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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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家に帰る 9

 小屋と瓦礫の山から離れ4人はまだ取り壊しの始まっていない町へと入る。

 手つかずの道も建物も多くの種類の草でおおわれ、ひび割れた道路や建物の窓から細いが木も生えていた。

 大きな道に出て草の生えていないアスファルトの上を選んで進む。

 過去の生体兵器に破壊されたのか乗り捨てられた車やその影響でできた渋滞の後が残っていた。

 乗り捨てられたトラックには積み荷が乗ったままで家畜らしきものの骨が荷台に転がっている。


「ここ生産系シェルターですか?」

「そうですよ。廃棄される前のシェルターオビシロは、鶏とか牛とかの家畜とかが大半です。肉と卵と乳製品を作ってました」


 そういってミチルが見ていたのは地面に倒れていた錆びた標識、そこに動物と缶詰の絵が描かれている。

 その道の先には大きな建物。


「でも、見た感じ工場が多いですよね」

「生きたままの取引以外は加工して他のシェルターに渡しますからね。生のままだと腐るし売れないのをいつまでも飼育していたらコストがかさむから決められた日にスパッと加工してました」


「そうじゃなくて飼育施設がないって話」

「地下ですよ地下。生物兵器に怯えて地下にもぐって生活していた時に作った地下シェルターを作り変えて育ててたんです」


「エサは?」

「別の区画で育ててた干し草、卵の殻や家畜の骨を砕いて混ぜたペレット。栄養バランスを考えて野菜とかたまに他で買って混ぜたりもしてました」


 ミチルが後ろに人の気配を感じ振り返ったが誰もおらず、数メートル横の建物の陰にイガラシに気が付くこともなく気のせいだと思ってその場所を探したりはしなかった。


「詳しいね、キッカさん」

「私ここ出身ですからね、何が盛んでどんなものがあったかはすこし興味があったんです」


「新しくここ作り直したらどうするんだろ、また動物でも育てんのかな。ルリ様は何か知りませんか」

「……ん、修復して使いなおすらしいから。また家畜とか育てると思う。カイセイおじさんが全部取り仕切ってたから、お父さんは援助だけだったから」

「例の帰ってこないお金ですか?」


 周囲を見渡し遠足気分で喋りながら歩くキッカたち三人と、黙ってエクエリをもって歩くミチル。

 そんなミチルが最初に一定のリズムの物音に気が付き、おしゃべりをしている3人に聞こえるくらいにひそめた小声で叫んだ。


「止まって、どっかその辺に身を低くして張り付いて。何か聞こえる」


 大きなものが瓦礫を踏む音。

 乗り物の残骸や崩れた建物のがれきを使い身を低くして進むとキッカが前方で生体兵器の姿を発見した。

 それはまたあの大きなトカゲで廃墟の町を悠々と歩きうろついている。


「なんで、四方を防壁で囲われているのに入ってこれるの。私一人で戦えるわけないじゃん」


 一般兵がいなければ壁を登るのも簡単だろうとルリとキッカはすぐ気が付いたが、そんなことも知らずミチルが震える声でつぶやいた。

 昨日仲間がやられたこともあるが、昼間その姿をはっきりとみてしまうとその怖さが変わる。


 姿はわからないがそこに大きなものがいるとわかればそこをただやみくもの仲間と攻撃すればいいのだが、今は一般兵はミチルは一人で数で戦うことができないそして影を濃くするほどの太陽の光を浴びてはっきりとその大きく禍々しい巨体を見てしまった。


「生体兵器……」

「カバンにエクエリがあるでしょ、あれをミチルに渡して」


 音を立てないようにそっと地面に置き旅行用カバンを開けるとレイラは震える手でエクエリを差し出す。

 生体兵器を見て戦意を喪失しているミチルがエクエリを手に取る。


「……あれ。このエクエリ電源が入ってる」

「電源が入っているともちろんエネルギーを使いますし引き金を引くと弾が出ます。危ないしもったいないので非戦闘時は電源を切って置き戦闘警戒時は電源を入れられるようスイッチに指をかけた状態で待機するんです」


 生体兵器との距離はまだ数十メートルある。

 相手より早くキッカたちが生体兵器を見つけたおかげで戦闘は避けられるかもしれないと息をひそめて建物の陰に隠れた。


「電源は少し触っただけで入ってしまうもの?」

「いいえ。引き金のロックをしてスイッチのカバーを外して、それから電源をいれて最後に引き金のロックを外すんです。一発で体に穴が開くから誤作動しないように」


「レイラ、あなた何か知ってる?」

「……わかりません。気が付いたら……」


 そういって首をふるレイラ。

 しかしエクエリは強い衝撃に強い精密機器。


「そんなわけないでしょ、これ渡したの昨日の夜でしょ。あなたエクエリ扱えるなら、なんですぐ言わないの、使い方教えてくれればよかったのに。他に隠し事はない、レイラ。」

「いや……その、ないです……」


 レイラの物言いに引っかかるところがあったが今はそれよりも生体兵器。

 案の定セイショウは震えあがりルリがなだめる始末。


「問題はなさそう、あとは狙いをつけて引き金を引くだけ。構える時は両手で持った方がいい、重くて銃身が下をむくから。撃たないときは引き金から指を放しておいて」


 ミチルはバッテリーの残量を確認しそれをキッカに渡す。

 もしもという時の備えてエクエリをもって隠れていたが、生体兵器はキッカたちに気が付かないまま廃墟の影へと消えていった。


「こっちには気が付かないようで、通り過ぎて行ってくれますね。よかった」

「……ずっと、僕たち追ってきてるね」

「こわいこわい……」

「あの、ルリ様、レイラ、ミチル。このまままっすぐ出ていきたいところなんですけど、その前に寄りたいところがあるんですけどいいですか?」


 セイショウは震えあがっていて話しかけても無駄と判断された。


「どこかにもよる。今の見たでしょ生体兵器戦えるの私だけなんだから、ここに長居はしたくない」

「私の昔の家。生体兵器がいてあれなのはわかってるけど、今度いつここに来れるかわからないし。私、両親と一緒に写ってる写真とか一枚も持ってないから」

「ルリ様どうします? ルリ様に任せます」

「……行こう、近いんでしょ」


 寄り道を決め生体兵器と鉢合わせないように大きく道を迂回しキッカの家へと向かう。

 このころすでにツララ陣営と生体兵器だけでなく、ツララたちと同じように生体兵器の交戦の情報からここにいるのではとルリの暗殺を狙う陣営とルリの捜索陣営も廃シェルターへと入ってきていた。

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