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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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家に帰る 3

 森の中をがさがさと足と音を立てながら歩く。


「夜は比較的涼しいですね、比較的」

「二度言わなくていいですよ、レイラ」


「というか、また崖に戻るのですからエクエリを用意しておけばどうでしょうか? あのでっかいトカゲがいる近くなのだから」

「崖の上ですけどね、用意しようにも大体使い方がわからないから持っているだけ無駄な気もしなくもないのですが」


「そっかキッカさんは普通の人ですものね、扱えませんよね」

「レイラはこれを使えるの?」


「使えませんよ、触ったこともない」

「返事が速い」


 暗闇の中で動く影があった。

 三人は思わず身構えたが、暗闇から出てきたそれが人だとわかると一瞬安心しまた警戒する。

 しかし、完全に味方だとわからないのでそのまま隠れながらその場を離れようとした。


「みっ、見つけた! スイレン家のルリとその従者! 報告をしないと」


 暗く顔が見えなかったが身長は低く体も細い、声も高いため女性だと判断した。

 暗闇の中で一般兵、彼女は警笛を咥えそれに強く息を込める。


 大きな音が反響し周囲に分散していた明かりが一気にこちらを向いた。


「どうしましょうおとなしく捕まりますかキッカさん」

「馬鹿言わないで。ルリ様を狙っている陣営でしたら危ないですし、一度逃げましょう」


 暗い森の中でいくつものライトに照らされる4人。


「待ちなさい! なんで逃げようとするの、私たちはフクラ家の命令であなたを探しに来たのに」


 逃げようとするそぶりを見せると警笛を吹いた彼女の声が引き留める。


「すみませんいろいろ事情があるんです。フクラの一般兵だというなら、ツララ様にお伝えしていただけませんか? 崖の上の廃シェルターで隠れて待っていますと」


 たくさんの足音に追われながらキッカは答えた。

「待て、それはどういう意味だ! 逃げるな、それ以上そこを動くな!!」


 助けに来たのに逃げ出す相手に驚きながらも怒りの声を上げる一般兵。


 やはり日ごろの鍛錬かあるいはルリたちの疲労か、一般兵のほうが走るのが早く徐々にお互いの距離は縮まっていった。

 そんな時、先日の雨風で千切れた枝や落ち葉を踏みそれに加え何かが地面をする大きな音。

 そして唸り声。


「何の音? 捜索にドローンなんて使ってないはずだけど」


 木々を揺らし現れた、首や背中に太く長い棘の生えた大きなトカゲ。

 暗く影しか見えないが間違いはない崖で見た生体兵器。


「近くにいたのかタイミングの悪い」

「大きな音を出すから!」


 生体兵器の発見とともに身を隠すキッカたち。


 すぐに木の影に隠れたキッカたちと、暗闇で動く大きな何かを生体兵器と認識するまでに何秒もかかる一般兵。

 やっとだが気が付いた彼女の行動は早かった。


「何こいつ。……情報にあった生体兵器! 生体兵器が出たぞー!!」


 ルリたちを照らしていたライトが一斉に生体兵器を照らす。

 少ししてから空に複数の照明弾が撃ちあがりライトが消えた。


「私たちは戦いに巻き込まれないよう離れれないと、狙われたらひとたまりもない」

「随分と明るくなりましたね。初めから打ち上げればもっと早く私たちを見つけられたのでは?」


「……意外と値段がするから、ツララのところは安全で軍事費ほとんどない、だから、節約かも」

「とりあえず逃げますよ、荷物をこちらに。ルリ様は走れないようならレイラにおぶさって。セイショウしっかりついてきてよ」


「わ、わかりました」


 レイラはルリを背負おうとしゃがんだが自分で走れると断り4人で、光のとどかない森の奥へと走る。

 一般兵と生体兵器との戦闘となり武器を持たないルリたちは逃げ出す。

 生体兵器は硬い鱗を傷つける威力を持ったエクエリを撃ってくる一般兵の元へと向かい、その生き物は恐ろしき兵器らしさを発揮していた。


 無数の足音と悲鳴、悲鳴、悲鳴、暗闇を飛んでいく光の弾が少なくなっていったが、木で生体兵器と人影は見えずルリにひどい光景を見せずに済んだとキッカは夜であることを感謝する。

 その悲鳴を聞かないように耳をふさいで走るセイショウ。


「キカ、あの人を」


 振り返るとルリが指さす方向に一人はぐれた一般兵がいた。

 ルリたちを見つけ接近していたため孤立した笛を吹き仲間を呼んだ彼女。

 他の一般兵同様エクエリを撃ち、勇敢、あるいは死に物狂いで生体兵器と戦っている。


「わかりました、レイラはこのまままっすぐ走って。あとこっちの荷物を私は少しあっちに行ってきます」


 レイラとセイショウが暗闇に消えていくとキッカハ引き返す。

 生体兵器と戦闘が始まって5分とたっていないが、すでに生体兵器の向かって飛んでいく光の弾の発信源は彼女のみとなっていた。


 戦いに夢中になっているのか、一人になっても戦い続ける気なのか彼女は仲間がいなくなっても逃げもせずエクエリを撃ち続ける。

 そんな彼女に後ろから近づくとキッカは担ぎ上げた。


「何っを!」

「ご主人の命令です。逃げたか死んだか知りませんが、戦っているのはあなた一人なんですから私たちとともに逃げますよ。暗くてよく見えませんが生体兵器は弱っている様子もないですし、生体兵器はこのままあなたが戦っても倒せないと思います」


 キッカに急に担がれた一般兵の彼女は驚いて手足をばたつかせて暴れる。


「私だけっ!? そんな、やられたのなら助けないと」

「そんな時間ないですよ、バカですか!」


「いいから放せ白髪」

「汚いし、のど乾いたし、おなかすいたし、熱くてイライラしてるから、これ以上ここで無駄口叩くならお腹とか殴って黙らせてから運ぶけど?」


「……わかった暴れない、だから下ろして」

「もう少し進んだら下ろします。それまで担がれてなさい」


 廃シェルターは丘の上、道もわからず坂を上がるべきだと走った。

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