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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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集まりすれ違う 6

 キッカがルリとともに逃げたかもしれないと思っていても、捕まえて話を聞きたいだけであって殺してでも取り戻すなどという思いはなく、殺傷能力のある武器を使用し、運よく当たらなかったもののゴム弾の発射にかなり驚いているツララは我に返るとゴム弾銃から手を放しすぐに謝る。


 表にいると何時装甲車の上から滑り落ちるかもわからないので、キッカは彼女の次の攻撃がないとわかるとすぐに装甲車の中に入った。


「ごめんなさい・……ちが、違うんです。本当に撃つ気は!」

「大丈夫です、私もワンテンポ遅かったらこの装甲車を乗っ取るつもりでしから。ツララ様に向けた敵意をお許しを、てっきり私たちを狙っていた……ととっ?」


 装甲車はルリたちが隠れた脇道に急カーブした。

 しかし大きくコースは膨らみ、大きく曲がって建物にぶつかり豪快に破壊し削りながらハンドルを戻し元の道に戻った。

 そんな雑な運転をしているマチはよほど帰りたいらしく全力で逃げているルリたちを追っている。


「大丈夫ですか、ツララ様?」

「ええ、ありがとうござういます……あ、キッカさん頭から血が!」


「これは少し前に関係のないところで転んだ傷です、お気になさらず」

「救急箱がどこかにあったはずです、今探しますから」


「それより、この車止めてもらっていいですか。ルリ様にツララ様が来ていると報告しないと。すごい気になりますが、なんでここにいるのかはとりあえず後で聞かせてください」


 ほどなくして装甲車は止まり、開けられた後部のハッチから額に絆創膏をバッテンに張られたキッカとツララが外に出る。

 破壊音も聞こえなくなり生体兵器がどこに行ったかわからないため、何があっても装甲車のそばを離れないようにキッカはツララに十分に言い聞かせた。


「キッカ、無茶しやがって。馬鹿か、そんな怪我で走ってる装甲車に飛び乗るなんて生きてるのが不思議なくらいだぞ」

「カイセイ様、ルリ様は?」


「向こうで隠れるように言ってある。……フクラのツラ嬢か、親に似て行動力があるな」

「ルリ様、ツララ様ですもう出てきていいですよ?」


 カイセイがルリとセイショウと別れた場所へ案内するがそこに二人の姿はなかった。


「ここにいたはずなんだが」

「いないじゃないですか?」


「ルリ坊ー!」

「大きな声出したら、あの怪物が寄ってきますから静かに」


 そのあとも外に出るのを嫌がったマチを含めた4人でルリとセイショウを探したが見つかることはなかった。








 何台かの装甲車は見失ったキッカを探しに廃墟へと出発した、その中に蛇顔のレイラの姿もあった。

 残された一般兵たちは撤収準備を整えるとカガリを繋がれていた手すりから解放される。


「今度はどちらに連れていかれるので?」


 しかしやはり返事はなく乱暴に髪を掴まれトレーラーの前に連れていかれた。

 そこにはガスタンクを背負いガスマスクをつけた一般兵が並んでおり、カガリはその先に押しやられる。


「除草用の火炎放射器というわけではないですよね? こんなところで使うわけもない、ではそれはいったいなんでしょう」


 返事はない。


「やはり電磁波などにやって来る、習性を利用して操っているのですね。大昔に各国の都心にある電波塔狙って大挙したという生体兵器の文献を読んだか何かして作ったので」


 返事はない。


「シェルターの外で使えば生体兵器を集めるため極力使用を避けるアンテナ車。精鋭は個々で携帯端末を持っていますが、それは生体兵器が寄ってきても撃退できるから。でもここは違う、ここは完全な安全地帯で、生体兵器は全くおらずその電波で引き寄せられる生体兵器は限られる」


 ふいにその時が来た。

 彼女一人のおしゃべりは建物の崩壊と大きなトカゲ型の生体兵器の登場によって終了し、一般兵たちは催眠ガスの入ったガスタンクの栓を開け噴射用のトリガーに手をかけて生体兵器の接近を待った。


 生体兵器は一般兵を見て少しの間固まったが、一人孤立しているカガリの元へと歩き出した。


「私を生体兵器に食べさせるというわけですね。確かに誰の人の手を汚さず、報告も生体兵器との戦闘の末死亡したといえる面白い考えです。ですが、私を事故死させるには間違いが一つだけあります。それは両手を自由にしてしまったこと」


 制服の中を探り二本の金属製の筒を取り出す。

 両方親指ほどの太さでペンのような長さのもの、ノックする部分があるがペン先の出る穴はない。

 違いは金属に巻かれているテープの色。


「女性だから優しくいただきありがとうございます。私を裸にひん剥かなかったことを悔やみなさい、さぁ王都の最新技術のお披露目です。……せーの!!」


 両手に一本づつ持つと同時にノックする、そして同時に手を放し両方足元に落とした。

 直後落とした筒から一気に煙が吹きあがる。

 鉄の筒は決まった方向に穴が開いていて煙を吐き出す勢いで高速でスピンし、周囲のでこぼこにぶつかりカガリの足元からあらぬ方向へと転がっていく。


「発煙筒か!」


 リーダーの男が思わず声を上げると煙の中から返事が返ってくる。


「正解! よくわかりましたね、これだけ煙が出てるからわかりますよね。欠点はこれ軽く小さくしすぎて噴射の勢いに耐えられず、どっか飛んで行ってしまうんです。あんな感じに、予想もしない方角へ」


 徐々に広がっていく煙は生体兵器からもカガリの姿を隠し、転がり返ってきた発煙筒の煙で生体兵器も煙の中へと隠してしまった。


「もう一方は興奮剤、生体兵器が己の身が壊れるくらいに凶暴化します。大昔の研究成果の一つを復活させてみました、生体兵器を完全に兵器な変化させる薬です。バーサーカーモード突入です。さぁ、コンテニューなしの一発ボス戦、がんばって」


 煙が拡散し薄まるとその場にカガリはいなかった。

 発煙筒が予想外に飛んでいった方向へと走り去り彼女は廃墟へと逃げ込んでいた。

 彼女のいた場所に残ったのは、瓦礫に引っかかり勢いよく煙を出す発煙筒と無色な気体を出す鉄の筒、そして煙の中から聞こえる唸り声だった。

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