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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
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すれ違い 2

 土砂崩れのあった崖は、いたるところで多くの一般兵がエクエリをもって周囲の警戒をしている。


 事故現場に連れてきてもらったツララは崖下に向かおうとしたが、土砂ダムが大きくなり始め水を抜くための重機が通るため近づくには危険といわれ仕方なく崖の上から見下ろしていた。

 さらに生体兵器の足跡が発見され、まだその危険も排除できていないため下には降りられないといわれてしまったのでツララは途中で土砂に埋まった道路からガードレールにつかまり崖下を覗き込んでいた。


 彼女に伝えられていない情報は、生体兵器に食されひどく破損している遺体が複数あるというとこだけ。


「ルリさん……どうかご無事で……」


 崖の下には泥に埋まった車が見え、そのそばを音を立てて茶色い川が勢いよく流れている。

 はるか下を覗き込んでいるツララにヘットセットを通じてイガラシからの連絡が入った。


『お嬢様』

「何かわかりましたか、イガラシ」


 小型の扇風機を片手に土砂崩れの現場を覗き込んでいたツララが、耳につけたヘットセットでイガラシからの連絡を受け女の小走りで装甲車の元まで走ってきた。

 シェルターの外をフリフリのドレスで外を歩くわけにもいかず、未成年者用の一般兵用の服に着替えており長ズボンに跳ねた泥が付いても気にせず走る。


 ツララが目指す大型の黒ずんだオレンジと赤土に似た茶色の二色迷彩の装甲車。


 外部カメラで外を確認するためその車両にフロントガラスはなく、エクエリの銃身を出す為の覗き窓がたくさんある四角いコンテナ状の車体に、ちょこんと戦車に取り付けるものより小さな砲台が乗っており、左右に三枚、後部に今一枚、計七枚のドアが付いている。

 通常の装甲車よりずっと頑丈で大きくなった車体。


「イガラシ、ルリさんが見つかったのですか!? それで今どこに!」


 分厚い扉を勢いよく開け、音声で現場の状況を確認していたイガラシに大声で話しかける。

 情報を集めていたイガラシはヘットセットを外しツララのほうを見ると立ち上がり彼女を自分が座っていた机の椅子に座らせる。

 そして氷のつまったクーラーボックスからジュースを取り出し水滴を拭いて缶を開け彼女に差し出した。


『外はお熱いでしょう。あちらで下を見下ろすより、ここにいた方が情報が手に入ると思いますが』

「ありがとうございます。ここにいた方がいいのはわかっています、それでも居ても立っても居られないんです、それでルリさんは無事ですか!」


 そう質問し両手で缶を掴み一気に飲み干すツララ。


「ええ、フクラシェルターの周辺でそれらしき人物を見かけたということでしたが、それが、なんというか……見失ったということです。報告によるとフクラシェルターの付近で発見されたのは、女性三名と子供一人、おそらくはルリおぼっちゃまだと思われます」

「なんで!? 保護を、探しに行ったのに! 逃げられちゃったの!?」


「申し訳ございません、そのあたりの報告は上がってきておらず」

「イガラシ、あなたが謝る必要はありません!」


 車内のあちこちにある画面の一つを指しそこにフクラシェルターから崖までの地図を出して、ルリが見つかったという場所を画面内にマーカーで丸を付ける。


「今ここにあるのは鎮圧用ゴム弾で動きを封じようとしたところ、逃げられたということです」

「そんな、なんて馬鹿な!」


「ええ、旦那様から捜索を手伝ってくれているシェルターの統治者に伝えてそこから一般兵へと伝わっていいて、ゴム弾の使用は細心の注意をと伝えてあるはずなのですが……」

「でも撃ったということはよく伝わっていたのでは? ルリ様が無事だとわかったのにまた行方不明だなんて。きっと今頃怯えています人間不信になってしまいます!」


「それはちょっと飛躍しすぎかと」

「そもそも攻撃をしていいのはもし仮にシェルターに住んでいない難民などに、ルリさんが誘拐などされていた場合だけで、それ以外は戦闘行為は禁止と」


「はいその通りですが、入ってきた情報によりますと、ルリ様をつれて数人は助けに来た一般兵を見て途端に逃げ出したと」

「それに万が一ルリさんに当たったりなんかしたら、怪我をしてしまうではないですか!」


「旦那様からよく念押しに注意されただったのですが、こちらからもう一度注意をお願いしておきましょう」

「そんなことは後ででいいんです。私がルリさんを迎えに行かなくては、イガラシ、早くこの場所へ向かいなさい」


「かしこまりました。それではまた運転お願いしますよ」


 イガラシが運転席へと声をかけると、運転席からマチの文句が返ってくる。


「私、この車まだ慣れて無くて怖いんですけど! 崖が!」


 イガラシが途中で捕まえた使用人の一人、無茶言ってこの大型の装甲車を運転させている。

 普段運転しているトラックとは比べようがないくらいに勝手が違う装甲車を何とかして崖のそばまで走らせ、その達成感で一仕事終えた感を出していた彼女はツララの機嫌をうかがいながら文句ウィぐちぐち言っていた。


「走れさえすれば問題はありません。さぁ、はやくルリさんの元へ!」

「これ、私に特別手当とか出るんですか」


「業務範囲です、文句を言わないでお嬢様の指示に従いなさい」

「そんなー、だってシェルターの外ですよ……」


 それでも文句を言っているとしびれを切らしたイガラシが使用人のマチを叱り、彼女は半泣きで鼻をすすりながら装甲車を走らせた。

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