2話 スキルセットとログインと
「ったく来夏め。ゲーム押し付けといて一時間後会いましょうとかいきなりすぎるんだよあいつめ。」
来夏と別れた後、俺は三十分かけてVRゲームをやる環境を整えた。
VRゲームをやる為にはインターネットに繋いだPC、ソフトを入れる為のVRキューブと呼ばれるモノ(形的にはゲームキ○ーブみたいな感じ)、頭に装着するVRヘッドギアの三点セットが必要。ソフトは好きな物をキューブにぶち込めばOK。
「さて、と。準備は整ったし早速やってみるか。」
キューブにEFOのソフトをセット、ヘッドギアを装着してソファに寝っ転がる俺。
ヘッドギアについているスイッチを入れた瞬間、俺の意識は急速に薄れていった。
気が付くと、俺は空に浮いていた。
眼下にはどこまでも続く大地が広がっていて、少し離れた所に大きな街があるのが見える。
「ようこそ、Earth Fantasy Onlineの世界へ。私はナビゲーターのフォルテと申します。以後お見知りおきを。」
俺が下に広がる景色を眺めていると、突然女の人の声が聞こえた。
思わず前を見ると、真っ白い服を着た緑色の髪の女性が立っていた。この人が、多分さっきのフォルテというナビゲーターだろう。
「ではまずキャラクタークリエイトを行ってください。」
とフォルテさんが言うと、目の前にウィンドウが表示された。
…ふむ。顔や体形を変えられるのか。変える必要はないな。
こんなゲームでイケメンになっても虚しいだけだろう。と、俺はほぼそのままの自分の姿で登録する。
「名前を設定して下さい。」
名前ねえ。確か来夏がそのままライカにするって言ってたし、俺もそのままでいいか。タイガっと。ほい設定完了。
「次にスキルを設定して下さい。説明を聞きますか?」
目の前にYes/Noのウィンドウ。俺はYesを選択し、説明を聞く事にした。
このゲームには普通のRPGにあるようなステータスといった概念は無い。
その代わりにスキル、アビリティと言った物がその代わりとなっている。
まず、プレイヤーにはジョブ、メインスキル、アビリティの3つの能力が与えられる。ジョブはそのまんま、職業の事で、剣士とか魔法使いといった役職名がここに当てはまる。メインスキルとは戦闘で使う武器や防具、回避技術といったスキルを設定する事ができる。具体的には《長剣技術》や《防御技術》と言ったスキル。最後にアビリティ。これは補助的な能力…例えば生産職を目指すなら《調薬》や《鍛冶》、料理人を目指すなら《料理》といったアビリティを設定する。
という事で、俺は二十分ほど粘ってスキル欄を埋めた。
タイガ《称号:ルーキー》
【ジョブ】《ルーキーLv1》
【メインスキル】《短剣技術Lv1》
《軽鎧Lv1》
《回避技術Lv1》
《補助武器Lv1》
【アビリティ】《サバイバルLv1》
《空腹度減少軽減Lv1》
《観察眼Lv1》
《生産技術Lv1》
《料理Lv1》
《エンカウント率減少Lv1》
「よし、これでいいか。」
俺は設定したスキルとアビリティに間違いか無いかチェックし、間違いがない事を確認した後でOKを選択。
フォルテさんが「この構成でキャラクターを作成します。後で変更はできません。よろしいですか?」と聞いて来たので、俺はOKを選択する。
「それでは、ゲームの世界へご案内する前に戦闘についての説明をさせて頂きます。」
フォルテさんの説明によると、戦闘用のスキル(例えば魔法とか剣技とか)はジョブ毎に習得される。ジョブは初めは皆ルーキーというジョブになるらしい。ルーキーがLv10を超えた地点で何かしらのジョブになる事が出来るようになるんだとか。
他にも戦闘時の注意や違反行為について、最低限のマナーとかの説明を受けた後、俺は最後の質問『最終確認です!この設定でゲームを始めます。よろしいですか?』にYesを選択する。
「――お待たせ致しました。キャラクター設定の適用を完了しました。ようこそ、EFOの世界へ。」
一瞬光に包まれたかと思ったら、妙な浮遊感が身体を包む。
それから三秒くらい経つと、俺は町の広場に立っていた。どうやら、無事EFOの世界に降り立つ事が出来たようだ。