91 映画「ゴジラ -1.0(マイナスワン)」
こんにちは。
今回はこちらの映画。
実はすでに書いたつもりでいたのですが、今回モノクロ版(「マイナスカラー」)を観てあらためて思うところがあり、「書き足さねば」と思ってこちらエッセイを開いてみたら、どうやらゴジラに関してはカラー版のほうも他エッセイでちらっと言及していただけのようでした。
あらまー、うっかり!
ということであらためまして今回は「ゴジラ -1.0(マイナスワン)」について語ろうと思います。よろしかったらおつきあいくださいませ。
〇「ゴジラ -1.0(マイナスワン)」
2023年製作・公開 日本
(「マイナスカラー」の方は2024年1月から公開)
125分
監督:山崎 貴
主演:神木隆之介
公開前に出ていたのは本当にわずかな情報だけでしたが、特撮スキーな我が家一同は心の中の「ゼッタイ観るリスト」に即、入れていたに違いない今作。
その決意どおり、私は公開早々に、まずダンナとカラー版を観にいって参りました。
冒頭のストーリーはこんな感じ。
終戦間際の日本。特攻隊員だった敷島浩一(神木隆之介さん)は、米軍への特攻のために出撃するも、機体の不具合を理由に戦線を離脱。そのまま、海軍航空隊整備部の兵だけが駐屯する小さな島へ不時着します。
隊員たちはどこにも不具合のない敷島の機体を見て不審に思うものの、ほとんど責めることはしませんでした。
ところがその夜、その島に、海から謎の巨大生物が出現。
もちろんゴジラです。
驚き逃げまどう整備兵たちでしたが、とりあえずそばの塹壕の中に避難。
整備部隊長・橘から戦闘機の機銃で応戦するよう要請される敷島でしたが、なんとかコクピットに座るものの、ゴジラのすさまじさを目の前にして、あまりの恐怖に一発も撃てないまま震えるばかり。
やがて隊員のひとりが恐怖に耐えきれずに発砲してしまったことでゴジラが暴れだす。そのために、そこにいた隊員たちはほとんどが死んでしまいます。
生き残った橘になじられるも、何も言えずにうなだれるばかりの敷島。
やがて終戦となり、焼け野原となった東京へ戻るのでしたが……。
と、ここまで書きましたが、これがほんの冒頭です。
混乱する戦後の日本を、しっかりした取材を下地に丁寧かつ克明に描きつつ、登場人物の悲壮な心情や状況、つまり人間ドラマにきちんと焦点をあてた作劇に唸らされました。
もちろん往年の「ゴジラ映画」としてのダイナミックな戦闘シーンは必見です。VFXも本当に美しい、というかリアル。
すでにご存じのかたも多いと思いますが、ゴジラ映画ではほぼ毎回、ゴジラのデザインが変更されて創造し直されます。その映画のコンセプトやテーマに沿ったデザインになるとでも言うのでしょうか。
今回の「ゴジラ -1.0」では、自然の驚異であるとか、怒れる神のような存在としての荘厳な、そして恐ろしいゴジラ、という印象でした。
謎めいた「シン・ゴジラ」での造形も好きでしたが、こちらも本当によきです!
映像美として、VFXチームも大変がんばっておられるのがひしひしと伝わってきました。
戦後の都市東京を破壊して回るゴジラ、海上で船や戦艦を襲うゴジラ、どれもものすごい臨場感があり、また映像として美しく違和感なく背景になじんでいました。
今回はなんとこの高い映像技術が認められ、今作は第96回アカデミー賞視覚効果賞へのノミネートも果たしました。
「ゴジラ」を生んだ国の民として、この快挙を心から称えたいと思います。
ストーリー中、何度か「これは『ジョーズ』から?」「こちらは『ジュラシックパーク』から?」と思われるような、スピルバーグ監督作品へのリスペクトを感じるシーンがあちこちにあったのですが、アカデミー賞ノミネートでアメリカに呼ばれた山崎監督は、その敬愛するスピルバーグ監督にお会いでき、じかにお話もできたそうで。
なんとスピルバーグ監督は今作を三度も映画館でごらんになり、山崎監督に「特にキャラクター(人物)がよい」とおっしゃったそうで。
やっぱり人間ドラマとしての側面を高く評価されたようです。
主人公・敷島は戦後の混乱の中、赤子を抱えた女性・典子(浜辺美波さん)に出会い、強引に家に居つかれてしまいます。そのままともに暮らすようになるわけですが、この浜辺さんがまたいい!
最初のうちこそ汚いかっこうで、だれだかわからないぐらいなんですが、どんどん美しさが際立っていきます。子役の女の子もとてもよかったです。
少しまえに放送されたNHKの朝ドラ「らんまん」でもずっと夫婦役で共演なさった神木さんと浜辺さんですが、実はこちらのほうが撮影は先だったとのこと。息ぴったりで本当にすばらしかったです。
こちら作品はカラー版に対して「マイナスカラー」と銘打ったモノクロ版も公開・上映しているのですが、実はわたくし最初この情報を知ったときは首をかしげていました。
「なんでわざわざ白黒で上映??」と。
でもSNSを見ていると、次第に「モノクロ版すごくいいぞ」「まるでノンフィクションを見ているようだった」という、褒めるご感想が次々に見えはじめ。
二回目はムスメとカラー版の4DXに行ったのですが、ついに我慢できなくなって三度目はマイナスカラーを観て参りました。
──結論。
「もう……めっっちゃくちゃ、よかった!!!!」
なんなんでしょうかね、あの凄まじい臨場感。
もう三回目なのに、役者さんたちの演技がより鬼気迫るものに見えるのはなぜだったのでしょう。
人物の心情がまっすぐ胸に刺さってくるようで、カラー版で二回も観ていて話は知っているのに、モノクロ版がいちばん涙してしまいましたよ……。
もちろんゴジラが登場して暴れるシーンも、怖さや恐ろしさが半端ないのです。本当に自分もその場にいるかのような気持ちになる。その場を逃げまどっている群衆のひとりに、有無をいわさずならされてしまう。
この体験は新鮮でした。
なんでしょうね、色彩という大きな情報が抜け落ちたことで、作品のテーマや迫力がぐっと増しているようなのです。これ、正直ほんとうに驚きでした。
製作サイドのみなさんは、製作過程でこの効果に気づいて敢えてモノクロ版も公開することにしたのでしょうか? それとも最初から「モノクロ版も公開する」ありき、での製作だったのかな……??
私にはこれがわからなかったので、どなたか詳しいかたがおられたらぜひ教えてほしいです。めちゃ興味ある!
てなわけで「ゴジラ -1.0」のご紹介でした~。
ではでは!