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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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霧と破壊 3

 ギンセツが飛び出しプロトが彼を追って動き出す、カウンターの向こうで行われている戦闘。

 彼が一方的に攻撃されそれをよけているだけなのだが。


 プロトは頭はカメラやその他の機械などが故障してはいけないのだろう、前足で攻撃していた、その鈍重な攻撃をかいくぐり横を通り抜けようとすると細長い尻尾がギンセツの行く手を遮る。

 プロトがギンセツを狙っているのを確認してからメモリが動く。


 ーーギンセツを頑張らせているのに私一人で逃げれるはずもないだろう。君と一緒じゃないと私一人では何もできないんだから。……待って居ろ。


 カウンターの奥、大人の背丈以上の高さがある荷物の積まれた棚が永遠と続いている。

 メモリは箱型の物に狙いを絞り、それ以外の荷物には見向きもせず目的のものを探す。


 ーーしばらく耐えてくれ、すぐに何とかするからな。


 プロトがいるため逃げる為に荷物を散らかしたと言えば怒られるのも最小限で済むと判断し容赦なく棚に積まれた荷物を落とす。

 ガラス、金属、陶芸、何度かそれらが割れる音を聞いたが気にはしない。


 ーー預かり物は……私のが来たくらいだ、他にも……


 棚に積まれていたものを崩し叩き落しているとメモリの探し物はすぐに見つかった。

 両手に抱えられるくらいの髪の包みに包装されたトランクケース、表に札が貼られ中身は見なくてもわかった。


 ーーあるじゃないか、探してすぐに見つかるとは都合がいい。本当に私はついているな。


 探している間に息切れも治り、足の震えも収まってきたため、包みを剥がしごみを捨てながら

 急ぎ足でカウンターへと戻る。

 そして彼女の予定した通り、ギンセツが守衛室にたどり着けるように自らが囮となる。


「過去の粗悪品を作る変人よ、これがなんだかわかるか! ふふん、人類が生体兵器を倒すために作った最新兵器、エクセプション・エリミネーターだ!」


 カウンターの奥から出て勝ち誇った笑みを浮かべ小型のエクエリを構えるメモリ。


「シアさん、なんで逃げなかったんですか!」

「私が君を置いていくような薄情物に見えるか」


 整備士であり扱いは最低限知ってはいたが、形が統一ではなく種類の多い小型のエクエリの操作にてこずりながらも電源を入れるとエクエリは起動した。


「むぅ、中古品だけあってエネルギー残量に余裕がないか」

「シアさん、生体兵器ですよ! 一般兵が何人がかりで一匹仕留めるか知ってるんですか!」


「知っているよ、通常の生体兵器なら十人一チームで戦うんだろう。でも今の相手は死体だ、生きている生体兵器ではなく人が動かす人形だ。見た時は驚きこそしたもののもう怖くはない、私を走らせびっくりさせたのだからきっちり仕返しをさせてもらおう」


 そういうと引き金を引く、光の弾が発射されプロトの方に穴をあけた。


「よしよしやはり死体の部分には効くな、このまま穴だらけにしてやろう」


 メモリのうっかりがここで出た、荷物預かり所から当たらなくとも狙って撃てば見つからない物の、わざわざホームの方へ守衛室から見えるところに出てきてしまった。


 当然、逃げ惑う女装少年よりプロトに傷をつけることのできるエクエリを危険視しメモリの方へと迫る。

 不用意に近づいただけあって的は大きく撃った弾は全て当たればすれど、当然痛みを感じない死体に効果は薄い。


「わっわっちょっと待って、こっちこないでそっちを向いていたまえ!」


 急いでメモリは荷物預かり所のカウンターの方まで走りだすが、自分の足に引っかかり転ぶ。

 メモリを追いかけたことで守衛室に続く道に邪魔者がいなくなりギンセツはそこへ向かうこともできたが、彼女がその前にやられてしまうと助けに走り出す。


「すぐ起き上がって振り返らず走ってください!」


 ギンセツは叫ぶが、転んでいるうちに接近したプロトにパニックを起こし金属の装甲のある頭に向かってエクエリを撃っている。

 メモリの元へ駆けつけようとするが長い尻尾が音を立てて振り回されており尻尾の範囲から離れるため大回りをしなければならなかった。


 プロトはメモリ前で起き上がる。

 二本の後ろ脚と尻尾でバランスを取り立ち上がった。

 正確には腰を落とし前足で上半身を上げただけ、体勢は犬のお座りと同じだが大きさが違う。


 首の可動範囲の問題でプロトはほぼ真上を向きメモリを見ることはできないだろうが、そのまま見下ろした状態でプロトの動きはとまった。


 おそらくだがメモリを怖がらせて操縦者は楽しんでいる。

 自分は有能だと、自分は弱い人間ではないと、自分は強大な力を持っていると、浸って。

 子供相手に大人げなく。


 精神が強いのか意識が回らないのか悲鳴を挙げずに必死になってエクエリの引き金を引き続けるメモリ。


 ギンセツがもう少しで合流できると気になってゆっくりと歩きメモリを見下ろすと、プロトは前足の片方を自分の頭の高さまで上げる。

 小さく声を上げ後ろに下がりながらエクエリを撃つ。


 エネルギーはとっくに底をついているのに。

 ギンセツが残り数歩というところで高く上げたプロトの腕が振り下ろされた。


「避けて!」


 ギンセツの叫びに反応し逃げようとしたが、プロトの大きな前足でメモリは木の葉のように吹き飛ばされる。


 放物線を描いて彼女の体は空中で半回転ほどし鉄のプレートで出来た駅の案内図のある壁に打ち付けられた。

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