87 映画「カラオケ行こ!」
はいこんにちは。
というわけで「原作リスペクトするで~!」的な映画作品のご紹介、第二弾です。
今回は「カラオケ行こ!」。
今も絶賛上映中でございます~。
原作はマンガ。和山やま先生による人気作品です。
和山先生については、他作品「夢中さ、きみに。」や「女の園の星」で存じ上げていたのですが、「カラオケ行こ!」が先生の作品だとは知らないまま、この映画の評判を聞いて「観にいってみた~い!」と思っておったのでした。
映画の監督は山下敦弘さん。脚本が野木亜紀子さん。
こちらの野木亜紀子さんが、原作を非常にリスペクトした脚本をお書きになる方ということで有名な方なのだそうです。
「カラオケ行こ!」は、ひとことで言うとボーイ・ミーツ・おっさん(しかもヤクザ)なお話。
少年、岡聡実は、合唱部の部長をしている中学3年生。ある雨の日、合唱コンクールに出ていたところ、ひとりでいたところへぬっと男が現れる。
見るからにヤクザな感じの男は、聡実くんをじっと見つめていきなりこう言います。
「カラオケ行こ」。
わけがわからない聡実くん。でも怖そうなヤクザの男に逆らえず、そのままカラオケ屋に連れていかれます。
男の名は成田狂児。正真正銘のヤクザです。
彼には、どうしても歌がうまくなりたい事情がありました。そうして、たまたま見つけた歌のうまい少年に先生になってもらおうと画策していたわけですね。
聡実くんはとにかく戸惑いまくりです。ていうか、ずっとビクビクしまくりです。
この狂児さんとこの組の組長さんが、また変な人でね。
組のもんを集めて、定期的にカラオケ大会を開いては、一番歌のヘタだった者に無理やり、シロウトのヘッタクソな技術でめっちゃ痛い刺青を入れるという罰ゲームを課す。しかも絵ゴコロが「うんこ」(狂児さん談・笑)。つまり終わってる。もう最悪。
今までは、すごく歌が下手な組員がいたんですが、その人がついに町の音楽教室にこっそり通うようになり、狂児さんは「ヤバイ、次はオレや! まずい!」ってなったわけですな(笑)。
ええ迷惑なんは聡実くんです。いやほんまに。
ってな感じで、あれやらこれやら、笑えるシーンがいっぱいの素敵な作品。
いや聡実くんは聡実くんで、ちょうど声がわりの時期になっており、合唱について人知れず悩みを抱えていて……という、思春期の子らしいナイーブな部分もしっかりありつつ。
全体の作りは、原作のテイストやテーマをしっかりと踏襲していて壊さず、大事に大事に作られている印象。
原作にないキャラクターやシーンもあるにはあるのですが、それも決して物語のテイストを壊してはおらず、それでいて味のある、また意味のあるシーンになっています。監督さんと脚本家さんすごい。
役者さんもとっても素敵です。
なんといっても、狂児さん役の綾野剛さんがとにかく魅力的。
聡実くんに対してはどこまでもソフトで優しいんですが、そこはヤクザ。「絶対この人、倫理観のどこかがブッ壊れてる」と、観る者に確信させる演技をされてましてね……。
ほんっっと──に「アブない男」という雰囲気を、全身から醸し出している。
綾野さんは、映画「最後まで行く」の時のものすごい狂気の演技もすさまじかったのですが、聡実くんはもちろん、組のもんに対しても一見優しげにふるまっている狂児さんは、なんでかしらんがさらに凄みがあるのです……。
それでいて、おかしい。あちこちクスッと笑わされる。もはや業師。
カラオケの話なので歌うシーンもかなり多いのですが、綾野さんの、というか狂児さんのXJAPAN「紅」、ほんま聴きごたえがある!
聡実くん役の齋藤潤さんは現在16歳だそうなんですが、いやほんと凄い役者さんです。先日もご紹介した「正欲」でも、主役の子供時代を演じてらしたのですが、短いシーンながら鮮烈な印象を残していました。あの年で、もうしっかり「役者」なんだなあとしみじみしてしまいます。
本当にお勧め作品なので、上映中にぜひぜひどうぞ。
上映中、吹きださないように我慢するのが大変でしたわ(苦笑)。
マンガの方は、その後、大学生になった聡実くんの物語「ファミレス行こ!」が出ているようで、まだ連載中である模様。いやあ楽しみ。
ではでは、今回はこのあたりで~!




