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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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勝利とは言い難く 4

 開けられた扉はすぐに運転席からの操作で閉じられて、三人を降ろすと同時に装甲車は走り出す。

 急発進で装甲版を耳をふさぎたくなるような音でひっかき、装甲車から振り落とされたオオトカゲはすぐに起き上がると逃げ出した装甲車を追い出した。


「追わせませんよ」


 近くの残骸に隠れようとする二人を見届けエクエリを撃つ。

 イガラシの攻撃でオオトカゲは足を止め振り返る。


 深緑色の体には錆びた鉄のような赤茶色に黒い斑点があり、首から背中には万年筆のような太さと長さの棘が無数に生えている大きなトカゲ型の生物兵器。

 何度となくエクエリの攻撃を受け、その全身にはう数の穴が開いているがどれも致命傷とは程遠い。

 元精鋭の攻撃だからと言ってエクエリの弾丸は鱗を突きつけるこはなく、イガラシの攻撃は背中にあたりはしてもそれで弱っている様子はない。


「威力が足りません、大型のエクエリさえあれば楽に倒せるというのに。まったく、手のかかる」


 どこか嬉しそうにそういうとイガラシはまっすぐオオトカゲに走っていく。

 すぐ近くの車両だった鉄塊に身を隠したミチルとキッカはそよ様子を見ていた。


「たった一人で接近戦!?」

「あっつ、いたたた。あ、これダメかも。少し走っただけなのにすごい痛い」


 ミチルとともに横転した車両の陰に隠れるとキッカはそのままうずくまる。

 動けば装甲車に乗る前と同じように痛みに耐えながら戦えるかと思っていたがそんなことはなく、ただただ痛みで体が言うことを聞かなくなっていくだけだった。


「え、なに? 邪魔しに来たの、プロテクターまでつけておいて」

「私だって戦かう気でいたんです。でも、ちょっと走っただけで、思った以上に苦しい。これだけで立てない」


「どっかその辺で隠れてて、私はあなたに被害が及ばないようにここから離れて戦うから」

「ごめんなさい。這ってでも移動して近くの装甲車の砲台見つけて、そこから援護するから」


 ちらっとキッカを見たあとミチルは別の鉄塊の影へと走っていった。


 戦闘音を聞きながらキッカは体を起こし四つん這いになって移動する。

 しばらく隠れ体力を回復させると立ち上がり走る先を探す。

 見える範囲の車はすべて横転しており使えそうな砲塔はない。

 休み休みの移動にアドレナリンの鎮痛作用が期待できず、無理に体を動かそうとすると体中に激痛が走る状況。


 歯を食いしばり立ち上がるとキッカのいる車の二つ後ろに足音がし何者かの気配を感じた。

 生体兵器の動向を気にしながらキッカはその気配の元へと向かう。

 命を狙ってくる人だったら無視をして、あのオオトカゲとは別の生体兵器だったら先に仕留めなければならない。

 鉄塊の影から覗き込むと倒れたバイクを起こそうとしている美しい髪の女性と目が合う。


「どうも、今日も暑いですね。初めまして……おやっ、ではないですね。どうしたんですかこんなところで?」

「……っ! あなたは、たしか夜会にいた精鋭、でしたよね?」


「ええ、いましたね。というよりお会いしましたよね。お忘れですか?」

「あれを倒しに来てくれたのですか?」


 名前は知らないが彼女は夜会ですれ違った王都から来た精鋭。

 とても精鋭には見えないか弱い乙女オーラをまとった彼女は、一般兵用の軍用のバイク一台起こせずに額に汗をかいている。


「いいえ、なんか面白そうだったので捜索隊に加わってみただけです。そんなことよりなんか辛そうですね、状態異常……熱中症ですか?」

「おもしろ……そうですか。つらいのはちょっと怪我をしてましてそれで」


「額の怪我みたいな失血的な? ……どういう治療をしたらおでこにバッテンの絆創膏を張ったりするんですか」

「……頭のこれは別にいいでしょう。怪我は打撲、痣が多いです。だから何だっていうんですか」


 背後の戦闘している方向から大きな音がして二人は一瞬そちらを見ると黒煙が上がっている。

 壊れた車両が吹き飛ばされその火花で漏れた燃料に引火したよう、立ち上る黒煙を見たままキッカが答える。


「別に、なんでもないです。それであなたはこんなところで何を?」

「見てわかりませんか、あのオオトカゲと戦ってるんです」


「なるほど、暴れてますしね」

「あなたはあれを追って、ここに来たのでは?」


「いいえ残念ながら違います、外に出る門が一番近いのがここだったので歩きの私には選択肢がなくここに来たまでです。あの生体兵器がいたのは偶然、でもあれを簡単に倒す方法をお教えしましょうか?」


「そんなものが?」

「これを口から体内に入れれば、倒せるかもですね」


 銀色の筒を取り出しキッカに見せるカガリ。


「毒ですか?」

「毒ではないですけど近いようで遠いようで、でも、これを口ではなく腹の中に入れないとダメですよ。絶対に体内、そうすれば確実に殺せることだけは保証します」


「本当ですか、じゃあそれであの怪物を倒してください」


 王都からの精鋭、その能力は他の精鋭より高いと聞く。

 助かったとキッカはカガリに頭下げお願いしたが、彼女はハンカチで額の汗を拭き。


「いやです」


 と笑顔で一言。


「精鋭は部隊で行動するもの。私一人しかいないこの状況、このまま戦っても私がやられる可能性のほうが高いし。何より私、正面切っての戦闘系ではないので遠慮させてもらいますね」

「だったらそれをください。あなたがやらないなら私か無理ならイガラシさんにやってもらいます!」


 大声を出し体に力を入れたことから再び全身を駆け抜ける痛みに呻き体を丸くするキッカ。

 バイクを起こすのを諦めるとカガリは彼女のそばによる。


「痛いですか傷? 痛みを和らげる薬今ちょうどよく持っているんですけどいりますか?」

「そんなものがあるんですか? でしたら是非一つ譲ってもらえませんか?」


「いいですけど、動けるようになったからって状況が良くはならないと思いますが」

「あなたが何もしてくれないというのであれば、あとは私たちが何とかします。何としても」


 懐からアンプルと注射器を取り出しキッカの袖をめくり腕を出させる。


「これの使い方は簡単、ペンをノックするようにここを押すだけで発動します。ただし気を付けて一度しか使用できませんし、失敗したらあなたは死ぬかも」

「ルリ様達が無事に逃げられればそれでいいんです。ここであいつを倒さないといけないのは、追って襲わないという確証がないから、安心できないから」


 遠くから聞こえる二度目の爆発音、飛び散った大小さまざまな金属班が近くに振ってくる。


「そんなボロボロなのに?」

「いつまでも話している時間はないから、早くして」


 注射器にアンプルの中身を移すとその針をキッカの腕に差し、その中身をすべて注ぎ込んでからカガリは銀色の筒をキッカに渡した。


「あ、そうそう。副作用としてこの薬、すっごく強い痛みを伴います。叫ぶと生体兵器を呼んでしまいますから、出来るだけ声を抑えてくださいね?」


 カガリは強化繊維でできた上着を脱ぎ、袖を噛むように指示する。

 わけがわからないまま言われるままに噛むとその終秒後に全身に痛みが走り、そのことを早く言えとキッカは悲鳴を上げたくなるような体が裂けるような激痛を、自分の痛むゴム弾の傷を握って痛みを痛みをごまかそうとしてこらえた。

 カガリはキッカがえびぞりになってに苦しむ様子を面白そうに見ていた。

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