89「セクシー田中さん」問題について 3
こんにちは。
しばらくステキ映画のご紹介で楽しくやっておったのですが、うーむ。ここへきて、この問題に関連して出版社から首をかしげる声明が出てしまいました。
あまりにも腑に落ちないので、今回はこのお話です。よろしかったらお付き合いください。
前回の「『セクシー田中さん』問題について 2」で、わたくしこのように書きました。
【引用】
今回は、テレビ局のドラマ制作側と、マンガを出版していた出版社とがどういう内容の契約を結んでいたのかということも注目されています。
原作者である芦原妃名子先生のご意向としては「なるべく原作を変えないこと」という強い希望があったわけですが、それが契約にどこまで盛り込まれていたのか?
また、そのご意向を出版社はどれほどきちんとテレビ局側に伝えていたのか?
これらの点もかなり疑問に思われます。
このあたりの詳しいことについては後続のニュースが待たれます。
【引用ここまで】
ということで待っていたら出てきたニュースがこれ。
2024年2月7日付のヤフーニュースの記事によると、当該の出版社は今回の件に関して社員向けの説明会を行ったとのこと。その中で、今回の経緯について社外発信する予定はない、としたというのです。
発信しない理由としては、芦原先生がこれまでの経緯などについて語ったブログを削除していることから「故人の遺志にそぐわない」ためだとのこと。
これには社員からも「『芦原さんが悩んで削除した内容をあらためて出すのは控える』ということだと思うが、腑に落ちない。何も発信しないことに世間から疑問がでるのは当然。時間がたつのを待っているだけでは」と厳しい声があがったとのこと。
これほんと、私も社員さんのご意見に賛同なのですよ……。
これまでは、テレビ局や脚本家、プロデューサーの認識のありかたや対応についてクローズアップされることが多かったこの問題なのですが、もしかすると出版社も作家さんの意向について対応をかなり間違えていたのではないか……という疑問が生じる。
出版社のドラマ担当者がどんな対応をしていたのか、そのあたりがはっきりしませんと、こちらとしては判断のしようがない。
もしかしたら、そのあたりがハッキリすると今度は出版社や出版社の担当者が袋叩きになってしまうから、ダンマリを決め込んだのか……? と、そういう疑心暗鬼が生まれますよね。
そうこうしていたら、「かつて同じ出版社からこういうひどい目に遭わされた」と暴露する漫画家さんが現れはじめました。
私も大好きだったアニメ作品「しろくまカフェ」の原作マンガ作者、ヒガアロハ先生もそのおひとりです。自作をアニメ化してもらうにあたり、当該出版社はかなりマズイ対応ばかりしていたそうな。とてものこと、「原作者を大事にしよう」という体質の出版社ではないと厳しく発言なさっています。
「金色のガッシュ!!」の雷句誠先生は、当該出版社とひどいトラブルがあり、自作の原稿を紛失されるなどして裁判沙汰になったこともあるそうで、その際には社内で「マンガ家に屈してはならない」というファックスが回った……というようなことまでヒガ先生はおっしゃています。
……これほんまやったらタイガイやな(汗)。
これがこの出版社のもともとの体質だったのだとしたら、芦原先生の件も多くの部分で出版社に責任があるのかもしれませんね。
前回はテレビ局について語りましたが、出版社もまた会社。資本主義社会の中で、「いかに利益をあげるか」が最も大事な集団です。
そんな中で、芦原先生は自分の作品の同一性をなんとか保持しようと、しまいにはご自身で脚本を書くことまでされて必死に頑張っておられたのかもしれません。
それが結果的に磨り潰され、テレビ局側にいる脚本家やそのお仲間からは「ワガママな原作者がねじこんできていい迷惑だ」というような皮肉なコメントまで流されて、もう生きていく気力も失われたのかもしれません。
あくまでもこれは、「それが事実であったら」という「仮定」ではありますが、もし事実ならば本当にひどい話。
まあ仮定の話はこれぐらいにして。
ともかくも、これはまちがいなく、非常に大きな事件だと思うのです。
関係したテレビ局も出版社も、「なぜこうなってしまったのか」「どうすればこれを避けられたのか」をしっかり検証する必要がある。なにより人の命に係わる問題になってしまったのですから。
べつに今回のことに限らず、とかくこの国では学校でのいじめでも政界でも、なにかコトが起こるととにかく関係者は事実を隠蔽しよう、隠蔽しようとしてしまう。
今回も、芦原先生を追い詰めた要因のひとつだったろうと思われる、脚本家とそのお仲間たちは、出していた自分たちのコメントを削除してアカウントに鍵をかけたり削除したりしてダンマリを決め込み、逃げ出して布団の中にもぐりこみ、出てこなくなっています。そっと口をぬぐって、時間がたって世間がこの事件を忘れるのを待っている。
だからいつまでたっても事実が明らかにならないし、ゆえに検証もされない。
検証されなければ、「二度と同じことを繰り返さないためにはどうしたらいいのか」という議論も深まらないことになる。
それでは本末転倒だと思うのです。
正月早々に起こった航空機の炎上事故のとき、航空関係の識者が言っておられましたが、いざ事故があったときにとかく「犯人さがし」「責任追及」ばかり見て騒いでいると、「今後の事故をいかに防ぐか」という視点が欠落していってしまうと。
これは今回の件も同じだと思うのです。
もう二度と、マンガにしろ小説にしろ原作者が自分の作品を守りたいと思っただけで命の危機にさらされるようなことがあってはならない。
だとしたら、関係各社や関係した脚本家とそのお仲間のみなさんは、きちんと事実を明確にし、今後どのようにしていったらいいのかを検証、改善していただかなくてはならない。
それこそ、関係したみんなで責任を分け合って薄めあって「わたしのせいじゃない」ってしてしまうのは楽でしょうし、そこへ逃げ込みたい気持ちはわからなくはないんですが、それではダメだろうと思う。
とにかく、きちんとした検証と今後の改善をひたすらに望みます。
ではでは。




