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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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家に帰る 8

 ツララたちは暗く生体兵器に有利で人間に不利な時間帯にお供もなしに装甲車一台で廃シェルターまでやってきて、逃げた三人を探していた。


 瓦礫の陰に車を止めてその屋根に座る女性。

 彼女は再びこのシェルターを再建しようと資材投入され瓦礫を撤去していた作業員の休憩所の小屋を双眼鏡で見ていた。


「ようやくストリップが終わりましたよ。やっぱキッカさんの体はすごいですね、同性でも見入っちゃいます、羨ましい」


 幸せそうな声で双眼鏡を下ろしてイガラシに報告するマチ。

 荷物から食事を用意しそれが入ったバスケットを彼女に渡すとイガラシも装甲車の屋根の上に上がる。


「やれやれ、誰も見ていないと思って好き放題しているようですね。まったく、スイレン家のあの子に教育上悪い」

「その子なら小屋の中で水飲んでますよ。どうしますか、イガラシさん? キッカさんたち見つかりましたし、車あっちに回しますか?」


「いいえ、もうしばらく後をつけて様子を見ます。今まで二度、保護しようとした一般兵から何度も逃げていますから」

「それだと見失ってしまうかも、お嬢様は何と?」


 よほどトラウマがあるのかまだあってもいない生体兵器にびくつき、すこしでも早くことを終わらせて帰ろうとする運転手。


「まだ眠っております、起きてから今の状況を説明します」

「あの、じゃあまだここで見張るんですか? だんだん屋根が温まってきて、このままだと私こんがり焼けてしまうと思うんですけど」


 大きな装甲車の上に様々な機材を広げ行方不明のルリたちを探していた。

 すべてシェルターで使っている道具で、生体兵器に気を付けてエクエリや空から偵察できるドローンなどいろんなものを用意していた。


「あの……この付近で行方不明者を探している一般兵はいないのですよね」

「そのはずです。この下で昨日の夜フクラシェルターの一般兵が生体兵器と戦い、重軽傷者が応援に駆け付けたほかの捜索隊の車両で緊急搬送されました」


「……本当に生体兵器はこの辺にいないんですよね。私たち、護衛もいないんですよ」

「大丈夫です、何度も言っているでしょう。ここは防壁の中ですから」


 夜通し逃げた方向を調べているうちに廃シェルターに入り。

 つい先ほどレイラとミチルが水遊びをしているところを見つける。

 見つけた当初、白髪が目立つキッカがいなかったので人違いかとも思ったがスイレンの使用人が着る服を着ているレイラがいたので様子を見ていたところ、何を話していつか全く聞こえなかったので小屋の中から突然キッカが出てきて少し話した後錯乱したかのように急に服を脱ぎだしたようにしか見えていなかった。


「というかキッカさんのわがままボディに見とれてて気にもしてなかったですけど、今見たら女性4人いますね。スイレンの息子さんは休憩所に入っていきましたし全員で5人です」

「情報と違いますね。最後の一人は隠れていたのか待ち合わせをしていたのか、もしかしたらこの事件の首謀者で、3人は脅されているのかも」


「でも裸での水かけっこしてた時はみんな楽しそうでしたけど……脅されてたらあんな楽しそうにできますかね」

「では違うのかもしれません」


 装甲車の上に広げた機材をかき集め装甲車の中に戻る支度を始める運転手。

 すでに十分温まった装甲は地肌を反射した熱気で熱する。


「少し適当すぎではありませんかイガラシさん」

「すべて憶測ですからね、直接本人たちから聞くのが速いんですがね」


「ところで後をつけるといっていましたが、装甲車で追っかけたらさすがにばれると思うんですよ。石や瓦礫を踏む音とかエンジン音とか、かといって離れすぎると見失ってしまいますし」


 運転手は機材と食事の入ったバスケットを手にして天窓から社内に入ろうとすると肩を掴まれイガラシにとめられる。


「動きがあったらこちらから報告しますのでこの車を指定した場所まで移動しておいてください。指示がない場合はお嬢様に勉強用に持ってきた問題集をやらせて勉強を見ていてあげてください」

「……え、私がですか!?」


「他に誰がいますか。それで入ってまいりますので、後は頼みましたよ」

「え、ちょちょ、イガラシさんいなくなったら、誰が私たちを守ってくれるんですか」


 小型のエクエリと無線機を手にするとイガラシは装甲屋の屋根から飛び降りてどこかへと歩いていった。






 おとなしくルリは椅子に座ってキッカたちが返ってくるのを待っていた。

 いつもだったら、この時間何をしていたか、すでに二日目、残された母は屋敷の人間は心配しているんじゃないだろうか、それと。


「ツララ心配してるよね……」


 前線基地で囲われたシェルターが密集し安全だと思っていた場所に生体兵器が現れ、やっとのことでしゃるた^に帰ってきて見かけた一般兵に助けてもらおうとしたら攻撃を受けキッカとレイラ以外に頼れる人間がいない状態。

 女の人に頼ってばっかりだなとルリは静かに考えている。


 扉が開きキッカたちが水浴びから返ってきた。


「お待たせしました、ルリ様」


 彼女の茶色っぽくなった髪は元の白色に戻り、毛先は乾いていない水滴できらきらと光っている。

 他二人も水浴びをしたらしく顔の汚れや爪の間にたまった泥などが洗い落とされていた。


「それではここから移動しましょう、なるべく日陰を通って。つらかったら行ってください」

「わかった。キカも、無理はしないでね」

「まっすぐ突き抜けて反対側の扉から出ていくんだっけ?」

「あっ、あの、この一般兵の人は誰でしょう?」

「服洗ってできるだけ絞ったけど乾いてないからビッシャビシャで重い、あーあーあーこんなに皺だらけ」


 昨日の極限状態から、一晩体力も万全塔は言えないが回復し少し余裕が持てるようになりすぐに荷物をまとめ、主にキッカの持つトランクに、部屋の隅にゴミとして溜まっていた空いたボトルがありそれに水を詰めてたくさん押し込んだだけだが。


「忘れ物はない?」

「……大丈夫」

「ほとんど何も持ってない状態で忘れ物もなにもないと思うんだけど」

「あのキッカさんレイラさん、この一般兵の人だれですか?」

「うわーちょっとしかたってないのに、外随分と熱くなった。エクエリのバッテリーも持ちそうかな」


 荷物を持ち外に出て5人はすぐに移動を始めた。

 近場の日陰を目指して。

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