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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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砲火 2

 森を抜けると枯草の中から新芽が出始めた広い草原へとでる。


『戦闘区域に入った、以降勝手に持ち場を離れることは許されない。じきに先行して戦っているJ・世界蛇とV・ミズチが見えるだろう。報告ではすでに半数の討伐が完了し我々は残党を狩ることになる。だが油断はできない、敵は大きく鈍重だが接近されればこのサーペントの装甲は役には立たないだろう。その前に敵を倒してほしい』


「今回は相手がのろまだから新兵に手柄を譲ってやれと伝令があった。まぁ、だからアカバネ君とヤソバ君に任せる。残っている数は少ない、冷静に狙いをつければ普通に命中するだろう。がんばれよ」

「わかりました」

「お、おう、生体兵器ぐらい、おれが倒してやる」


 金属がきしむ音が聞こえ進行方向左、銃座側の壁が上下に開いた。

 窓の向こうだと見ていた外の景色が、壁がなくなったことでまじかに見え車内が一層広く感じられる。

 外からの風も強く入ってきて直後何かの焼ける臭いにギンセツは顔をしかめた。


「何のにおいですか?」

「昆虫型は体内に毒や酸、独特の分泌物など劇物を持つことが多いんだ。それが流れ出してその辺の気化しているのだろう。嗅いでいて気分が悪くなるようなら、酸素吸引用のマスクが個々の二階にある。戦闘が始まるととってくる時間がないから今のうちにもってこい」


 D・サーペントの先頭車両から汽笛が鳴り響く。

 どうやら交戦区域に入ったようでわずかに聞こえていた私語も汽笛が止まると同時に消えた。


 ザンキに手伝ってもらいジガクは銃座に大型のエクエリを固定する。


「やり方は教えた方つぎはひとりでできるな? よし、では最初はヤソバ君に戦ってもらおう、すまないがアカバネ君は補佐を頼めるか?」

「何をするんですか?」


「三人で戦う場合は一人が砲撃、これはヤソバ君。一人が周囲を警戒し攻撃目標の支持、これは俺な。そして最後の一人は補佐……何でも屋だ、エクエリの替えのバッテリーをもらってきたり伝令に走ってもらったり、攻撃の手が足りないときは直接大型のエクエリを構えてもらったり用がないときは救急箱もって待機していてくれ。救急箱はあっちの白いワッペンつけている奴からもらってきてくれ」


「わかりました、ちょっと行ってきます」


 ギンセツが救急箱をもらって帰ってくるころには攻撃が始まっていて、駆け足で持ち場へと戻る。


「いた、生体兵器が」

「よし、まだ距離があるが一応は射程に入っている。ヤソバ君二つ奥の奴に狙いをつけろ」


 別の線路を走る鉄蛇の最後尾列車が見え、そこからいくつもの光の弾が飛んでいく。

 ジガクが狙う先にギンセツが目を凝らすと、光の飛んで行った先に木々をなぎ倒し草原に次々と現れる生体兵器の姿があった。


 シェルターを走るバスのような巨躯に音を立てて動く六本の脚、前に長く伸びた特徴的な不気味なY字の角の生えた巨大なこげ茶色の昆虫と、同じ種類に見えるが角のない一回り小さな昆虫型の生体兵器。


 どれも牙や爪などの傷や踏まれたか殴られたようなへこみがあり個体により部位の欠損も見られ、生体兵器たちが攻めてきたというより逃げてきたという印象を受けた。


 戦場についたD・サーペントは警戒を呼び掛ける赤色ランプとすべての照明を同時に消した、速度を人の歩行スピードより落とし新兵たちに攻撃の合図が贈られる。


「さぁ、始まったぞ。落ち着いてよく狙え、今回のは大きく重装甲の相手だからよく狙えば当たる」

「当たらない、くそっ」


「焦るな焦るな、敵が目の前にいるわけでもないんだから落ち着いて狙うんだ」

「そんなこと言ったって、このっ、このっ」


「あれって背中に羽がはえてませんか、もしかして飛べたりするんじゃ?」

「よく気が付いたな。普通に飛ぶぞ虫だからな。あの大きさだから500メートルくらいしか飛べないだろうが、ぶつかられたら脱線するかもな。何としてもその前に倒せよ」

「のんきにしゃべってないでギンセツも何かしてくれよ」


 銃座で固定されたエクエリから次々と放たれるジガクの攻撃は生体兵器を飛び越え彼方へと消える。


「ヤソバ君にはまだ早かったかな。アカバネ、やってみろ銃座使うか?」

「大丈夫です、このエクエリ整備してくれた人がだいぶ軽量化してくれたんで、このまま構えてでも行けそうです」


「じゃあ、ヤソバ君もそのまま攻撃を続行だ」


 大型のエクエリを構えると遠くに見える生体兵器に向けて発砲する。

 ギンセツの攻撃は生体兵器の横をかすめ木に大穴を開けた。

 使うのが初めてで緊張も合わさり思うように狙ったところへと当てられない二人の攻撃。


「当たれ、当たれ! クソックソッ!」

「当たらないなぁ……もう少しで当たりそうなんだけどなぁ」


 ジガクが一発外すごとに焦りを積もらせていく中、ギンセツは淡々と撃ち続け攻撃を外していた。


「生体兵器だぞ、ギンセツはなんでそんなに冷静でいられるんだ」

「この間……いや、だいぶ昔にこれよりもっと恐ろしい生体兵器を見てます……あの時は僕も冷静じゃいられなかったですけど。一般兵はみんなあれと戦ってる、守りたい人がいるから何日も前から覚悟を決めて僕はここに来たんです。ジガクも一度落ち着いてまだ遠いからすぐに僕たちに危険はないんだから」

「いい覚悟だ、少年。それじゃあまぁ、そろそろ一発くらい当ててくれよ。かっこいいことを言っているようだが、俺が見てたところ君もまだ一発も当ててないんだぞ」


 手前にいた生体兵器が地面に倒れ砲台の攻撃を受けて動かなくなると、一般兵たちの大型のエクエリの次の目標がギンセツ達が相手にしていた獲物に狙いが変わる。


「ほら早く当てないと君たちの初戦が終わっちまうぞ? 頑張って手柄を立てろ」


 やっとというべきかジガクの撃った弾が生体兵器に命中した、攻撃を受けた場所に穴が開いたが外骨格は分厚く貫ききれなかったようで体液が流れ出ない、生体兵器は何事もないかのように草原を進み続ける。


「当たったけど生体兵器の体を貫けない、効いてない」

「奴らは金属や岩石など鉱物を取り込み、殻や鱗に混じらせることで頑丈さを増してるんだ。エクエリは金属などに反応して威力が落ちる、一発二発当たったからって喜んでるんじゃなくて体を貫くまで撃ち続けろ」


 鉄蛇についている大型のエクエリより大きく強力な砲台は別の敵を狙っており、援護は期待できずギンセツ達は必死に迫ってくる相手に撃ち続けた。

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