友人 2
ギンセツの日ごろの愚痴を聞いてもらいながら地下商店街を歩いていると、彼の探していた金色の髪の女の子が店に並ぶエクエリの部品を眺めていた。
ジガクと同じトゲトゲした暗い金色の髪の少女、そばまで行っても彼女は二人に気が付くことはなく手にした部品を見ていた。
「見つけたぞコトハ。全く目を離したらいなくなるんだから」
名前を呼ばれ変な悲鳴を上げ驚いたように振り返る金髪の少女。
金色の髪だけでなくどことなく毛先がつんつんしていて雰囲気がジガクと似ておりギンセツが不思議に思うと、彼女の次のセリフでそれは改善された。
「兄さんじゃん。どうしたのさ、こんなところまで来て?」
「どうしたのってお前がさ勝手にいなくなるから探しに来たのさ」
ジガクが拳で彼女の額をこつんと殴ると彼女は舌を出して謝った。
「ああそれでか。それで、兄さんその人は?」
コトハはジガクの後ろに居たギンセツに気が付き、指をさす。
「ついさっき上でいろいろあってさ。お前を探すのをさ手伝ってもらってた」
「初めまして。アカバネ・ギンセツっていいます」
「うぁぁ。それは御免、買い物行くって言ってたからそれが終わるまでここで時間潰そうと思ってたんだけど夢中になりすぎた」
髪を直し服装に気を付けると少女はジガクの後ろに居たギンセツに向き直る。
「ヤソバ・コトハです、整備士やってます」
「僕はこんな服装ですけど下層市民です、気を使ってしゃべってもらわなくて大丈夫ですよ」
「そう? よろしくね」
「こちらこそ」
ギンセツが軽く会釈しコトハも会釈を返す。
「じゃあ探し人も見つかったようだし僕は帰りますね。それじゃあジガク」
「もう行くのか? もう少しどっかふらふらしようぜ、せっかくであったんだからさ」
「まぁ、夕飯つくる時間までに帰れれば大丈夫かな。そうだついでに頼まれている買い物済ませちゃっていいですか?」
「いいけど。ギン、こんな地下で何か買うの? 見してみ、私ここ詳しいから」
「ぎん!?」
ついさっき会ったばかりなのに親し気に名前を呼ばれ戸惑っている間にコトハにメモを取られ、彼女は興味深げに内容を読む。
「これ皆この店で買える。っていうかこれエクエリのパーツじゃん、あなたも整備士?」
「僕は違います。僕の主が趣味の領域ですが整備士の資格を持ってるんで」
「はー、やっぱり高層の人は違うなー。私結構勉強してようやくとれたのに、なのに趣味で資格がとれちゃうんだ」
「あの人は異常なんです。すっごく頭いいんですけどすっごく体力ないです」
「ふーん、でもその人と一回あってみたいな。わたしみたいな人と会ってくれるなら」
「人見知りするので難しいかもしれません、一応言っては見ますが」
ギンセツが苦笑して話している間、コトハは店の中を物色する。
「ギン。これ、兄さんにつき合わせたお詫び。メモに書いてあったやつ集めておいた。高い部品もあるけど、やっぱお金あるんだね羨ましい」
「あ、ありがとうございますコトハさん。レジ行ってすぐ買ってきちゃいます」
ギンセツが買い物を済ませかえってくとジガクとコトハが店の外で待っていた。
三人とも荷物を抱え広場へとつながる階段を上がりながらお喋りを続ける。
「夕飯の買い物もさあるんだろ、上に戻ろうぜ」
「これで貸し借りは無し、私も呼び捨てでいいからコトハって呼んでいいよ、ギン」
「すでに僕の名は短くなってるんですが」
「気にしない気にしない。それよりギン、あんたのご主人様ってどんな人?」
「一言でいうと人見知りで難しい人です。わがままで素直で悪戯好きでうっかり屋で、意地っ張りで寂しがり屋で一人が好きで優しい人です」
「どこが一言なのさ?」
「悪い人ではないんだ、なら仲良くなれたら話し合いそう。ギン今度連れてきてよ」
「一応話はしてみますけど、人見知りと外に出るのを極力嫌がる人ですからね」
その後、二人と別れギンセツは夕飯の買い出しをして家に帰る。