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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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砲火 1

 

 D・サーペントを含めて使えない一つの駅を除いた三つの駅に停車していた鉄蛇はすでにホウキシェルターを出た。


 鉄蛇は山を切り崩し作られたシェルターから生体兵器の発見情報のあった戦場へと向かっている、大きく螺旋を描くように山を下ると森に入った、大した説明を受けもせず知らない土地に連れていかれ新兵たちは戸惑いの声を上げる。


「シェルターのある山で戦うんじゃないのかよ、これどこまで行くんだよ」

「そんなの僕にもわからないですよ……鉄蛇の線路がどこまで続いてるのか聞いとけばよかった」


 多少の私語は聞こえるものの車内は静かで鉄蛇の走る音と風の音、それと静かなエクエリの射撃音が永遠と続く。


「ああ、初日で戦闘かよ……まじかよ……」

「まだ、説明書を読んだだけでエクエリの使い方もろくに習ってないのに、こんなはなく戦闘になるなんてついてないですね」


「そうじゃないだろ、戦うんだぞ、生体兵器と!」

「わかってますよ。ジガクがさっきから落ち着きがないのも見ればわかります、でもいつかは生体兵器と戦うんですから、それが今日だっただけで」


「だから俺達には無理だろ。これ撃っても当たらなかったらどうする、生体兵器がこっち狙ってきたらどうするんだ」

「ジガク、とりあえず僕たちもエクエリ撃つ練習しません? 少しでもあてられる可能性を上げましょうよ」


 霧の影響でほとんどは腐ってしまため植物がほとんどなく、煉瓦と人工物に囲まれたシェルターの中と違いシェルターの外は人の手がほとんど入らない自然しかない。


 現在戦場に近づくまで時間があるようで、新兵たちは岩や木などを的に実戦へ向けての自分の大型のエクエリの試射をしていた。


『鉄蛇は最高速度60キロ、普段は巡回速度の20キロ前後で走る。今回は言わなくてもわかる通り最高速度で戦場へと向かっている。しかし戦闘地域まで二時間ほどかかるそれまでに戦う覚悟を決めておいてほしい』

「鉄蛇って意外とゆっくりだな、このまま戦闘が終わるまでつかなきゃいいんだ」

「乗ってる分には外で見るよりゆっくりに見えるんじゃないですか? 60キロってなかなかの早さですし、鉄蛇の重量がどれくらいかわかりませんけど、結構な重量の車両を引っ張るのは先頭車両だけみたいですし、速度が出ないのは仕方ないのかもしれません、逃げるときどうするんだろう」


 しばらくして車内に放送が流れる。


『諸君、入隊初日に災難だったな。まだ家族に挨拶済ませていない物や覚悟がまだ決まっていない物もいるだろう、だが諦めてもらう。すでにこのD・サーペントはシェルターを出た、すでにここは戦場だ。現在、接近中の生体兵器は……』

「怠い……すっごい怠い!!」


 状況について説明している内線を上回る大声で奥の車両から現れた女性が叫んでその場にいた全員の注目を集める。


「シロヒメ隊長、今はお静かに」

「わかる? ここにいる間ずーっとこの電車に乗ってるだけ! 乗ってるだけ!! 降りても湿っぽいシェルターで毎日宿に引きこもってて頭にカビが生えそうなの、腐りそうなの!」


「隊長が戦いたいのはわかってます、私たちだって付き合い長いんですから。だからね、どうか静かに、注目を集めないでください」

「どうせ今回も私たちは地面に足をつけることなく戦いが終わるんでしょ、一発も撃てないんでしょ? 知ってるよ、わかってるんだから!」


 白い制服、白い装備、白い小型のエクエリ、装飾や金具を除けばほぼ白に包まれた一般兵とは違う制服を着た三人組は大声を上げる女性を先頭にさらに前の車両に向かって歩いていく。


「わかりましたから、明後日にはここをたちましょう。今は戦闘警戒中でみんなピリピリしてるんですから静かにしていただけませんか」

「あー戦いたいなー、なんでこんなシェルター来ちゃったんだろ。魔都に近いシェルターだから特定危険種クラスの生体兵器がジャンジャカ出てくると思ったのに、私たちが戦ったのはこの一週間で一匹、一匹だよ! 敵がいないわけじゃない、戦う前に倒されちゃうの! 私たち何のための精鋭なのさ、あー戦いたい……」


 生体兵器との戦闘がもうすぐ始まると落ち着きがなかった一般兵たちは皆あっけにとられ、彼女たちが車両を出ていくときにはピンと張った空気が消えジガクの手の震えも止まっていた。


「なんだあれ、一般兵じゃ……ない?」

「あの騒いでいるのは精鋭の鈴蘭隊だな、もしもの時に備えて精鋭を待機させているんだ。それで一番騒いでいる女性があの隊の隊長だ、戦わずに済むならそれでいいとは思っていないようだまぁ戦わないと勘も動きも鈍るんだろうな」


 いつも間にかギンセツ達のそばに薄く色の入ったメガネをかけ薄く無精ひげの生えた男性が立っていた。


「あ、お久しぶりです……えっと」

「クグルマ・ザンキだ。アカバネ・ギンセツ君……それと、君は」

「えあ? どうも、初めましてヤソバ・ジガクです。こいつと一緒に一般兵になりました」


「ああよろしくな、君はさっきまで余裕がない表情だったが少しは落ち着いたか? 有料だがあっちの自販機で何か飲み物でも買ってくればいい、甘いのも苦いのもそろっているぞ」

「もう大丈夫です落ち着きました、ありがとうございます」


「そうか、この鉄蛇での戦闘は三人一組の戦いになる。理由はいろいろあるが新人の教育と銃座が人数分ないからな。新人二人に先輩一般兵が一人つく、まぁ俺だな。なんかわからないことあったら言ってくれ」

「よろしくお願いします、クグルマさん」

「よろしくおねがいします」


「ああ、こちらこそよろしくな二人とも」

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