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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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勝利とは言い難く 3

 町に逃げていく一般兵とは別に、防壁に固まった一般兵たちは自分たちが助かろうと持っていた装備をフルに活用した。

 門は車両が引っ掛かりわずかな隙間が開いていて、そこから一人ずつ防壁の外へと逃げて行っていた。


「おい、お前もぼうっと見ていないであの車両に向かってこいつを撃て」


 車両の位置を変え壁のように並び替えその隙間からエクエリをもって様子をうかがう一般兵たち。

 手の空いていたレイラに一人の一般兵が寄ってきて余った武装を渡した。


「それで、こっちは逃げられる時間が稼げる」


 渡されたのは卵くらいの弾を飛ばすゴム弾銃。

 中身は特製のペイント弾で生体兵器が寄ってくるような血の匂いがする。


「あの生体兵器はどうするの、ですか?」

「放って置けばそのうち精鋭を中心に討伐体が組まれた精鋭たちが勝手に倒してくれるさ」


「野放しにするんですか?」

「そうだよ、だってあんなもん俺たちじゃ倒せないだろ。閉まった門を開けるよう連絡をしたがエラーがどうのこうの言って開かないらしい。そのペイント弾を撃ったらお前もすきを見てあの隙間から脱出するんだ」


 そういうと一般兵は行ってしまう。

 残されたレイラと手渡されたゴム弾銃。


 それをもってレイラは車の影から生体兵器との戦闘状態の町側にいた一般兵を見る。

 生体兵器による一方的な戦いとなっており、それを見てかわいそうという感情よりこっちじゃなくてよかったという安堵感があった。


「何あれ……」


 生体兵器の動きが先ほど見たときよりも早くレイラが出発前に見た操られている意思のない物のようだった生体兵器が、俊敏に駆け回りエクエリの攻撃に反応して隠れたりかわしたりしているのをみて、さらに少しずつその動きは切れのあるものになっていくような、戦いながら数秒ごとに強くなっていくような錯覚を感じた。

 そしてあらかたの一般兵を蹴散らすと、数分で残骸の山を作ったその怪物は一台の装甲車に視線を向ける。


「いいぞ食いついた」

「あの装甲車は頑丈だって話だ、これでだいぶ時間が稼げる」

「ああ、門の外へ逃げたところで追いつかれたら意味がないもんな」


 生体兵器が重装甲車へと向かっていくのを見て、近くにいた一般兵たちが歓喜の声を上げ、警戒を解き門のほうへと逃げていく。


 --あの車両はフクラシェルターの……あれをここで待っていて生体兵器を呼んだというのなら……あの中には……。


 重装甲車両に向かってレイラは慎重にゴム弾銃を構えた。







 生体兵器の接近に緊張する車内で、後部のドアの前に立つ二人はすごく落ち着いていた。

 何度か生体兵器と戦い視線を潜り抜けてきた元精鋭のイガラシと一般兵のミチル。

 装備の再確認を済ませると大きく深呼吸をするイガラシ。


「ここにいる一般兵たちはみな練度が相当に低いようですね……運転手の彼女もそうですが、そんなに慌てないで冷静に対処できれば今頃倒せていたでしょうに」

「練度の十分ある人は捜索隊なんかに加わらずどこかの前線基地で戦っているはずではないですか? 私も先週研修期間を終えて、これが初めての仕事だったんです。そこで初めて生きた生体兵器を見ました、死んでいるのは解剖しての観察や射撃の的として何度か。だからここにいる一般兵もシェルター内で人を相手にしている治安部隊や新兵ばかりだったとか?」


「実戦で経験を積ませないと、これだから困りますね」

「こんな人たちを実戦投入したら8割は死んじゃうんじゃないですか?」


「あなたは怖くないのですか?」

「怖いです。体中寒くもないのに震えて背中の汗が止まりませんし、心臓もあれを見ているだけでバクバクしてます」


「落ち着いて事に当たれば相手は動物ですから簡単に倒せます。いいですか、あのオオトカゲがこの装甲車に取り付いたら表に出ます。そしたらあなたはまず全力で隠れる場所を見つけてください」

「わかりました。それで、攻撃のタイミングは」


「私が攻撃するまで無駄に注意をひかないように、戦闘を始めたら奴が私を狙うのに夢中になっている時だけ数発撃ってください。基本は隠れて、見つかればあなたが先に狙われます。あなたの攻撃で気が散ったところに私が致命傷を与える予定です。その予定に体が付いてきてくれればいいんですが」

「わかりました、私がでっかい隙を作りますよ」


「くれぐれも目立たないように、撃ったらすぐに隠れてください」

「私は一般兵です、逃げて隠れてとかそういう戦いには慣れてます。実践ではしたことないけど何度も脳内で訓練しました、行けます!」


 生体兵器が取り付いたのか前触れもなくがくんと車体が大きく揺れミチルはイガラシに支えてもらった。

 運転席からはツララの悲鳴を塗りつぶすように運転手の絶叫が聞こえてくる。

 精鋭に強いあこがれを持つミチルは体を支えてもらったことに頬を赤らめ硬直していた。


「隠れて撃つ、それくらいなら私もできそうですね。私にもお手伝いさせてください」


 その声に二人が振り返る。

 ミチルは耳の先まで真っ赤にして声の主を見た。

 そこにはエクエリをわきに抱え、生物兵器の攻撃を気持ち程度軽減させるプロテクターをつけているキッカがいた。


「キッカさん、あなたはすでにボロボロの身、ツララお嬢様やルリ様、カイセイ様と一緒に逃げた方がいいのでは?」

「そうですよ、あなた突然倒れたっていうじゃないですか、危ないですよ何考えているんですか」


 軽量の金属板を動きの邪魔にならないように様々な形に加工し作ったプロテクター、生体兵器の直接的な攻撃は防げないが投げられた瓦礫の破片くらいなら防げる程度の防御力はある。

 胸に合うサイズがなくそれ以外の部分にプロテクターをつけ終わるとキッカは二人に並ぶ。


「いいえ、ここであいつを倒さないとまた私たちを追ってきます。撃ったことはないけれど撃ち方はさっき習いましたし、隠れて撃てばいいだけなんですからできると思います。人では多いほうがいいでしょう」


「無理には止めませんが何かあっても守れませんよ」

「私も自分のことでいっぱいになるので守りませんよ」


 強がって見せるキッカ。


『ぎゃぁぁぁぁ!!』

『こっちに来ました! こっちに!』

『大きな声を出すな気づかれるだろうが!』


 運転席に置いてきたマチ、セイショウとの泣きじゃくる声のほかにカイセイの声が聞こえる。


「お前たちが外に出たら、こっちは安全なところまで逃げるからな」


 再び大きく揺れるとイガラシがドアのロックを外し、三人は顔を見合わせる。

 大きく頷きあうと扉を押した。


「イガラシ、倒してくださいよ」

「キカ、無理しなくていいよ」


 ツララとルリに見送られ扉を開ける。

 目の前に生体兵器の長い尾が見えたが頭は見えない。

 生体兵器に気が付かれる前に三人は一気に走り出す。


キッカが倒れてから視点がブレブレになってしまった、たぶん今回の話あっち行ったりこっち行ったり大変読みづらいと思います。

今まで二、三人に視点固定していたけどあまり色んなキャラに飛ばさない方がいいのかもしれない。

一人称を多く入れてルリをメインにしておけばよかった、ただでさえルリが全然喋らないし。

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