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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
4章 存在価値の低い者への徴兵 ‐‐霧の結界と駆ける要塞‐‐
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霧のシェルター 6

 汚くはあるが大型のエクエリ本来精鋭が持ち、様々な弾種で援護をしたり、小型のエクエリで対処できないような相手にとどめを刺す中衛、後衛用の武器。

 このシェルターではそれを一般兵が持つことを許されている。

 メモリはそれを見て宝物でも見たかのようにうっとりと見とれていた。


「これって大型のエクエリじゃないですか」

「そうだぞ、大型だ、いいだろ立派だろうすごいだろう」


 人の目を避けるように周囲を警戒しながらそれを持ち上げる。

 メモリは一人で持ち上げようとしたが重さによろけたためギンセツが支えるのを手伝う。


「なんでまたこんなものを頼んだですか?」

「ふふん、仕組みはほとんど同じで、大型には追加でいろいろ装置が付いているから大きく重くなっているんだ。弾種ごと、火力の強弱をつける装置とかな。とはいっても、弾種変更の一部なら小型にも使えるんだがそれだと細かい部分の補助装置が付けられない分、出力が足りなかったりエネルギーを無駄に食ってしまう、結局のところ通常弾が一番使い勝手がいいんだ」


 弾種切り替えのスイッチや各部のパーツをさすりギンセツに説明するようにメモリは話を続ける。


「シヤさん?」

「大型と小型の違いは大きさ、重さ、扱いやすさ、火力、狭いところでの戦闘しやすさ、などといったところだろうか。一昔前のいくつかの精鋭は小型を改良していろんなエクエリを持っていたが、私の生まれるずっと昔、エクエリを一挙に生産していたシェルターが破壊され精鋭にエクエリを複数持たせるのが難しくなってから、そういった細工をしなくなったと聞いている。最後まで使っていたのは旧赤薔薇隊だったかな」


 エクエリを製造していたシェルターが破壊されて以降、自分たちを守る武器は自分たちのシェルターで作ろうとなり、現在の構造は同じだが威力や見た目などが多くのバリエーションをもつエクエリができている。


「あのシヤさん興奮して声大きいです、もう少し声抑えて」

「共通点は大型も小型も同じバッテリーを共有できる点と、火薬などを使わない分、発射時の音や衝撃がほとんどないことだな。だから使用者の能力や生体兵器によっては先手を取れる」


「もういいや、やっぱり小型の方が強いんですか?」

「ん、使い勝手がいいってことだな、小型は扱いやすい。だが、一撃で仕留める決定打に欠ける。だから一般兵は弱い力を集めて数で戦うんだ。まぁ数撃たないと当たらないらしいがな」


「でもこれって大型ですよね」

「そうだな、このシェルターは別だ、一般兵は前に出ながらみんな大型のエクエリを持っている。理由は言わなくてもわかるだろう」


「鉄蛇があるからですか」

「そうだ、大型は重量があって接近戦を求められるとかなり不利となるが、その一撃は非常に強力だ。撤退時その重さは邪魔になるがこのシェルターの特殊性が一般兵の撤退をうんと楽にしているため、一般兵全員が大型のエクエリを持って戦うことができる」


「それでこれをどうするんですか?」

「家に持って帰るのだよ、今はボロボロだがすぐにきれいにして見せるさ。さあ、これをしまって早く家までもっていこうじゃないかギンセツ」


「出したのシヤさんなのに、しまうの僕なんですか」

「早くしたまえ、人が来てしまうじゃないか。見られると私のことが噂になってしまう、あくまで私は他人よりちょっぴり本が大好きな普通な女の子なんだからな」


「普通……」

「いま何か言ったかな?」


 大型のエクエリから手を放しギンセツに待たせるとメモリはそのまま家に向かって歩き出した。




 自宅に戻ると大型のエクエリをメモリの寝室に運ばせる。


「ここでいいんですか? 作業場か書斎じゃなくて?」

「いいんだここで」


 大型のエクエリの重量はメモリには重すぎたようで、彼女一人で持ち上げることはできないためエクエリを一度置いてしまえば引きずらない限り移動させられない。


「しばらく私は二階に籠る。君はその間食事を作って寝ていてくれ。買い出しに行ってもらうこともあるかもしれないが、紙に書いてテーブルに置いておく、買ってきておいてくれ。それ以外は自由時間だ」

「いいですけど、何でですか? また分厚い本の一気読みとかですか?」


「君ふざけるのもいい加減にしたまえ、これを運んでおいてそれはないだろう」

「シヤさんいつもこういうの見るだけ見てほったらかしにするじゃないですか」


「バカ者、ちゃんと整備士としての仕事くらいするわ! 気が向いたときにちょっとだけな!」

「ちょっとしかやらないじゃないですか、それでこれはどこが壊れてどのくらいで治りそうなのですか?」


「内緒だ。私の仕事中、君は自由時間になるわけだが私以外の女の子にうつつをぬかすなよ。私が仕事を終えた時いちゃいちゃしてたらこの完成品君に向かってぶっ放すぞ」


「そんなこそしませんよ。それに完全に危ない人ですいぇシヤさん」

「ともかく、二階には来るな! いいね、絶対だぞ」


 特に詳しい説明もないままギンセツは渋々了承した。


 その日からメモリは一日中に階に籠りっきりになり、彼女を見るのは時折トイレや風呂に降りてくるときにギンセツに顔を見せるだけ。


 似たようなことは前にもあり以前は本棚の半分が一気に埋まるほどの大量の本の山を数日で読破するという目標の元メモリは二階に籠った。


 家の二階は寝室、作業場、書斎、書斎兼物置の四部屋で完全なメモリの生活空間となっていて、彼女はトイレや食事でしか二階から降りてこない。

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