挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
怪物に支配された世界を取り返す 作者:七夜月 文

振りかざす支配者の力 -瓦礫の国の姫-

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

253/257

透き通る空の下 3

ケンマがさっきよりだいぶ話すようになったと内心喜ぶトビ。
しかしここから調子に乗ったトビが話を大げさにしてしまう。

「いいじゃない、作るまで誰にも言わないから」
「嫌だよ」

「あ、そうだケンマ。さっき言ってたところにいきましょう」
「は?」

「さっき、防壁の上で言っていた明かりがともっていたってやつ」
「廃シェルターのこと?」

「そこの調査をするのはどうですかっていっているの」
「はぁ」

気の抜けた声が出るケンマ。
陣地防衛に特化した生体兵器、それも特定危険種に指定された相手を倒すのは難しい。
精鋭が過去に駆除を飽きためたほどの相手、それがどんなに無謀なことかケンマは顔を青ざめさせる。

「いつ」
「明後日くらいに」

「無理だろ! シフトと照らし合わせたり偵察飛ばして何回も安全性を確認しないと、それに特定危険種が……」
「私が頭を下げてお願いすれば今日か明日中に準備出来るはずですわ、そのくらいのこと」

「な……」

和やかな絵がとりたかったのだが思っていたのと違うが、共にいるケンマがつまらなそうな顔をしているよりか少しくらいましと、トビは言葉が出ず唖然としている彼の手を引き駆け出す。

「では、さっさとケンマさん帰りますよ、お茶っぱを取りに。まずは作戦の指揮を執る指揮官を調達しないと」

お茶っぱを届けるついでに指揮官にこのことを話す必要がある。
兵士教育と資材回収は部署が違うので、すぐに首を縦に振ってはもらえないだろうがうまく収まるだろう。
説得をしようとしているケンマの言葉を流し彼女は向かう。


そして。


本当にその日は来た。
これから始まる作戦を前に静かに落ち着いているベテランたちと、不安で口数の多くなった新兵たちが隣り合って並ぶと、風格や体格以外にも差がいろいろと出ていた。

そして戦車や装甲車が並ぶ防壁の前に集められ、急な呼び出しに他の一般兵たちも、何が何だかわかっていない者が多く、仲間たちから人づてに作戦内容を知る。
名目は新兵の資材回収班の同伴、あらゆる場所での経験値稼ぎ、今回は今まで誰も手を付けなかった廃シェルターギリギリまで接近しての金属の回収。

「よお、ケンマお前も呼ばれたのか」
「げぇ、オヤジ!」

もっさりゴワゴワしたあごひげ、寒いのに防寒着も着ないで半そでで現れた傷の多い筋骨隆々の体の男。
大きな手のひらにがっしりと肩を掴まれ、どう逃げようとしてもびくともせずケンマはじたばたとその場でもがく。

「見たぞケンマ、この間の放送。なっさけない声をだして、お前シェルター中の笑いもんだぞ」
「わかってる、わかってるって。あれはちょっとしたやつであれだから」

現れたのはケンマの父親だった。
ケンマの父親も資材回収班として働いているのだからこの場にいても不思議はなかったが、会うたびにこうしてからまれるので彼としては出来ればあまり会いたくはなくかった。

「まったく、悪さも大概にしろよ。防壁の外でふざけたら死ぬかもしれないんだからな」
「わかった、わかった、わかってるての!」

前線基地への出兵もおおくあまり家に変えれていないケンマの父は最近の出来事を茶化した後、彼に家のことを聞いてくる。
それを嫌々ながらも父親に伝えて行っていると、指揮官の整列の合図があり一般兵は各班ごとに集まり並ぶ。


一般兵の教育を重点的に行っていることだけあり整列にかけては、新人もベテランも並びなおす時間に違いはなかった。
偉い人の並ぶ軍服姿の間に真っ白なワンピースを着た彩度の濃い金髪の少女、トビがいた。
いつもなら一般兵と同じような戦闘服に身を包んでいるはずなのだが、今日の彼女はやけにめかし込んでいる。

今長々と説明をしているがそれは表向きの話、実際はトビがケンマと話す口実を作るためについた冗談だったのだろうがそれを現実のものとしてしまった。
一般兵たちが並ぶ場所から少し離れたところに見慣れないメンバーが待機していた、彼らは何かの機材の調整をしていて上を見ると偵察用のドローンが飛んでいる。

彼女が廃墟を歩く映像を撮るのが目的で、資材回収はついでなのだろうなきっと、絵がどうのこうの何だろうな……これ。ああ、こんな理由で俺はまた死地に戻るのかと、誰にも聞こえない程度のため息をつき方をがっくりと降ろす。

死にかけた記憶も色あせないうちにまた防壁の外へと出る、話を聞いていくうちにケンマの体に力が入る。

昨日の今日でほんとに外に出るのか、大丈夫なのかと不安を募らせながらも指揮官の話を聞く、廃シェルターには入らないが近づけるところまで近づくそうだ。

そしてどうやら、その廃シェルターに詳しい人間を二人連れて行くらしい。
シェルターが廃棄されたときに移民してきた人物ではなく、放棄されたあとにその廃シェルターを訪れたそうでシェルターの一部の区間には詳しい、彼らの訪れたその時はまだ例の巣を張る生体兵器もいなかったそう。

隊は30人を6台の車に押し込んでいくらしい、色は全て廃墟に溶け込むように濃い灰色と城の迷彩模様。
振り分けは後部にクレーンを取り付けられた輸送用トラック一台と小型のトラック5台だった、資材運搬用の大型車は廃墟に入れないため小さなトラックがその代りに続く。

それなのに駐車場には7台目の装甲車が停まっている。
貴賓用にアレンジが加えられているものの普通の装甲車より重装甲に作られた8輪の装甲車、車体は深緑と黒く染められていて山岳地使用となっていた。

塗装は間に合わなかったようで金の模様と黒、この車両に乗るのはもちろん彼女だ。
それと機材を持った撮影スタッフ。

「さぁ、ここから作戦開始だ。緊張して他の奴について行って違う車両に乗り込むなよ」

部隊長の命令で一般兵たちがトラックに向かって一斉に移動を開始する。
ケンマも人の波にもまれながらも自分の乗るトラックへと向かう。

「よお、有名人さん。あんたも研究施設に入るんだろぁ?」

テンポよくトラックの荷台に乗り込んでいく、ケンマは自分の番を待っていると後ろから声がかかった。
振り返ると顔色の悪い不健康そうな猫背で武将髭の男、一般兵というより研究者といった方がしっくりくるだろう、先ほどの説明ですこしだけ紹介されていたシェルターに詳しい人間の一人。

周囲の地形にも詳しいらしく、いざという時に逃走ルートの指示や何らかの貴重品が集まった施設の跡地の位置へと先導してくれるらしい。
旧時代専門店として取り扱われていた宝石や、一度文明が退化したこの時代においてレアメタルのつまった電子基板は価値が高い。

「ああ、はい。今日はよろしくお願いします」

一応しっかりとあいさつしたが、確認だけ取るとふらふらとトラックの方へ向かう。

トラックの荷台ははすごく窮屈だった、体格のいい大人二人が両隣に乗った時点ですで満席に近かったがそこにさらに無理やり押し込まれる。
さっき話しかけてきた髭の男はケンマの乗るトラックの助手席で携帯食料をかじって出発を待っていた。

「これ今何を待っている状態なんですか?」

トラックに乗り込みすでに何分もたっているが一向に出発しない。
何か問題でもあったのだろうかと心配になってきた。

「そういえば、君あの映像通信で生体兵器に追われていたのは君だろう。初の戦場であんな目にあったのによくシェルターの外に戻る気になったな」

となり座っている体格のいい先輩一般兵の人たちが答えてくれた。

「まぁ、怪我とかしませんでしたし」
「いやぁ、最近の若者は頼もしいなぁ」

「全くです、自分はこのくらいの年のころには防衛任務が嫌で嫌で仕方がありませんでしたから」
「ハッハッハッハ」

このシェルターは数年前からまったく生体兵器の攻撃をうけなくなった、それについて様々な憶測が飛び交っている。
他のシェルターが大規模な掃討作戦でこのあたりから生体兵器が消えただの、未確認の特定危険種が他の生体兵器を殺しまわっているだの、いろいろ憶測が飛んでいるがまだ何が正解かはわかっていない。

「まぁ、なんであれ向こうでは100%戦闘になるだろうな」
「資材回収なんてする時間あるのだろうか」

そして、出撃ゲートが開く警護の車両が先に出てその後に資材回収班の車が続く。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ