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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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前線基地、11

 食堂を暗くするように指示を出し、窓のカーテンを閉め、照明を落とすと軍刀を支持棒のように使い女性指揮官は天井から吊るされたスクリーンを指す。

 そして彼女は話始める。


「皆知っていると思うが、一か月前、精鋭竜胆隊が一匹の生体兵器の討伐に失敗した。精鋭に負傷者が出たのと討伐しきれなかったことから、その生体兵器は特定危険種に指定。巣を持たず移動しながら生体兵器との戦闘後にどこからともなく現れ、死人や他の生体兵器の死骸などをむさぼることから食人鬼、グールと名付けた」


 そしてスクリーンに一匹の生体兵器の写真が映し出される。

 8本の虎柄のモジャモジャした太い脚、腹部にモジャモジャした黄土色の毛に深紅色の二本の線が入り、虹色に光を反射する8つの眼を持った黄色の毛玉のような昆虫型の生体兵器。


 ススキ畑に擬態したら発見しずらいだろうが秋はまだ先。


「一度は行方をくらましたグールだったが、体勢を立て直した竜胆隊のリベンジとなる捜索が功をそうし一週間前に戦場跡地で見つかった。グールは蜘蛛がベースの生体兵器で死肉を食えばその分、奴の体が大きくなっているという話だ、今回の作戦はこいつを討伐する」


「数は一匹なんですよね、今回の作戦こんなに大勢必要ですか?」


「手負いの獣ほど怖いというものだ……誰だ、今勝手にしゃべったのは‼ 質問があるなら手を挙げろ、作戦実行時に敵陣のど真ん中で囮として働いてもらうぞ」


 しかし、返事は帰ってこない。

 指揮官は一度咳払いをするとスクリーンに映されている画像を変えた。


「竜胆隊はこの時の戦闘で負傷、今作戦には出られず命がけの撤退後シェルターへと搬送された。このことから、たとえ精鋭でも敗北、作戦の失敗の危険性が出たために、今回はこの付近で仕事にあたっていた複数の精鋭を派遣してもらった。では作戦上の役割を伝える、戦場跡地には他の種類の生体兵器も確認されており戦闘中にあちこちから集まってきて数が増える可能性があるため、一般兵は精鋭達が安心して戦えるようにこれらの邪魔者を食い止めてくれ。朝顔隊、鬼胡桃、山茶花隊はグールとの戦闘のみに集中してくれ」


 さらにスクリーンの映像が代わり地図が映し出される。


 画面の端に戦場跡地とか書かれ航空写真らしき映像には、背の低い草むらからくっきりと映る黒い点があちらこちらに映っていた。

 軍刀を地図に沿って動かしながら彼女は説明を続ける。


「ここが今回戦場となる場所、戦場跡地だ。ここから約5キロの地点にある、この土地には前触れもなく霧がかかるし不発弾も多く、普段は滅多に立ち入らない危険エリア、進入禁止エリアとされていた。だが、今回はそこで戦ってもらう。先ほどこの基地から飛ばした小型無人機が奴の姿を撮影した。現在の行動範囲はおおよそこの地点。我々は各自バラバラにこの基地を出発、作戦決行時刻までに集合地点に到着していること、その後このA地点で隊列を組んで精鋭はC地点に一般兵はBとD地点で生体兵器との戦闘を開始せよ」


「あの黒い点何ですかー?」


 またどこからか質問の声。


「ん、ああ。昔の兵器の成れの果てだ画質が悪くて変に見えているがな、戦車やトラックだと思ってくれていい。中は生体兵器が潜んででいたりするから接近には十分注意するように……というか、さっきから誰だいいかげん叩き出すぞ、質問があるなら手を挙げろと言ったはずだ!」


 答えるだけ答えての突っ込み、やはり返事はない。


 声の主はうつ向いて必死に笑いをこらえている。

 自分の隊の隊長の姿を見てコリュウは飽きれてため息をつく。


「さらに竜胆隊からの未確認の情報だが皮膚が分厚く通常の弾の効き目が薄いとのこと、それともう一つ奴はものすごい筋力とのことだ、今回の竜胆隊のケガも飛び散った兵器の残骸が四方にまき散らされそれをもろに受けてのことらしい。以上のことからグールとの戦闘は地形にも十分気を付けること、今まで戦ってきたほかの生体兵器以上に警戒、慎重に戦闘を行うこと。最後に」


 そしてまたスクリーンに映された映像が切り替わる。


 映し出されたのは生体兵器はボロボロだった。

 体中傷だらけでそれが全て度重なる戦闘で名も知らない一般兵たちのエクエリでつけられたであろうことは想像できた。


 鮮血のような真っ赤な頭と濁った黒色の金属の光沢を放つ胴体、頭から延びる太い触覚が二本、無数の黄色い足を持つその百足型の生体兵器。


「諸君も噂になっていてすでに知っているだろうが、基地壊しのイーターがこの付近で姿を消した。無人機を飛ばしているがいまだに発見できていない。今ここに集まっている情報は奴についての情報は好んで人が集まっている場所を襲い惨劇を振りまいていく、赤い頭、爪の部分通称大顎には毒があり、大きさに見合わず恐ろしく俊敏ですばしっこい、どこに隠れても見つけ出され、防壁や建物の壁をいとも簡単に引きはがすということくらいだ。今回の作戦に引き寄せられて戦場跡地に現れる確率が非常に高い。このこともあり集合は現地が適切と判断された理由の一つだ。接敵した場合は一般兵は見つけ次第全力で退避、どんな手を使ってでも逃げ切れ。精鋭は、悪いが全力でこいつの討伐を命じる。こいつは野放しにできない物でな。単体で基地を破壊するほどの生体兵器が精鋭でも勝てるかわからないが、他の精鋭が合流できるまでの時間稼ぎでもいい、とりあえず食い止めてくれ」


 部屋が明るくされスクリーンが片付けられていく。


「話は以上だ、解散」

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