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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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外へ

 人ごみを嫌がるメモリは駅から離れた場所、鉄蛇の機関車両が見えるフェンス沿いの線路でコトハと一緒に新兵が鉄蛇に乗り込んでいく様子を見ていた。


「ここからじゃ何やってるか全くわからないんだけど、式って何するのメモリン?」

「いい加減……君は鬱陶しいな、ギンセツの友人じゃなかったら無視して追い払うのに……」


「お母さんと一緒に居たいの、戻ろうか? なんか嫌っぽそうだったけど、メモリンが戻りたいというなら仕方がないなぁ」

「……わかった、もういいここにていいぞ。その代わり、帰りも君に送ってもらうぞ。んで……式のほとんどは、軍の施設内で行われていて今ここに集まってきている庶民に見せるのは、鉄蛇に乗ってシェルターの外に出ていく勇ましい瞬間を見せることかな……初陣での死亡もあるわけだしな」


「へー、そろそろD・サーペントの番かな? でも兄さんが見えない……制服がみんな同じでここからじゃ、誰が誰だか」

「車椅子だと駅の付近は人の邪魔になるし、私はここでおとなしく見ていよう。帰りに迎えに来てくれるなら、あっち行って見てきてくれていいぞ」


「人の多いところが嫌なんでしょ。邪魔になるとか、うまい言い訳だね。メモリンのことはギンからある程度聞いてるからね。その喋り方も自分を強く見せる虚勢って知ってるんだから」

「……五月蠅い。そもそも私は強いんだ。一人でも全然平気だ、というか普段は一人だ」


「こんな誰もいないところに置いて行かれると寂しいじゃん、置いてかないよ」

「私は一人が好きなのに……そこまで言うならこっち来て私の隣に座っていろ」


「素直じゃないね、メモリン」


 コトハがメモリの横に腰かけると、二人並んでフェンス沿いで駅で行われている式の様子を眺めていた。




 大型のエクエリやの持つはあらかじめ積み込み済みで、気持ち程度の荷物を持ってギンセツやジガクは鉄蛇、D・サーペントの前に立っていた。


 二人は朝早くから長時間立ちっぱなしで、シェルターでの偉い人の話を聞きそのあとに一般兵での偉い人の話が続きようやく出発かと思いきや、駅への移動させられまた偉い人の話を聞いている。


 ようやく退屈な長い話が終わると心配達は一人ひとり名前を呼ばれて鉄蛇に乗り込んでいく。


 駅に入りきらないほどの大勢に人に囲まれ鉄蛇に向かってヒーローを夢見て乗り込むもの、下層市民の義務として仕方なく乗り込むもの、思い思いに足を進めている。


 何人かは途中で振り返り手を振る家族に手を振り返す。


 ギンセツは前を歩いていた新兵につられ何となくつられて振り返ったが、メモリがこんな人の多いところにいるわけにもなくすぐに前に向きなおってジガクとともに鉄蛇に乗りこむ。


「人が多くてコトハ見つけれれなかったな、駅に来てるはずだったんだけどな。ギンセツ、見つけられたか?」

「シアさんと一緒ならたぶん遠くの方で見てると思います。知らない人だらけの場所には寄り付かならないんで、たぶんどこかでここを見ているはずですけどね」


 近くにいた一般兵に私語を注意されると二人は姿勢を正し、奥に進む仲間の後に続いて出発までの時間を待つ。


「すごいですね。二階建てで各車両に自販機とかくつろぎスペース、場所によってはご飯食べるところとかシャワー室まであるんですね、ここ」

「ギンセツ、お前よくこの状況で平気でいられるな。俺たちもうすぐシェルターの外に出るんだぜ、生体兵器のいる外に」


 待機中に設備や施設の説明のため車両間を移動する。


「そうですね。でも鉄蛇なら直接生体兵器の前に立って戦わなくすむから、怖さも半減できると思うんですけど」

「それでも、人を簡単に殺すんだぜ、あいつらは。やだよ、ほんとに」


 鉄蛇の車内は縦長の住居の用な広があり二階に続く階段がある、大型のエクエリを固定する銃座が車体左側に並んでいて奥にさらに大きな強力な砲台が付いていた。


「何で左側ばっかに武装が付いてるんだ」

「鉄蛇は時計回りにシェルターの周りをまわるから、左側が敵に常に向くんだってさ」


 今回のD・サーペントの新兵は18名、すべての鉄蛇に均等に配置されるので多いとも少ないとも言えない人数。


「鉄蛇の右に回られたら?」

「銃座から外して大型のエクエリで戦うしかないんじゃないかな」


 ギンセツとジガクの後ろで一人でぶつぶつ言っている、帽子を目深にかぶって俯いている新兵がいるのだがかかわってはいけないと二人は意識して無視した。


「そうか、まぁそうだな。それしかないもんな」

「そもそも、近づく前に倒せるんじゃないですか?」


 一通り設備の説明が終わり発車まで待機の命令がかかってすぐ、急に各所の赤色ランプが光り甲高いベルが鳴り響いた。


『緊急連絡、緊急連絡。現在魔都より群れを形成する特定危険種クラスの生体兵器が接近中、駅に停車中の鉄蛇の発車。行われている式を速やかに中断し、直ちに戦闘準備を整え、各車両交戦に備えよ』


「んなッ!」

「なんですかこれ、訓練?」


 しかし戦闘を歩いていた案内役の一般兵は放送に耳を傾けていて返答はない。


「どうやら訓練じゃなさそうだな……見ろよ、あっちの一般兵、大型のエクエリを持てるだけ持ってこっち来たぞ」

「じゃあ、本当に生体兵器が……」


 持って来た大型のエクエリを床に置くと各自それを拾うように命令され、置かれたエクエリの中にメモリが整備したギンセツのエクエリもあり急いでそれを取る。


 デカールや模様、色のバリエーションが自由なため個性的なものが多かったが、メモリが悩み描いたあの模様は目立つためギンセツのエクエリは探す手間が省けた。


 各自大型のエクエリを拾い上げ各自にバッテリーが配られると、そのタイミングでふらつきはしないが足元が軽く揺れる。


「今の、もしかして動き出したのか!?」

「そうみたい、窓の外の景色が動いてる」


「動き出したって戦場に向かってか? 嘘だろ、初日だぞ、まだ入隊して一時間ちょっとしかたってないだろ!」

「それ、僕に言われても困る」


 エクエリのバッテリーをうまく入れることのできないジガクを手伝いながら、ギンセツは落ち着かせようと話しかける。


「疑うなら外みてみなよジガク、すぐにシェルターの外に出る」


 二人そろって覗き窓から外を覗くと一瞬ではっきりとはわからなかったが駅から離れた線路沿いの金網に車椅子に乗った黒髪の少女と、金色の髪でなくどことなく毛先がつんつんしている短い髪の少女の二人がいた気がした。


「今……コトハがいたよな」

「シアさん……」


 鉄蛇は戦場に向かって走り出した。

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