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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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戦場跡地、5

 隠れること数分、十分足音が遠ざかったところで朝顔隊は移動を開始した。

 最初にツバメが出ていきグールの居場所を確認する、ジェスチャーでコリュウを呼んで安全を確認したところでイグサを呼ぶ。


 足元がぬかるんでいることもありイグサは慎重に足を延ばした。

 立ち上がると小走りで二人に合流する。


「この後の作戦は?」

「いったん車まで戻ろう、できればやつを引き付けて本隊までご招待。後は数の暴力で何とかなるでしょ」


 コリュウの質問にツバメは声のボリュームを下げて答えた。


「一般兵に相手をさせるんですか」

「仕方ないじゃん、いくら精鋭でもこれはちょっと泣きたくなるさ」


 ツバメが無理だというのだから今回の開いては相当なものなのだろうけどコリュウの言っていることもわかる。

 一般兵で対処できないから、その代わりに精鋭があいつの相手をしているわけなのだから。


「一般兵に紛れてイグサを守りながら攻撃する。勝つための犠牲だよ」

「……」


 他に方法がないと思ったのだろうコリュウは口を閉ざす。


「意見はほかにない? じゃ戻るよ」


 朝顔隊が乗って来た軽装甲車のもとまで戻る。

 小さな丘はここからでも見えた。


 ガンッ


 よそ見していたらイグサの大型のエクエリが、車両間の微妙な隙間を通り抜けられずぶつかる。


「ぁ……」

「ぁ……」


 二人が物言いたそうにこちらを見ている。


「あ、ごめんなさい」


 イグサが消えそうな声で謝るのと突然二人の視線が上に行くのと同じタイミング。

 不思議そうにしていたイグサの上に影が差したので彼女も上を向くと、大型のトラックが優雅に宙を、三人の頭上を舞って飛び越えていく。

 一同顔を見合わす、言葉などいらない、一斉に走り出した。


「い~ぐ~さ~」

「ごめんなさい!」

「バレちゃったけど車に戻ることは変わらないんですよね」


 地響きを聞いて後ろを確認することなく一層早く走り出す。


「ああ」


 残骸を陰にあいつの死角になるようにジグザグにさっきと同じように走った。

 しかし今度のグールは障害物お構いなしに突っ込んできて、その車両や残骸を破壊し、まき散らす。


 飛び散った鉄片が他の車両にあたり火花を散らしている。


「間違いなく生身であんなものを受けたら大怪我だ、そういえば作戦会議で竜胆隊が破片か何かで負傷したって言っていたきがする」


 車両が隙間なく壁となっている場所では、拉げた兵員輸送車の中を通り抜けたり、トラックの下を這って移動したりした。


 当然グールにはちょっとした壁程度でしかない、乗り越えてくるか壊してくる。

 トラックの下を這ったとき、新品の制服が……言うまでもない。


 逃げてる途中、何匹かグールベビーがいたが開き直ったツバメが楽しそうに踏みつぶしていた。


「まだ追ってきますね」

「しつこーい!」

「大きな声出すと余計に疲れるよ、イグサ。もう少しだがんばれ」


 車体を半分地面に埋め込ませた戦車の脇を抜けると丘の上にとまっている装甲車が見え、車はあの裏に止めてあるため最後の力を振り絞って走る。


「コリュウ先に上れいつでも出発できるようにしておいて、次はイグサだエクエリが重いようならコリュウがもて! 私は最後」

「イグサ、それ渡せ」


 コリュウがイグサの大型のエクエリを渡すように言ってきたので彼女は素直に渡す。

 受け取ると彼はそのまま全速力で走りだした、何度か泥に足を取られ滑ってはいたが早い。

 地面には金属片が大量に落ちていたが、転ぶと危ないとか言っている場合ではない。

 装甲車に結んだひもを手繰り寄せ、足で急な坂を上る。


 イグサとツバメが到着するころにはコリュウは、すでに登り切っていた。


「イグサ先に登れ」


 背中を押され、そのまま上で手を伸ばしてコリュウにつかまり登り切る。

 高低差6メートルほどの小さな崖を登り丘の頂上に立つ。


「グールはどのへんだ」


 ツバメは登りながら指示を出す。


「あいつまた俺たちを見失ったっぽいですね」

「にげきった?」

「そうか、はぁ~疲れる。もー、イグサ、しっかりしてよ」


 グールがこちらを見失ったことと無事だったことで気が緩みイグサの頭をぐりぐりと回しながらお互いの存在を確認し合う。


「ごめんなさい、よそ見してて」


 遠くで車両の残骸を手当たり次第に破壊しているグール、確実にこちらを探している。

 目立つ崖の上で隠れもしないでいるのは自殺行為だろう。


「……いいこと思いついた!」


 カバンから水筒を取り出し、泥を手を洗っていたツバメが水筒をしまいながらつぶやいた。


「イグサ、ここからグールを狙えるか?」

「ん、たぶん」


 折角逃げ切ったのにと目で訴えかけるイグサ。


「隊長折角逃げ切ったのに、なんでまた見つかるようなことを」


 イグサは声に出さなかったが代わりにコリュウが声に出した。


「私に任せなさい。じゃあ私の合図でグールを攻撃して、コリュウは車を出せるように。いい、スピード勝負だからね」


 そういうとツバメはせっかく上った崖を降り始めた。

 イグサもコリュウも頭に疑問符しかないが、とりあえず言われたとおりにすることにした。


「コリュウ、私のエクエリは?」

「車に置いておいた」

「んじゃ一緒にいこ、早く言われたことやんないと、一人にするのは危ない」


 軽装甲車に戻り大型のエクエリを回収、大型の方の装甲車の方へ戻る。

 そのまましゃがんでグールに狙いをつけて指示を待つ。

 ツバメが戻ってくるとすぐに指示を出す。


「イグサ、いつでも撃てるか」

「はい。えっと炸裂式雷撃弾でいいんですか? 通常弾に戻します?」


 しゃがんで狙いをつけ、いつでも撃てるようになったイグサ。


「どっちでもいいや、あいつにここの場所を教えてやるんだから。というか電撃ならあいつ倒せたんじゃね?」

「だから一番最初に撃ちますかって、わたし聞いたじゃん」


 そんなことを言われたような気もしたが過去の事なので今はスルー。


「あー、まぁいいや。よし、撃ったらすぐに車に乗り込めよ。コリュウ来た道覚えてるよね、私たちが乗ったら全力で下るよ」

「了解」


 車が何度か切り返しを行い軽装甲車は後ろを向く。


「準備できました」

「私はいつでも撃てます」

「よし、撃て」


 引き金を引く小さな衝撃と発砲音とともに青白い光、炸裂式雷撃弾が飛んでいく。

 生体兵器の脳や神経を焼き切るほどの大電流を流す弾は、吸い込まれるようにグールへと飛んでいく。


 着弾、グールを中心に付近の金属との間にバチッと一瞬、青白い雷が発生した。

 8本の足に支えられた巨体が力なく崩れ落ちた。


「しんだ?」

「さぁ?」


 巨体はゆっくりと再起動するように起き上がる。

 そしてこちらを見て足をそろえるとそのまま飛んできた。


「も、……」


 戻れ、ツバメがそう声を上げる時間もなく、グールは崖下から15メートルほどの位置に着地する。


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