表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
5章 狙われた命 ‐‐日常へ帰還‐‐
170/798

事故 5

 まだ風が細い木を揺らすほどの強く吹く中、流れのはやい雲間からが太陽が見え隠れする。

 すでに四人は廃シェルターを通り過ぎ崖を抜け順調にフクラへと向かっていた。


「なんであんなところに生体兵器がいたんでしょうね、ここは安全地帯なのに」

「危険度がないグリーンな安全地帯でも絶対ではないということなのでしょう」


 ルリをセイショウと一緒に歩かせ、キッカとレイラが先に進んで安全そうな道を探す。

 いまだに車で走ってきた道路に戻れず、高い木々の生い茂った森の中をキッカの勘と方向感覚だけで歩ていた。


「とにかくここから少しでも遠くへ離れないと、いつあれが追ってきてもおかしくないんですから」

「確かに。今はシェルターに帰れるかより、あれのお腹に入らないように逃げ切ることを考えないといけませんね」


「ええ、ご主人……じゃなかった。ルリ様を早く安全なところに連れて行かないと。生体兵器があれだけだとは限らないんだから、一匹いるってことはほかにも数匹いると考えないと」

「そんなこと言うと怖くなってくるからやめてください、虫じゃないんですから」


 後ろでは時折べそをかくセイショウをルリが付き添ってなだめている。

 転ばないように手を引いて歩くその姿をツララが見たら軽くショックを受けるだろう。


「レイラ。いいですか、考えすぎもよくないですが考えなさすぎもよくありません。今私たちがしなければならないことは、ルリ様の安全です。フクラにつくまでは油断なんてできませんし休んでいる暇もない、私たちは今日中にシェルターへと戻る。それ以外はどうでもいいんです、いざとなったら私たちの命でルリ様を守りますよ」

「あー、すごくきれいな薄明光線。見てくださいあれ、神々しいなーってそう思いません?」


「話をそらさない。……あ本当、すごくきれい。じゃなくて!」

「すみません、疲れているので頭使うのはちょっと。つらたん」


「……休憩はフクラが見えてからにしましょう。それまでは頑張って」

「……はい、できる限り頑張ります」


 そういってキッカが草をかき分けると道路へと出れた。

 太く三本の蔦が絡み合った木の向こうにシェルターが見える。


 後から追いついたルリとセイショウにその光景を見せ、休みなく歩きっぱなしのいつもより口数の減ったルリを安心させた。


「見えましたね!」

「……うん」

「よかった、いったん休憩ですね。やっと休める」

「よかった、早く救助を呼びましょう。帰りましょう!」


 休憩と四人はそのねじれた木に腰掛ける。

 キッカはすぐにでも移動したい進言したが三人は休みたいと駄々をこね、レイラが約束が違うといっていたが多数決で休憩する方向になり、それに満足したようで何も言わなくなった。


「もうすぐなんだから、あわてなくていいでしょうキッカさん」

「そうです、もう目的地が目と鼻の先、五キロほどだと思います。今のうちに休みましょう」


 キッカの持つアタッシュケースを見てレイラが思い出したように「そういえば、食べ物が少しありましたよね?」と尋ねた。

 彼女の言葉に反応し、食べましょうと連呼するセイショウ。

 崖の下で目を覚ましてからまだ何も口にしていないない4人。


「しかし、いま食べてしまうとわずかしかない食料がなくなってしまう。今日中にたどり着けなかったら空腹で歩くことになりますよ?」

「もうすぐシェルターにつくんです、食べて荷物を軽くしましょうよ」

「水も、水も飲んでいいですよね!」


 困るキッカをよそにレイラとセイショウの二人は荷物の中から食べ物を取り出す。

 それを四等分してみんなに配った。


 レイラたちが休んでいる間にキッカも信号弾か発煙筒など何かないか探したが、このかばんには入っていなく。

 探すのを諦めキッカも木によりかかり体を休めた。


「さてじゃあ休憩も終わったことですし、出発しましょう。シェルターにつくまで気を緩めないでくださいね。いいですねレイラ、セイショウ、ルリ様」

「……キカ、なんか眠くなってきた」

「食後は急激な運動はよくないそうです、って聞きました」

「脚が太くなりそう、キッカさんもう道路出たんですしここで待ってれば救援がきますって」


 キッカが立ち上がり移動を促すが動く気のない三人。


 ーーセイショウとレイラは屋敷の掃除で多少の体力はあるだろうが、ルリ様はそもそも運動が苦手な子だここまで音を上げず黙々と歩いてくれたことに感謝しないといけないだろう。

 仕事仲間や旦那様の死で元よりみな足だけではなく心も疲れている。

 しかしシェルターでも無事を祈って待っている人がいる、一刻も早く安心させないといけないのだが……。


 少しその場で考えたがしぶしぶ返事を返す。


「仕方ありませんね一時間、時計も何もありませんが体感的にそれくらいしたら移動しますからね」


 二人からダルそう声が聞こえた。

 すでに雲はほとんど流れ次第に青空が見え始めている。


「そもそも、決定権があるのってキッカさんではなくてご主人なのでは?」

「そうです、キッカさんは勝手に決めすぎです!」

「え? えっと……ルリ様」

「キッカの判断に任せる」


 ルリは食料をかじりながら答える。


「ありがとうございます、ルリ様。聞きましたね二人とも、これからは私の指示に従ってください」


 シェルターフクラを見ながら休む四人、ここから彼女たちの短く長い旅が始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ