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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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帰るまでは 2

 階段を下りまであと数段というところで冷たい風が吹きギンセツは違和感に気が付いた、一階の壁が開いている。

 一階でどこかの新兵が生体兵器との戦闘時のマニュアル通りに戦闘用の扉を開けてしまっていた。


 鉄蛇の装甲にぶつかり続ける虫はその暗闇からさらに複数匹飛んできて、それは戦闘は始まっているのに悠長に銃座にエクエリをつけている別の新兵の顔にぶち当たり彼はバランスを崩して開いた壁から夜闇へと消えていった。


「馬鹿か戦闘用の壁なんか開くな! さっさと閉めろ、光が漏れてそれを目印に飛んできているんだから!」


 ジガクが叫び終わるころには、扉を開いた新兵は扉を開いたまま別の車両へと逃げ出していた。


「くそ、こうしている間にもまだあそこから入ってくるぞ!」


 怒鳴り声と涙声と震える声の入り混じった声でジガクが騒ぐ。

 突然目とのどに痛みが走る、突然のことでさらにパニックに陥り階段から足を滑らせたジガク。


「畜生、目がイテェ、のどがチクチクする。なんだよこれ、生体兵器めぇ」

「違うこの痛み霧だ、先頭車両から濃い濃度で霧が出されたんだ」


 先頭車両から出た霧で生体兵器を引きはがそうとしたそれは、一度取りついた生体兵器を飛び立たせ追い払うことができたが霧がなくなった後、再度その装甲に取りつきに戻ってきた。


 その多くは最初の襲撃で穴の開いた場所やうっかり開いてしまった壁をめがけて。

 ギンセツが目が痛みながらも急いでジガクを階段の上へ、中腹まで引き上げる。

 開かれた壁の反対側、階段から先に進むことのできない二人のもとにザンキがやってくる。


「無事だったか、誰だ壁なんて開けて厄介ごとを増やしてくれたのは。敵は入ってくるし霧は入ってくるし、ひでえな」

「クグルマさん、よかった。エクエリのしまってある棚のところまで行けなくてどうしようかと」


 先輩の大人の登場で安心したのか混乱していたジガクが突然泣き出し、なだめられながら上の階に避難する。


 一階と二階の開く壁は別々の操作系統のようで安全だった。

 あちこちで下の階に降りられない一般兵たちが集まりどうするか相談している。


「別の車両から増援を」

「あちこち手いっぱいだ中に入ってきた以上の生体兵器がこの屋根にとりついている」


「うわぁ……」

「側面にいるのは横から別の鉄蛇に撃ってもらえば装甲に傷をつけずに奴らを倒せるが、屋上は狙えない。山に引き返せば高低差で狙えるだろうがシェルターを危険にさらすわけにもいかないからそうもいかないだろう。だから、ここは俺たちで何とかしないといけない」


「とりあえず目の前の奴から倒していきましょう、あの大きさだし鉄アレイとかで殴れば……」

「それを振り回すくらいならエクエリ取りに行ったほうが早いだろ。君も冷静になれ……いや、それだ」


「いや、でも鉄アレイは……」


 疑問符を浮かべる二人を連れて、ザンキは掃除用具入れを開けた。


「違うそこじゃない、別のものエクエリ以外のものを使うんだ」



 三人は掃除用具をもって下の階に降りる、先頭を切って一階を進む三人の後にさらにブラシをもってほかの一般兵たちが続く。


 前足がやたら大きく取りつかれ下手に引きはがそうとすると肌までズタズタに引き裂かれそうな爪が付いている、体は甲虫の名前の通り甲羅や鎧のような丈夫そうな外骨格、森や草むらに溶け込めるようになのか緑色できれいだった、それは複数匹おぞましい羽音を立てて飛んでいる。


「よし、心の準備はいいか?」

「怖いです」

「怖いです!」



 飛んできた生体兵器をザンキが叩き落す、叩き落され床をはねひっくり返るがすぐ起き上がると歩いてまた向かってくる。

 歩いて接近してくる奴はデッキブラシで弾く、床にしがみつくやつは押さえつけて通過するまで動けなくした。


 順調に棚へと向かって進んでいくとジガクのデッキブラシに生体兵器がくっついた、叫びブラシを振り回すジガク。

 手を離さずブラシを振り回し続ける彼から、ザンキが力ずくでブラシを取り上げ捨てる。


「もう踏みつけたほうが早い、どけ! 二人とも」


 落ちたブラシから離れる生体兵器に勢いよく体重をかけるとその瞬間、昆虫は粉々に飛び散った。

 踏んずけたザンキの足ごと。


 地雷でも踏んだかのように足は吹き飛ばされ、膝下を失ったザンキはその痛みから絶叫を上げる。


「……爆発した」

「クグルマさん!」


 あたりを見ると同じように爆発しそれに巻き込まれた兵士が次々と倒れていく。

 更に、飛び散った破片で周囲の兵士たちも負傷した。


 吹き飛んだ甲虫の足が彼の腕についていて、悪いことにそれはまだ生きており爪や棘が徐々に食い込んで服の下から血がにじむ。


「これヤバいんじゃないか!」

「ザンキさん! しっかり、今止血を」

「自分でできる、早く扉を閉めてくれ」


 ザンキはすぐに救急箱を持った一般兵に囲まれる、ギンセツ達三人を先頭に固まって行動していたのだから衛生兵はすぐ後ろに待機していて彼らの処置はものすごく速かった。


「自分のエクエリをとってきます。少しだけここで持ちこたえてください」


 ザンキが倒れている間にすでに先に進んでいた一般兵たちはエクエリを手にしており戦闘が始まっていた。


「誤射には気をつけろよ、手足がふっとんじまうからな」

「わかってます、ジガクこそパニックになって今言ったこと起こさないでくださいよ」


 エクエリを手にした二人は後ろを振り返る。

 治療を受けるザンキは無事そうなので、ギンセツとジガクは彼に言われた通りまずは開かれた壁を閉めるために壁のほうへと移動する。


 さらに外から生体兵器が入ってきた。

 大型のエクエリを持つが大きさと重さに振り回され接近する生体兵器に対処できない。

 ギンセツの軽量化されたエクエリはその重さに振り回されることなくジガクに接近する生体兵器を打ち抜いた。


「ジガクはブラシで動きを止めて、僕がとどめを刺します」

「おおう、確かにそのほうがよさそうだな」


 大型のエクエリを下ろして一度捨てたブラシを拾い上げる。


「また来た!」


 即座にエクエリを構え甲虫に撃ち込む。

 頭を守るように伸びていた生体兵器の前足が吹き飛んだが、それでも向こうは進むことを諦めなかった。


「ちょっとはひるめよ、腕もがれたんだぞ。ていうかなんで一撃で死なない、高火力なんだろ!?」


 前足がやたら大きくシャベルのような形になっており、小型の生体兵器でありながら大型のエクエリの高い火力を一撃のみなら防ぐことができた。

 ギンセツが前足がなくなっても進んでくる生体兵器にひるんでいると、ジガクがデッキブラシで進行方向にいた生体兵器を弾き飛ばした。

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