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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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集まりすれ違う 5

 ゴム弾を使ってルリを狙う一般兵とは別に動く、大きなトレーラーを中心に待機する装甲車の一軍。

 彼らはこの廃シェルターのあちこちに送った分隊としきりに連絡を取っていた。


「目標をロスト。観測隊がターゲットを見失いました。あいつは建物を破壊しまくっているそうです」

「くそ、またか。あの化け物を一度こちらに呼び戻せ、一般兵がおおい。下手をしたら狩られるぞ」


「観測隊によると現場でグレンシェルターの投資者によく似た人物を見たそうですが」

「見なかったことにしろ、これから起きることはすべて生体兵器がやったことにするんだ!」


「ドローン準備できました」

「飛ばせ。一般兵、ターゲット、生体兵器の位置を地図の上に正確に置け」


 机の上に大きな地図を広げ、そのあらゆるところに駒を置く。

 掻く場所に待機した一般兵につながる並べられた無線機を順にとり指示を飛ばしていく。


「土煙が上がりそこを目指して一般兵が向かっているという報告が」

「そうか、ではでたらめな報告を入れて、時間をかけさせろ」


「生体兵器を呼び戻します。アンテナ車に連絡を入れました」

「わかった。皆、生体兵器がここに戻ってくる。捕縛用の麻酔ガスを用意しておけ! その後また場所を移動するぞ」


 一般兵が慌ただしくしている間、カガリは装甲車の手すりに両手首をつながれ、身動きが取れず車体に寄りかかっていた。


「やっぱり、ここの人たちは生体兵器を任意の場所へ移動させるすべを知っているようですね。はたして誰が考えたのか、いいやそれより……これは」

「何一人でぶつくさ言ってんの?」


 そんな彼女の元に一般兵の制服ではなく、場違いな使用人姿の女性が現れた。

 ウエーブのかかった髪の蛇顔の女性。


「おや、あなたは先ほど保護されてきた人ですね。でも彼らが狙っているのはあなたたちだったのでは?」

「私はスイレン家に入ってたスパイだからね、あー長かった。この日のために3年あの場所で働いてきたんですから。今みんな忙しくて私退屈だから、あなた私の話相手になってくれない?」


「別にいいですよ、その前に一つ。あの生体兵器はアンテナ車の電波か音響装置で操っているので?」

「さぁ、ごめん知らない。私はいつどこで何をするのか情報を流すのが仕事だったからそういうのは、でもエクエリは電源が入ってれば自分の現在地を知らせる救難信号になるって聞いたこと話あるけど……あとは全然」


「残念、向こうの人たちには聞いても答えてくれそうにありませんし。こういうものの資料は完成時にすべて廃棄するのが普通。生体兵器を狩る時代に、その特性で生体兵器を利用しようだなんてまじめに生きていれば思いもつきませんし、そうなればまた生体兵器の開発に手を伸ばすことにもつながりますからね」

「この作戦、本当は開けた場所であの化け物に襲わせるはずだったのに、突然崖が崩れて谷に落ちて私の仲間が全滅しちゃって、スイレン家の人間以外は全部こちら側だったにあの崖崩れさえなければもっと早く終わったのに……。自分ものはずなのにキッカさんにわけもわからないまま歩かされて、セイちゃんとルリ様の下手な歌を聴きながらピクニック気分で、シェルターまで戻って……いや、疲れた、もうすぐ終わるし帰ったら全部忘れよう」


「そうですか、まぁ何年も潜入していたんです情が移ったのは仕方ないでしょう。そんなことよりこの大掛かりな作戦は、シェルターの統治者の暗殺が目的ですか?」

「まぁ、そういう感じかな。うちのところの統治者様がキッカさんに惚れていて、奪い取ってでも手に入れろ手に入らないならその場で一緒に殺してしまえって、短絡的で物騒な話」


「うわぁ、それでここまでするなんて随分とその人は狂ってますね。男の人?」

「ええ、近隣のシェルターに戦車や装甲車、備品を作って売ったお金で真ん丸に太った方。スイレンに潜入してからはお目にかかる機会は私にはなかったけど、たぶん今でも痩せてはいないと思う」


「夜会で見た人かもですね」

「統治者ですし、たぶんあっているかも。今気づいたけどあなた精鋭?」


「ええ、まぁ」

「なんで精鋭がこんな格好になってるの?」


「見てはいけないものを見ようとしたからかもしれません」

「トレーラーに入ってた生体兵器?」


「ええ、あれに食べさせる予定だったのでしょう誰かを」

「崖から落ちてみんな死んだと思われて、手違いで私まで食われるところだったけどね」


「一歩間違えば死んでたかもしれないのに、怒らないのですか?」

「私はしばらくは遊んで暮らせるお金でスイレン家のみんなを裏切った悪党だもん」


 カガリの問いに苦笑いでごまかすとレイラはその場を去っていった。






 まっすぐ向かってきた装甲車は本気でキッカを撥ねる気はないらしく、進路を少し道の端に寄せる。

 わきに逃げたルリを追いかけるため速度は落とさないようだ。

 キッカは車の残骸に上りそこから塀沿いに走りタイミングを見て近づいてくる装甲車に飛び移る。

 片手には鉄パイプ反対側は手が動かず装甲車への着地に失敗し転んで額を切った。

 しかも転んだ拍子に鉄パイプを落としてしまい無駄に怪我を増やしただけ。


「っ、この車を奪えば、帰れる。何としても、帰るんだ。私も限界だけどルリ様だってつらいはず、早く、早く」


 終わったことに後悔はせずキッカは軋む体にムチ打ち手足を動かすとハッチに手をかける。





 装甲車の上にキッカが乗った音は内側にも聞こえていた。


「キッカさんが取り付いたみたいですね。あの人何か持ってたけど速度落とさないと落っこちちゃうんじゃ」

「そのまま!」


 ツララは椅子と兼用になった収納ボックスを開けると黒く長いカバンを取り出す。

 カバンの中には競技用のゴム弾銃。

 銃身が伸びガスの圧力が強化され射程と威力が上がったため、当たれば内出血では済まないということから趣味で楽しむ用のおもちゃとして売られていた。

 その威力はおもちゃでは済まされないが。


 天窓のロックを外から外す音が聞こえるとそれを天窓へとむける。

 構えただけの威嚇のつもりだった。


「あなたはルリさんを守っていたのではないんですか! どうして、どうして!」

「ツララ様!? なんでこんなことろに!」


「どうして、捜索隊から逃げるの! 私、心配してたのに!」

「理由はシンプルかつ複雑で長くなりまして。きちんとお話をしたいので、あの一度車を止めていただければ」


 ひび割れたアスファルトを走る装甲車の揺れに振り落されないようにキッカは必至でしがみつく。


「今ここで言いなさい! キッカさん! どういうつもりなの!」

「ちょ、っ止めて、っから」


 窓が開くとともに外に向かって大きな声で問いかけるツララ、装甲車の中に思わぬ人物がいたのが変な声を上げて驚くキッカ。

 そのすぐ後に瓦礫に乗り上げ装甲車が揺れた拍子に引き金を引いてしまい、キッカの肩をかすめハッチの外へ天高く飛んでいった。


「っ!! ごめんなさいそんなつもりじゃ……」

「いいから車止めて」

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