86 実写映画「ゴールデンカムイ」
はいこんにちは。
前回、前々回とつづけて、原作を大事にしながら映像化作品にすることに関する話をしてきたわけですが、今回も少しそれに関係のあるお話ですかね。
とはいえ、ご紹介する以上はこれまでとは逆で「原作をものすごくリスペクトして素敵な作品に仕上げているもの」となります。
今回から2回は続けて、そういう作品のご紹介です。
一つ目はタイトルにもあるとおり「ゴールデンカムイ」
原作は、もはや言わずと知れた大人気コミック。野田サトル先生による作品で、映画のパンフレットによればすでに累計発行部数が2700万部を超えているとのこと。
明治末期の北海道を舞台に、あの日露戦争での二百三高地の戦いを生き残った「不死身の杉本」と、アイヌの少女アシリパ(すみません、小さな「リ」がうまくだせないので大文字でお許しください)の、莫大な金塊を求める冒険活劇です。
……と言っちゃうだけだとまったく作品のすばらしさが伝わらないのですが、とにかく、出てくるキャラクターがどれも個性的で濃い!
それぞれに背負っている過去があり、こだわりや後悔や信念があり、またしばしばド変態(失礼・苦笑)だったりもして、ほんっとうに魅力的。それぞれのキャラクターに多くのファンがついているのもうなずけます。
そういえばSNSでこんなことを言ってる人がいました。
コメント主は奥様で、あまり「ゴールデンカムイ」のことをよく知らないダンナさんから、とあるキャラクターについてこう言われたそうです。
「ほら、おるやん? あの……変態の人」
「え? 変態ってどの?」
……うん。
そう返事してしまいかねないほどには変態が多い(笑・ほめてますよ!)。
このコメントを見て、私たち母子は例の泉の女神様をまねて笑ってた。
「『お前が落としたのはどの変態だ? この変態か、それともこの変態か?』」
「せやねーん! ほんま『どの変態?』ってなる」
「大体、二択ですまへん! あれもこれもそれも、みーんな変態!」
「ほんまそれ!」
ってね。
いやなんべんも言うがほんまにほめてるから!(しつこい)
ま、ともかくですよ。
そんな作品であるがゆえに、最初に実写映画化の情報に触れたときには、わたくし個人的にとても懐疑的になっておりました。
なぜって、これまでの多くのマンガの映像化作品には、少なからず失望させられてきた苦い経験があるからです。いや、もちろん成功、むしろ大成功と呼べる作品もたくさんあるのですけれどもね。
映画館で流れる前宣伝の映像を見るかぎり、役者のみなさんがマンガのキャラクターのビジュアルに近づけようとしているのはわかったのですが、やっぱり「いや、もっともっと『筋肉』が要るでしょ!」って思っちゃって……どうしても。
それはまあこのところ、筋肉ムッキムキなインドの俳優さんたちをたくさん見すぎていたせいかもしれんけども(苦笑)。
しかし、しかしですよ。
映画が公開されてしばらくすると、SNSがざわつきだした。それも、いい意味で!
ものすごく原作を大事にして映像化されていると、絶賛するご意見が多かったのです。
そもそも監督の久保茂昭氏が原作の大ファンであり、この世界観をどのように再現しようかと大変悩み、腐心された……というのも知って、俄然気になるわたくし。
ということで、「観たい」と言っていたムスメを連れて、さっそく出かけて参りました。
結果。
「よ……よかった……」
「よかったなあ……」
映画館を出たムスメが、しばらくコレしか言わんかった(笑)。
完全に語彙力が消失しておりました。かく言う私も似たようなもんでした。
いやほんまにね!
ほんっっとうに、細かいところまでこだわってこだわって、原作のイメージとテーマをきちんと押さえて制作されていることが、映画全体からひしひしと伝わって参りました。
「ゴールデンカムイ」では、一般的な日本人にはなじみのうすいアイヌの人々の文化や暮らしについて詳しく紹介されるシーンが多いのですが、その部分もとてもしっかり。
アイヌの集落での描写では、使っている道具などもきちんとアイヌの方の協力を得て制作したものが使われているそうです。
すごい! もちろん衣装も、細かい部分まで説得力がハンパないです。
当然、役者のみなさんも素晴らしかった。
個人的に、宣伝で見たときのアシリパさんはマンガで見ていたキャラクターよりだいぶ「お姉さん」に見え、「もっと小さいイメージやねんけど……」って余計に心配になってたんですよ。
でも、演技ってすごいですね。
アシリパさん役の山田杏奈さん、過酷な雪国の環境下でのロケにも耐え、とてつもない透明感と、意思の強さをもったキャラクターであるアシリパさんをしっかりと演じきっておられました。もはや脱帽でした。
……うん。
まあ、ここで私がアレコレ言うててもしゃあないかな。
まだまだ上映していると思うので、とにかく、気になるかたは一刻も早く観に行って下され~! どこかのいい加減なドラマ化作品なんて吹き飛ばす、原作ファンを失望させない作品づくりが堪能できること、まちがいなしですぞ!
ではでは。




