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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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前線基地、9

 昼食を終えるとツバメとイグサは兵舎の前でグダグダと意味のない話をしながらコリュウの帰りを待っていた。

 彼は宿舎でツバメに命令された補給物資を取りに向かっている。


「コリュウ帰ってこないね、いったいどこまで行った」

「帰ってこないね、迷子かな?」


「そこまで大きく無い基地だしそれはないんじゃないかな」

「じゃあどっかで寝てる?」


「いやいや」


 補給物資を取りに行っているコリュウを、ただ部屋で待っているのも偉そうだったので気持ち程度、借りている兵舎の外で待っていた。


「探しに行くか」

「そうだね、行こう」


 しばらく待っていたが彼はなかなか帰ってこないので倉庫に向かって歩き彼を迎えに行こうとしたが、具体的に倉庫の場所を知らないのでツバメは窓から彼が走っていった方向へ歩き出す。


「あ、使用済みのエクエリのバッテリ-も整備のところまで届けてもらえばよかった」

「コリュウ、もう一往復決定ー」


 ツバメたちの進行方向から大きな荷物を持ってこちらへ向かってくる人影が見えた。

 イグサは手を振って彼を迎えに行く。


「コリュウ、遅かったな」


 台車に積まれた段ボールは3つ、一つ一つの箱が大きいものだった。


「台車借りるのに苦労してました」


 そういって合流してきたコリュウと一緒に彼女たちは元来た道を戻りだす。


「なるほど、んじゃ戻るか」

「よいしょっと」


 イグサはダンボールの乗っている台車の正面に回り余ったスペースに乗っかる。


「イグサ、あぶない。台車ひっくり返るから乗るな」

「箱が重いからへーきだよ、さぁ押して」


 歩くのが面倒なのでコリュウの押す台車に乗り押してもらった。

 台車の物が悪いのかガタガタと揺れる振動で足がしびれるがイグサは特に気にした様子もなく、台車を押してもらっている間にダンボールを一つ開けていた。


 先頭に必要そうな物資がきれいに整頓され入っていた。

 ダンボール箱はやはり一人一箱のようで彼女はその中から一つ、チューブに入った携帯食料を取り出す。


 パッケージに味のことではなく、正しい食べ方が書かれているその携帯食料は見るからにマズそうでイグサは手に取ってすぐそれをもとの場所に戻した。


「んじゃ、部屋に戻ろうぜ、カバンにこの荷物をさっさと入れて準備済ましちまおう」

「そうですね」


 二人の会話に耳を傾けながらイグサは手にした携帯食料をダンボールに戻しほかに何が入っているかをあさる。


「ツバメ、携帯食料って必要ですか? 今回というか明日の作戦には必要ない気もしますが?」

「明日は合同作戦だからな、たぶん向こうで食べないでしょ。荷物減らして少しでも軽くしていこう」


 おもむろに手を突っ込んでいると重たいものを掴んだ。


「これなんです?」


 エクエリのバッテリーよりずっと重くイグサはその物体とダンボール箱から取り出した。


「ん、んん? 爆薬、何でこんなもん私たちに?」


 イグサの持っているものに驚くツバメ、そして彼女に正体を聞かされてから驚く二人。


「爆薬!」

「うわっ、びっくりしたコリュウ大きな声出さないで」


 コリュウが声を上げて驚いた拍子にイグサがびくっと体を揺らす。

 驚きはしたもののイグサが手にしている爆薬は単体では爆発しないため、それほど焦りはしなかったが一応は危険物なのでツバメはそれを箱の中に戻すように言う。


「それ単体なら問題ないけどあんまり触ない方がいい、戻しといて」

「はーい」


 と言いながらもイグサはその塊を手放さない、珍しいもの見たことないものは気になるもの。


「というか、コリュウこれうちの隊の荷物か?」


 台車に積まれているダンボールの横を見て別の隊の荷物を持ってきていないか箱に書かれた名前を探す。

 仮に別の隊のものを持ってきた場合謝りに行かないといけないなと面倒くさいなと思いながら。


「箱にはちゃんと朝顔隊って書いてありますけど?」


 疑いの目で見ていた段ボールの一部分を指さしてコリュウは答える。

 そこにはちゃんと朝顔隊と書かれていた。


「確かに……じゃあ向こうのミスか、儲けもんだし貰っておいて損はないかな」


 箱に書かれている朝顔隊の名前があっていることを確認すると気にするのをやめまた普通に歩き出す。


「初めて見ました」


 いまだにイグサは興味深そうにそれを眺めていた。

 形状は大雑把に言えば黒いレンガのような金属の塊。

 見た目通りズッシリとしたその塊にはパネルがついている。

 記号と数字の描かれた文字盤、十二個のボタンと電子パネルは使用する際使うようだ。


「イグサ、あんまし触るな。スイッチが入ったら大変だろ」


 あれこれいじくるイグサを止めようとするコリュウ、だが彼女はその手を躱し爆薬をいろんな角度から眺めている。


「ああそれは大丈夫、それ単体では爆発しないよ。携帯に専用のアプリをダウンロードして使うんだ」

「へー、こんなの始めてみました」


 精鋭に渡される携帯端末には様々な機能が追加でつけることができ、電波の通じる範囲で爆薬に信号を送り起爆させるなんてこともできた。

 この時代に無線妨害など意味が無い、人の敵は人ではなく生体兵器なのだから。


「んじゃ後でダウンロードしとこうかな。だからって二人はしないでいいよ、私も使えるかわからないし。初心者がいざ実戦で使うと危険で難しいものだから」


 とはいえ爆薬の運用は危険を伴う、みんなで扱うとなると誤爆しかねないそういうわけでツバメだけが使うことを決めた。


「じゃあ、俺たちの分は後で返却しますか?」


 イグサの持っている爆薬を見ながらコリュウはツバメに尋ねると、彼女は少し考えた後に答えた。


「いや全部私がもらっておくよ、そうそう貰えるものじゃないからね」


 ツバメの意外な貧乏性をスルーしてほかの荷物をあさるイグサ。


 物珍しいのはイアホンとマイクが一体化したヘットセット。

 見たことはないが同系統のヘットセットはよく壊れることで有名で、この型はどうなんだろうと軽く振ってみたり曲げてみたりした。


 そのヘットセットをつなぐ無線機。

 携帯端末と同じ大きさだが、こちらは200メートル以内ならシェルターや基地の外でも使用できる。

 これは電池切れしやすい。


 それ以外は、医療キット、双眼鏡、迷彩化粧用の絵具、生体兵器の嗅覚による追跡を防ぐ消臭剤、自主メンテ用の小さな道具、後はエクエリのバッテリーくらいで大したものはなかった。

 使わないほとんどは準備の段階でここに置いていくことになる。


 基地だけあってこの辺の物の用意が良い、しかし爆薬以外にイグサの心くすぐる物は見つからなった。



 三人は宿舎に戻って来た。


 階段で台車が進めなくなると、ツバメはコリュウにお願いし階段の上までもってかせる。

 部屋に帰ってぼろぼろのカバンを開くと中身をすべて出す。


 昨日、綺麗に掃除したばかりだが新しいものと入れ替えるため、使わないほとんどはここで取り換えていく。

 イグサもツバメの同じように鞄の中身を選別し捨てている。


「携帯食料は今回は使わないから放置していくよー」

「うん、そうして」


 淡々と物を詰め替えていきながら会話するツバメ。

 ここについたときに中身を掃除したのに、まだ使わないものが出てくるが気にせず作業を続ける。


「爆薬は本当に隊長が持つんですか?」

「そうだよ、全部ちょうだい」


 ツバメがそういったのでイグサとコリュウは自分の段ボールに入っていた爆薬を彼女に渡す。

 彼女の前に金属のレンガが積みあがっていく。

 一人5個ずつ入っているようで隊員二人からすべてが回収し合計15個。


「重い! うわっ、私これ持って走れるかな?」


 ツバメはもらったすべての爆薬を鞄に詰め込むとそれを持ち上げてみる。


「これだけあればそうでしょうね」

「だからさっき重いって言ったじゃん」


 わかり切っていた事なのでコリュウもイグサも反応は薄い。

 カバンを腰につけてツバメは部屋をうろうろと歩いてみる。

 よほど重いならいくつかはここに置いていくのだろうけど、彼女はもてない重さじゃないと言ってそのまま席に戻った。


「水筒っていく?」


 鞄に入れようか迷うイグサ。

 それなりの重さがあるので、あるのとないのとでは多少重さが変わる。


「まぁ、戦闘は数に任せてすぐ終わって祝杯上げるだろうけど、何が起きるかわからないし、それは持って行っていいんじゃないか?」


 イグサの質問にツバメは適当に答えた。


「おかしは?」


 今手元にはないがノリでイグサはツバメに尋ねる。


「んー、夕食が食べられるならもってけ」

「携帯食料は置いていくのに」


 他の隊や一般兵との団体で戦うため、生体兵器が向かってきた場合の最低限躱せるだけの機動力があれば問題ないとツバメは考え返事を返す。


「イグサは何しに行くんだ?」


 その答えに若干の喜びを見せるイグサ、それを見てコリュウが目を細める。


「生体兵器との命がけの戦闘ですけど」

「……わかってるならそれでいいや」


 イグサに真顔で返されコリュウは何も言えなかった。

 そんなコリュウにイグサは彼が言おうとしていてことを逆に言う。


「コリュウこそ何しに行くつもりだったの、ピクニック気分で仕事しないでよね」

「お前よりは事の重大さを知っているつもりなんだけど、相手は特定危険種だぞ」


 荷物を詰め終えて整頓をし終えたイグサは、鞄を閉じてそれを持ち上げたりして重さを確認する。


「ならよろしい」

「何で上から?」


 操作をして放置されていたツバメの通信端末がちかちかと光った。


「お、爆薬の遠隔操作アプリのダウンロードかんりょー」

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