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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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集まりすれ違う 7

 

 ルリとセイショウが付近を意から探しても見つからないので装甲車は廃シェルターの中をゆっくりと走る。


「いませんどこにも。どこに行ったんでしょうルリさんは」

「……一人でどこかに行くなんて。あ、セイショウも一緒か」


 カイセイとキッカを回収しルリを探す。




 キッカたちが探す少し前、家屋に隠れていたルリはどこかへと向かい始めたセイショウの後をついて廃屋の奥へと進んでいた。


「……おじさんたち行っちゃった」

「キッカさんがいれば大丈夫多と思います、人と戦うなら」


「そうだね」

「んーあれ、なんだろ」


 建物の影からカイセイが走っていく背中を見送っているとセイショウがずかずかと廃屋の中へと入っていく。

 キッカの家と同じように昔に破壊された後のようで瓦礫でぐちゃぐちゃになった部屋の中を、ルリは外が気になりながらもその後を追った。


「……どこ行くのセイショウ? あんまり離れると戻れなくなっちゃうよ?」

「なんか向こうにあります、そこまで」


 腐った木の床を踏み抜かないように壁や柱に捕まりルリは廃屋の中を進む。

 長い時間をかけて腐食した机やタンスを避けていくつかの部屋を通り抜ける。


「何があるの?」

「見えません? あの外に出たところにある白っぽいのです」


 壁の穴から表に出ると庭に出た。

 ガーデニングされていたであろう蔦が廃屋の半分を覆うほど成長し隣の廃屋にも蔦を伸ばしていた。

 その庭の中央に白い塊があった。


 全長10メートルクラスの生体兵器の骨。

 骨の周辺には土が積もり小さな山となっていて半分は生い茂った草の中に隠れていてセイショウはその骨の前に立つ。


「……生体兵器の骨」

「みたいです、やっぱりでっかいですね……これ、お土産に持って帰りません?」


「……必要?」

「さぁ?」


「このへん……足元ざらざらしてる」

「確かに、この盛り上がりだけ。あれですかね、鱗とかに含まれてる不純物のなれの果てですかね?」


「生体兵器、怖くないの?」

「骨なら動きませんし」


「たしかに……ん?」

「ルリ様、どうかしました?」


「今だれか呼んでた」

「終わったんですかね? 戻りますよね、行きましょう」


「……ねぇ、セイショウ」

「なんですか?」


「なんでここに骨があるとわかったの?」

「ぜんぜん骨があることは知りませんでした。ただ少し、散歩したかっただけで……ここから遠くない場所にある昔のおうちのそばを……でも、赤ん坊だったですからこのシェルターのこと全然記憶ないんですけどね」


「……寄ってもらう?」

「いいんです。生まれはここってことしかわからなくて、おうちの場所もわかりませんですから。戻りましょう」


 そういって二人は来た道を戻ろうと振り返ると廃屋の中でツララとカイセイがたっていた。


「勝手にいなくなるな、二人とも」

「ルリさん、誰ですその女。私というものがありながら!」


 無すりと怒りながらもツララは駆け寄るとその勢いで一度飛びつこうとしてやめブレーキをかける。

 一呼吸おいて改めて勢いで抱き着こうとしてまた恥ずかしがりやめてしまい、結局ルリの前で顔を赤くしてもじもじするだけとなった。

 そんな彼女の姿を見て自分の汚れた姿を見て少し困った顔をしたが、空気を読んでセイショウが背中を押しルリのほうからツララを抱きしめる。


「ツララ、なんか会うのがすごい久しぶりな気がする」


 声にならない喜びの表情のツララ。

 顔を真っ赤にして口をパクパクさせるツララを見て、この暑さと合わさってぶっ倒れないかを心配するカイセイの奥から現れたキッカ。

 ルリとツララが幸せそうにしているのを見ながら、キッカはむせて咳き込むカイセイの背中をさすり彼を介護しながら装甲車へと戻る。


「ルリ様、ツララ様、お早く、生体兵器がまだ近くにいるかもしれません。さっき大声出したのでここは危険です」

「そ、そうですね。ルリさん、行きましょう」


 抱き着かれた後、ずっと顔を真っ赤にさせまともに目どころか顔もを合わせられないツララだったが、ルリとしっかりと手は繋いで装甲車へとのりこんだ。

 二人が装甲車に乗り込みキッカも装甲車へと向かう。


 地面と装甲車の間は離れており上り下りしやすいスライド式の小さな段差があった。

 キッカはそこに足を乗せたはずだった、しかし急に足に力が入らず体は糸が切れたようにその場に倒れた。

 今までの疲労とダメージが安心感によって一気に体にのしかかり、心配したルリたちの声を聴きながらそのまま意識を失うようにキッカは眠ってしまった。


 その後はイガラシを探しに装甲車は中央区画に向かう。

 まっすぐに高層住宅の区画へと入るとエクエリの放つ発信機の信号を探し、二つの信号を探知し装甲車はその方角へと走り出した。


「まだ生きてますかね?」

「怖いこと言わないでください」


「いた、一般兵の人とイガラシ。ほら、はやく車を止めて」

「うぅぅ……早く拾ってください、このシェルターの中にいるだけで胃がきりきりしてるんですから。話によると生体兵器が近くにいるんでしょ、大きいやつが」


「二人は置いて行ってもいいっていうの? 生体兵器のいるこの場所に」

「だから早く拾って帰りましょうよ」


 後部のドアを開けて二人を回収する。

 ルリが暑さで汗を流す二人にタオルを渡し、それを隣で座って見ていたツララが急いで水を渡す。


「わざわざこんなところまでありがとうございます、ですが生体兵器が近くにいるはずですルリお坊ちゃまも助け出したことですしシェルターへ戻りましょう」

「生体兵器はどこ、追っかけて早く倒さないと」


 ミチルはすぐに座席に座り無線の音量を上げると、無線はいまだにキッカとルリを探している。

 逃げていった方角から大雑把に先ほどツララたちと出会ったあたりを探している様子。

 イガラシはカイセイに挨拶をし運転席までやってきた。


「ツララ様、合流できたようですね」

「ええ、ルリさんは普通に道で拾いました。キッカさんとは少し勘違いがありますけど、詳しく話をする前に倒れられてしまい……」


「ええ、疲労か、この暑さですしもしかしたら熱中症かもしれません。すぐにでもシェルターへ戻った方がいいですね」

「ええ、ええ。今回のことをルリ様だけでなくキッカさんの口から聞かないと、後、ちゃんと謝らないといけないですもの」


 数台の装甲車が現れた。

 大通りいっぱいに広がり生体兵器警戒用の車列を組んで走るその装甲はべこべこに凹み軋みを立てて走っている。

 ミチルはシェルターの統治者の家族に囲まれる空間に居心地を悪くし、運転席のほうへ助手席にむかう。

 装甲車は運転席は二人掛けで後ろは機材で道が狭まり一段上がったところに、砲台、レーダーや無線機、その他の数名が座れる空間がある。

 大人の男性用に作られたため子供が二人がいる空間は装甲車内が満員でも広く使えた。


「お疲れ様です、生体兵器と戦ったのですか?」

「はい。でも途中で見失い倒せませんでした、でもイガラシさんならあの生体兵器を倒せるかもしれません。あの方元精鋭なんですってね」


「逞しいですね……怖くはないので?」

「怖いです、怖いですとも。でも、逃げたら他の誰かが怖い思いもするのです」


「すごいですね、かっこいい……ん、おや。一般兵!? 正面からです、どうしますか?」

「捜索隊かもしれません、合流しましょう」


 カイセイがどっこいしょとおじさん臭いセリフとともに運転席に顔を出す。


「いいや、逃げろ。そいつらはルリ坊たちを狙っていた。かかわると面倒なことになる」

「びっくりした、逃げるってどっちに? フクラシェルターに戻るにはこのまままっすぐ行って門をくぐらないと」


「他の門に行くかスイレンシェルターへ行け、ほら、早く曲がれ」

「わっわかりました」


 カイセイに言われた通り別の門を探すため重装甲車は曲がった。

 しかし、直後に通信が入る。

 探しているルリとキッカが見つからないため、近場にいた一般兵の捜索隊に聞いて回っているようだ。


「あれだけ密集してれば、捜索じゃなくてもはや前線に出る護衛団みたい」

「生体兵器が出て、戦ったんだからあれくらいするものでしょう。というか私たちがあれぐらいして守ってもらうべきなんですよ普通。なんですか、護衛がイガラシさん一人って、途中でいなくなっちゃうし私どれだけ怖かったか」


 装甲車軍も同じ道に曲がり重装甲車を追ってくるのを後部についたカメラの映像を見て確認する。

 無線では大したことは言っていないが明らかにこの車両を追ってきていた。


「やばくないですか?」


 装甲車のわきからジープが二台走ってきてあっという間に追いつき、進行方向を妨げるように前に。

 重装甲車はジープの幅寄せに気おされ徐々に速度を落とすと、後続の装甲車が距離を詰めてくる。


「やばいな、どうするか、このままはねのけて走れるか」

「できますけど。え、ぶつけたらあのジープ横転するかも」


「頭が良かったらぶつかる前に道を譲ってくれるだろ、やっちまえ」

「え、え、じゃあ、行きますよ。皆さん、もしものために何かに捕まっていて」


 どうにでもなれと叫ぶとマチはアクセルを思いっきり踏んだ。

 それでも統治者ですかとキッカの声が聞こえた気がしたが誰も口を出さなかった。


 落としていた速度が一気に上がり二台のジープの後部をどつく。

 衝撃で一台はスリップを起こし横転して転がる、もう一台は何とか踏みとどまるようにブレーキを踏んで事なきを得た。


「装甲車が速度を上げて追ってくるぞ、もっと速度を出せ」

「これが精いっぱいです、あれだでも死んでませんよね! 人殺しとかやですよ!」


「画面じゃなくて、前見ろ前を!」

「え、前!?」


 後ろばかり気にして走っていると、正面の交差点から出てきた別の一般兵たちの車列の間を横切った。


「あっぶな! 危うく体当たりするところだったじゃん」

「おいおいおい、なんかいたぞ!? このあたり一般兵多いな、後ろの仲間じゃないだろうな」

「なんか向こうの廃墟が白い煙上がっているけどなんでしょう」

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