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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
1章 滅んだ国と生体兵器 ‐‐すべてを壊した怪物‐‐
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前線基地、7

 一人ツバメは会議が終わり、借りている部屋に戻ってぼーっとしていた。

 何もせず、ただだらけながら部屋でココアを飲んでいると、イグサとコリュウ、二人が帰って来た。


「ただいま帰りました」


 扉を開けコリュウがイグサとともに朝顔隊の借りている部屋に帰って来る。


「会議終わってたんだね、ツバメ。連絡くれればよかったのに」


 イグサは一度ツバメの姿を確認すると洗面所へと向かった。

 仲良くしているようで、食後二人きりにしたのは正解だったようだと、ツバメはココアをすすりながら仲睦まじい姿を観察していている。


「おかえり。どこかに時間をつぶせるところあった?」


 聞かなくても答えはわかっていたがあえてツバメは二人に尋ねた。


「いや、なーんにも、無かったです」


 イグサはツバメの予想していたとおりの答えに返す。


「しばらく二人で、話しながらふらふらして帰って来ただけです。丘の上から見ましたが、イグサの言う通り、見てみるべき建物は何にもなかったですね」


 少し眠そうにして答えるコリュウとは別にイグサはすごく元気だった。


「今、私が言ったんだからいいじゃん。何で復唱したのさ」


 そういって彼女はコリュウの背中を小突く。


「ん、イグサ頬に何かついているぞ。転んだか?」

「ああ、日が温かかったから休めるところで少しだけ横になってました、跡ついちゃったかな?」


 自分の頬を撫で跡がある位置を探す。


「そういえば今日は天気がいいな、昨日が悪かっただけかもしれないけど。さぁて、私も少し横になるかな、会議は座りっぱなしだったけど変に疲れた」


 ツバメの話を聞いているのか聞いていないのかイグサが近寄ってくる。


「ところで何飲んでるんですか?」

「ココアだよ。なんかいっぱい積んであったからもらってきた。寒くても凍結しない粉物」


 ツバメは封に入った粉状の物をイグサたちに見えるように置く。

 彼女が会議に呼ばれ集合場所である部屋に向かうとなんか知らないが、会議室の前にダンボールいっぱい粉末ココアが入っていたから誰の了承も得ず一つ貰って来た。


「私ものむー」

「お湯はあるけど砂糖は食堂から貰ってこないとないぞ」


 イグサは置いてあった紙コップを取るが、すぐに何もなかったかのように元あった場所に戻した。


「……じゃあ、後で飲むー。あ、そうそう、近日中に、ここから出ていく予定はありますか?」


 ツバメは彼女を見る。


「ん、作戦開始までしばらくここにいる。せっかくの休日だぞ? ゆっくり体を休めておけ」

「ここ何にもなくて暇なんですもん。大きなシェルターだったら飽きるまでいてもいいけど、ここはもう飽きました。なんてったって、お店がなーい」


 イグサは机に突っ伏しそのまま叫んだ。


「ここでの仕事が終わればすぐにでも移動するよ、シェルターに行けるかどうかは上と話してみるけど」

「本当‼ じゃあ、よろしくお願いします」


 スッと頭を上げ喜ぶイグサ。


「それで、このあとどうします? 戦闘の準備しますか」


 コリュウが荷物に目をやりながら質問する。


「まだいいよ、どこかにしまってあるだろう物資を、貰いに行かなきゃいけないから怠い。後でコリュウに取りに行かせる。つーわけで、コリュウ、任せた」

「え、俺ですか?」


 突然の振りに驚くコリュウ。


「あったりまえじゃない。力仕事をか弱い女性にやらせる気か?」

「あぁ……わかりました」


 か弱いって部分に引っかかっていたがコリュウはしぶしぶ頷いた。


 戦闘用に渡される物資、主にエクエリのバッテリーや消耗品のたぐいだが結構な量がある。

 人によってや隊によって戦場に持っていく物が違うため、精鋭が必要なものは自分たちで必要な分だけ取りに来いということになっていた。

 コリュウが嫌がってもツバメには隊長命令という奥の手がある。


 ココアをすすりツバメは机に置かれた3人のカバンを見た。

 制服は新しいの支給されたがカバンはずっとこのままで使い古されその生地はとても汚い。


 一回しっかりと気合を入れてに洗えばそこそこ綺麗になるだろう鞄は、濡れた地面に置いたりしていたので下の方はシミや泥で真っ黒になっていてすごく汚い。


 このかばんは今の朝顔隊ができてから半年近くずっと使っているため、ベルトとのつなぎ目とか縫い目がほつれて来ていたがまだどこにも穴は開いておらずかなりの耐久性がある。


「鞄もそろそろ変え時かな。使ってると愛着わくから困る」

「ほんとね、私もベルトのところほつれてきちゃって、そのうち千切れちゃうかも」


 イグサが自分のカバンを膝の上に置き中をあさった。


 中は携帯食料の食べかすや何に使うかわからない金属片が入っている。

 精鋭はシェルターに雇われているが追加報酬としてこういった貴金属や工芸品、宝石など、換金物を持ち帰ることがある。


 といっても精鋭の給金に不満があるわけでもなく、ただの物珍しさやわざわざ骨董品を買う手間が省けたというくらいのものなのだが。


 シェルター勤務の一般兵がたびたび行わされている資材回収、森や戦場跡地、廃墟などから木材や金属などを持ち帰る。

 精鋭は一般兵が近寄れないような、危険な生体兵器の縄張りまで入っていくことが多いので、貴金属や宝石などを発見する可能性が非常に高い、彼女が持っているのはそういったもの。


「なんかいらないものが入ってた気がする」

「そういえば俺のも、いろいろとゴミが入ってたな」


 コリュウも自分のカバンを取り中を漁る。


「んじゃあ、今は掃除だけしとくかな。ついでに使うとき、きれいに整理しておこっと」

「準備するとき楽だからな」


 そういうと次から次へと机の上にゴミが並ぶ。


「じゃあ、私のカバンの掃除もやっといてくれ」

「やだ」


 ツバメの言葉に即答で返すイグサ。


「え、隊長のカバン勝手に開けていいの?」


 コリュウは驚いた顔をしている、ツバメはココアを啜りながら話し続ける。


「別にみられて困るものは入ってないぞ? 着替えは洗面所に置いておいてくれ」


 その言葉にコリュウが少し顔を赤らめる。

 そしてコリュウより先にイグサがツバメの鞄を取った。


「私がやる、着替えって着っぱなしの制服以外はシャツと下着じゃん」

「洗わなくても、新しいの貰うから捨ててもいいんだけどな」


「だめです、物を大事に」


 なんだかんだ言っていたが結果的にイグサがツバメのカバンを漁っている。

 エクエリのバッテリーが次々とテーブルに並べられていく。


 私の集めた貴金属やなんかわからない置物みたいなものまでいろいろあった。

 ツバメは席を立ちあがりテーブルから離れる。



 鞄の整理を任せていたツバメはその用をしばらく見ていたが瞼が重くなってきたのを感じ彼女は席を立つ。


「少し横になるからもし寝てたら起こしてくれ」


 ツバメは二人にそういうと席を立ち机から離れた。


「ずっとダラダラしてると、戦場に出た時の感覚狂いますよ?」

「たかが、二日三日だよ。それくらいじゃ問題ないでしょ」


 ツバメは残ったココアを飲み終えると紙コップを捨てコリュウ達の後ろを通り過ぎ奥の寝室に向かった。


「おやすみなさーい」


 イグサが寝室に消えていくツバメに手を振る。


「横になるだけだってば」


 彼女はそういって寝室へと移動。

 イグサが携帯端末を取り出したがコリュウ以外の友人でもできたのだろうか? 目をこすりツバメは部屋を移動する間にちらっとそんなことを考えていた。


 携帯端末は通信の通じるエリアでしかできない、アンテナの通信範囲も小さいので基地内だけやシェルター内、アンテナ車の付近だけでしか通話ができない、離れて行動する時だけ使用する微妙なアイテム。


 大規模アンテナが付けられているシェルターなら他のシェルターとの交信も可能だが、今の世界そんな大きなアンテナがあるのは、シェルターの外からでも見える六角形のタワービルが建っている王都をはじめとした十万人単位の人が住んでいる巨大シェルター、そんな片手で数えられる数だけだ。


 電波は生体兵器を引き付けるから、そんなアンテナをつけたらシェルターにそれなりの防御力がないと襲われてしまう。


 ――そういえばイグサはここに来る時の移動中、外にいるときも携帯端末を使っていたな、思い出に風景写真でも撮っているのだろうか?


 ベットに横になりツバメは天井を見上げながらそんなことを思っていた。


「ツバメはお疲れのようだね」

「隊長だからな疲労が溜まってたんだろ」


「年じゃない?」


 隣の部屋から聞こえてくるそんな会話に突っ込みを入れる。


「おいこら、イグサ」

「あ、起きてた。空耳です、気にしないでくださーい」


 ――まったく、うかうか寝てられないな、……違う違う、横になってるだけだ。


 自分自身に突っ込みを入れツバメは瞼を閉じた。

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