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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
3章 幽霊たちの日常 ‐‐捨てられた場所で揺らめく光り‐‐
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悪夢を抜けて 1

 借りっぱなしだったナイフを取り出しそれを構えて生体兵器に突撃する。


 ――ただの生体兵器だけあって、目の前のものしか見えていないようだな。


 キンウに夢中でナイフはその巨体に真っすぐと勢いよくぶつかったが、生体兵器の丈夫な皮に刃は刺さることなくセーギは逆に鋭い毛で手を怪我した。


 ――生体兵器だけあってこんなもんじゃダメか。


 ダメージを与えることはできなかったが、気を反らし生体兵器がセーギの方を向いた間にキンウが逃げ出すことはできた。


 向き直ったがすぐにセーギに飛びかかってくるそぶりはなく、様子を見るように生体兵器はその場に固まる。


「腕、大丈夫か? 食われたように見えたけど」

「エクエリが、噛み砕けなかったから、そこに隙間ができて、私の腕は大丈夫。そこで一発ぶっ放してきた」


 キンウは強がっているが手足の震えが尋常ではなくズボンの染みには彼女自身も気づいた様子はなくそのまま触れないことにした。


「そうか。で、エクエリは?」

「まだ、あいつの口の中。このまま吐き出さないでずっと口に入れておくきかも」


 生体兵器は口から血を流し二人を睨む。

 すでにセーギが最初に当てたエクエリの傷口から流れる血はかさぶたとなって固まりっていた。


「どうすんだこれ、とりあえずお前は逃げてろ。エクエリあれば話が別だが、ナイフじゃ、あいつの皮を切れないんだぞ」

「そうだった……ならせーぎ、これ使って!」


 そういって取り出したのは黒いナイフ、それが全部で3本。


「私のは取られちゃったから、ヒナたちの借りてきた。一本でいいって言ったんだけど、自分のを使ってくれってみんなが」

「だからナイフは……」


「斬れる、このナイフは特別だから。だから、頑張って」

「もうここには戻ってくんなよ!」


 そこまで言うならとナイフを受け取るとキンウはセーギを一度抱きしめ、また全力で走り去っていった。


 ――ちょっとかわいいとか思ってる場合じゃねえな。で、どうすんだよ。もう一回今度はナイフ二本持って手がボロボロになるような突撃しろってか、非戦闘員を逃がすまで戦えって教えが鬱陶しく心のどこかに残って無かったら俺こんなことぜってえしねえのに。


 一本をポケットにしまい両手に一本ずつナイフを構え生体兵器を向かいあう。


 生体兵器は口の中のエクエリを吐き出さまいとしながら牙をむき出しにして、すり足で少しづつ距離を詰めているセーギに威嚇をする。


「キンウが撃ったのが効いてるみたいだな、それでも死なないってほんと化け物だよなお前ら」


 口から涎と混ざった血を流し続けセーギを見て口に中にあるエクエリを見せつけるように吠える。

 そして口を閉じると生体兵器は地面を蹴り飛びかかって来た。


 ――生体兵器は大きくなった分細かい行動や機動性が苦手になる、うまく横に張り付けば。


 前足で踏みつぶそうとする攻撃を躱したが、そのまま突っ込んできてその頭突きに持ち上げられるように飛ばされる。


「ダメか」


 キンウの一撃が致命傷となって虫の息だと思ってとどめだけさすつもりだったのだが、予想外の攻撃に対処できずセーギは吹き飛ばされた。


「くそっ……何度目だ人を気軽にぶっ飛ばしやがって……これ、次食らったら立てねえな……」


 黒いナイフは二本とも手元から離れてしまい、最後のナイフを取り出す。


 また自分がどこかの建物の二階にいるのを確認し建物の壁を自分が壊したんだなぁ、俺って丈夫だなぁと考えふらつきながら壁によりかかりながら起き上がる。


 飛び込んだ室内は木造で他同様売れそうな家具は持ち出されここには持ち運べなかったであろう、鍵のついた引き出しを無理に破壊した大きなタンスくらいしか残っていなかった。


 武器になりそうなものはなく、ナイフ以外にポケットに何か入っていないか探ったがどのポケットにも何一つ入っていなかった。


 ――なんもねぇか、やっぱこれで何とかしないと生き残れないわけか……ん……決済カードもねぇ……あれかさっき抱き着いてきたときか……ほんと油断も隙もねえ奴だ。あんなんなってまで金がほしいか。


 セーギを追いかけ生体兵器が同じ建物内に入る、口から流れる血は止まっており体力の消耗を感じさせない巨体はゆっくりとセーギにとどめを刺すため歩み寄る。


「部屋の真ん中歩かない方がいいと思うぜ」


 生体兵器に言葉は通じない。

 ただ何となく独り言のように呟いたのだがそれが相手に聞こえたかどうかはわからない。


 床を踏み抜いて下の階に部屋の半分とともに落ちていく最中で、そのあとに大きなタンスが下の階に落ちていったためだ。

 埃と土煙が舞い上がりむせながらもセーギは下の階に降りた。


「下に参ります、か……確かに自分が落ちなきゃ、見ている分には面白い光景だな。見ている分には、だけど」


 生体兵器が瓦礫から抜け出す前に残った力を振り絞って走り出す。

 タンスを持ち上げ生体兵器が起き上がるとその頭めがけナイフを突き立てる、棘のような毛の生えていない皮のない眼球めがけて。


 刀身すべてが目玉に吸い込まれるように刺さるが生体兵器は死なない。


 首を振るがナイフは抜けず首の振りが弱くなると再びナイフの柄を握って噴き出す。

生体兵器の熱い血液で指先の感覚が痺れるような感覚とともに戻っていくと中ナイフにさらに力を入れより深くへ押し込む。


 痛みから生体兵器が悲鳴じみた鳴き声を上げた、ナイフから手を放し声を上げる口の中へ腕を伸ばす。

 そして唾液にまみれたエクエリの引き金を引いた。


 首の肉がはじけ飛び生体兵器の抵抗が一気に弱まる、タンスを持ち上げる力を失いその巨体は横倒しになる。


「死ね、化け物」


 口からエクエリを取り出し数歩下がると弱った生体兵器に向かって引き金を引いてとどめを刺した。


 そこでセーギの意識は途切れ地面に倒れた。

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