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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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戦いのない時間 2

『戦闘終了、繰り返すこの先で行われていた戦闘は終了した。臨戦態勢は解除、各自解散』


 本日もD・サーペントは戦闘することなく、そのまま戦闘が行われていた区域を通過する。


 ザンキは警報が消え開かれた壁が閉まるとすぐにその場から離れていき、ジガクは大型のエクエリを銃座から取り外すとそれをしまってある棚に戻す。


「今日も無事に終わるな」

「ジガク油断するには早いんじゃないんですか? まだ、夜にもう一度ここを通るんですけど」


 汚れはしないもののハンカチで一度磨いてからギンセツもエクエリを棚に戻した。


「この後どうするギンセツ? 時間あるし自主トレでもするか?」

「ジガク初日の動揺が嘘かのようにここになじんでますね」


「戦闘がなければここは衣食住に困らないしな、見飽きた場所と娯楽が少ないのはマイナスだけど」


 ギンセツが自販機の前で財布を取り出そうとすると足元に何か落とした。


「何か落としたぞ?」


 ジガクが拾い上げたのはエクエリの追加パーツのグレネード系の弾。


「なんだこれ?」


 エクエリで破壊できないものを壊す爆発系、奇襲や逃げる時用の煙幕系、目くらましや夜間の明かり閃光弾系、捕縛用ネットなどのその他等の追加の装備を撃つ道具の取り付けが必要になる。


 貸出されているが身分証の提示と弾の種類に応じての使用許可の申請と弾は別料金がかかるため、いつ許可が下りるかわからない弾を好んで買う一般兵はいない。


「さぁ? 僕もよくわからないんですよね荷物を整理していたら出てきて、僕の荷物に入ってたんでシアさんのくれたものだと思うんですけど……説明書的な奴が入ってなかったんで弾の種類がなんだかさっぱり」

「これ一発だけか?」


「はい。荷物全部ひっくり返して探したけど結局あったのはこれ一つだけ、中身がなにかの試し打ちもできなくて困ってます」

「この間、掃除の帰りに整備してた連中がいたろ。そいつらの誰かに見てもらうか?」


 基礎体力を上げているジガクとメモリからもらった謎の弾を持ったギンセツのもとにザンキが返ってくる。


「よう、二人とも。まだここにいたか、探す手間が省けた」

「どうかしましたか」


「新しい仕事だ、車両を移動するついてきてくれるか」


 返事を返し二人はザンキの後に続いて車両を移動する。


「どこに行くんですか?」

「最後尾の車両だ。今日はこの後荷物を受け取って、このサーペントの防衛の役割を終えた最終日にそれをシェルターに届けるんだ」

「なんで、荷物運送用の鉄蛇があるんじゃないんですか?」


「野槌系統の鉄蛇のことか? あれは十分でかいが基本は部品や物資を運ぶものだし、あれだけじゃ運びきれない量があるんだよ。人の生活に欠かせないもの、技術系や工業系のシェルターの数倍の数があるシェルターで作っているものだ」

「生産系……食べ物ですか?」


「そうだ、正解だアカバネくん。小さいシェルターだから倉庫をたくさん作るスペースなんかない、鉄蛇は電力を持て余しているとなれば冷蔵貨物車をつなげて、中身が出荷される時までこっちで預かろうってわけだ」

「なるほど」

「でも、冷蔵車なんてついてないんじゃ」


「向こうにあるぜ、向こうで連結する。だから今最後尾まで移動しているんだ」


 何度か線路を切り替えた先に周囲に建物も何もないが駅のようになった人工物があり、鉄蛇の冷蔵車らしき3両連結した状態で止まっている。

 その周囲には多数の軍用車両が止まっていた。


 戦車や装甲車が数両でほとんどはトラック、それらから段ボール箱や発泡スチロールの箱が次々と降ろされて冷蔵車へと運ばれていく。

 サーペントは冷蔵車の隣、コンクリート造りの人工物の横に停車した。


「すごい荷物ですね、これ全部食べ物なんですか」

「ああ、小さいシェルターって言っても最低でも一万人は住んでいるからな。D・サーペントだけじゃないぜ、この後も他の鉄蛇がここにきて同じ作業するからさっさと済ませよう。さぁついてこい、冷蔵車に向かうぞ」


 久しぶりに踏みしめる動かない地面に浮かれながら、日の光で温まったコンクリートの上を歩く。

 ザンキは冷蔵車の扉にかけられていた画板をとると挟んであった書類をめくり扉をかける。


 後を追ってギンセツとジガクが冷蔵車に乗り込むと一気に気温が下がった。

 冷蔵車の中はサーペントの車両と変わらない大きさで二階のない一階建て、その大きなスペースいっぱいに荷物が詰まれている。


「生臭っ」

「ああ、これ運んでいると生体兵器が寄ってくるんだ、今夜あたりから夜中にたたき起こされることを覚悟しておけよ」

「なんで、匂いをそのままに? 匂いを外に漏れないようにすれば生体兵器が来ないのに」


「鉄蛇はシェルターに生体兵器が行かないように防壁としての機能を持っているんだ。ほかのシェルターで作っている前線基地と同じで、生体兵器をこちらに引き付けるようにな。寄せ付けないようにするなら鉄蛇に散布塔の霧を噴かせながら走らせればいいだけだしな。それをしないってことは、まだ生体兵器の数を減らしてこの地を取り戻そうとしているんだろうな」

「外にもいっぱいあったけどすごい荷物ですね、ここで何するんですか?」


「検品だ。冷蔵車は三両しかないが荷物が多い手分けしてやれって、新兵の雑務だ。早くしないと凍えちまうからさっさと済ませようぜ二人とも」

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