ落ちた死骸を見たまま呆ける。


 よっしゃぁ取ったぁと気合のこもった雄たけびが廃屋から聞こえてきたのそのすぐあと。


 ドローンを回収し建物から降りてきたコウタロウとシラハが合流するころには、躑躅隊と鈴蘭隊がレンカの待つ牽引車両へと戻る準備ができていた。




 2匹いるランナーを一匹しか見つけられず、躑躅隊と鈴蘭隊が出番のなかった朝顔隊と金木犀隊と合流しているころ。

 その戦闘区域の外周で他の生体兵器が討伐の邪魔をしないよう、歩いて哨戒していた雛罌粟隊。4名。


「撤退! 撤退撤退撤退!! 戦わなくていい走って!」

「こんな奴いるなんて聞いてませんよ!」

「イズミ隊長! オウギが、オウギが来てません!」


 路地に逃げ込みそのまま裏通りへと抜けると来た道を振り返る。

 大きな巨体ではここを通過するのは不可能だと思ったためだ。


「そんな、こんな時にはぐれたの!?」

「さっきまですぐ後ろにいたんです! イズミ隊長!」

「足音も聞こえないみたいだしあいつは来てませんよ。戻って探しましょう」


 逃げてきた路地には行方不明になった隊員も生体兵器の姿もない。

 息を切らし流した汗を袖で拭くと前を向き歩きだす。


「……いいえ。このまま他の隊と合流します」

「オウギが、まだ近くにいるはずなんです」

「どこかに隠れていて、今は動けないだけかも」


「いたら声を上げるはずでしょう。すぐ後ろにいたというならもう追いついているか視界内に見えていいはず。……行きましょう、無事を祈って」

「くそっ」


 のちにその通信記録だけが見つかる雛罌粟隊。

 結局その後、彼女らは他の精鋭と合流することはなかった。


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