鎧うらばなし(2)
今回は、「白き鎧 黒き鎧」シリーズ完結(一応ですが)にあたっての、あとがき代わりのエッセイとなります。未読の方にはネタばれ以外のなにものでもありませんので、どうぞお読みにならないでくださいませ。
まだ少し番外編なども書く予定ではありますが、丁度、手元の原稿で「外伝《黒焔の王》」のエピローグを書き終わったところということで、まずまずいいタイミングかなと思い、書かせていただきました。よろしかったらお付き合いくださいませ。
「白き鎧 黒き鎧」は、もともとムーンライトでBL作品の連載をしていた私に、とある「なろう」作家さまから「ぜひ『なろう』の方にも出せる作品を書いて欲しい」というご希望をいただきまして書き始めた作品です。
当初はムーンでの連載とも重なっており、本当に「じゃあためしに書いてみようかな」という程度の軽い気持ちで、なおかつ相当の「見切り発車」的な形で連載を始めてしまったものでした。
記録を見ますと、2015年9月20日から10月8日までの間、ずっと毎日、二作品を同時に更新していました。
どうしてそんな無謀なことを始めてしまったものか、自分でもいまだに謎です。
その間に子供の学校の運動会があったのですが、書き溜めた原稿もなく、その日は正直、死ぬかと思いました。実は少し体調まで崩しました。自業自得とはいえ、まったく、もう少し自分の年齢を考えるべきでしたね。反省しております。ええ、二度とやりませんとも!
ともかくも。
そんな風にして始めてしまった「鎧」ですが、以前のエッセイでも申しましたとおり、主要人物についてはすでに持っていたキャラクターでもあり、当初はもっと単純な、短い話で書き上げられるだろうと、相当軽く考えておりました。
ここで白状しますが、サーティークがナイト王(じつは内藤なのですが)を攫うだなんて、彼自身がそう言い出すまで私も知りませんでした。
「えっ? 攫うの? マジで? どーすんのよそれ!?」
と、びっくりしたのは言うまでもありません。
その後、空にずっと浮かんでいた「兄星」が実はこちらの「弟星」の歴史に深く絡んでいただなんてことも明らかになりましたが、それも「えっ、そうだったの?」状態の作者でした……。
そうしたいろんな情報が出てくるたびに、既出の情報との矛盾がないように必死に前の部分を読み直し、頭をひねりまくる……と、まあそんな執筆風景を想像していただければよろしいかと。ひどいですね、ひどすぎますね……。(ナウシカ風に)
そもそも「兄星」は、佐竹があの異世界へ落ちてはじめて空を見上げたときからその空に浮かんでいましたが、まさかその時には、ストーリーそのものにそこまで関わってくる「キャラクター」になるとまでは考えてもいませんでした。
軽い気持ちで出したキャラクターがストーリーの中でどんどん成長していき、遂にはキーパーソンにまでなる、というのは、私の書くものの中では往々にしてあることなのですが、「鎧」でもそれは同様だったようです。
キャラクターと言えば、主要キャラでない人たちがそれぞれに自己主張をはじめてしまい、読者さまからのリクエスト等もあったりして、結果これほど「後日談」やら「外伝」、果ては自分の作品の二次創作まで書くことになろうとは、当初はまったく予想もしていなかったことでした。
こちらでは紹介できませんが、ムーンライトの方にもいくつかの「外伝」「後日談」、二次創作が存在しております。
二次創作といえば、「鎧」は沢山のかたから二次創作の小説を書いて頂いた、初めての作品でもありました。さらにはファンアートやイメージイラストなども、本当に数多く寄せていただけました。
これほど作品やキャラクターを愛していただけて、もう本当に、作者冥利に尽きることはないと思っております。小説やイラストを寄せてくださった皆様、本当に本当に、有難うございました。
頂いたイラストについては「お絵かきの部屋」に、二次創作小説についてはそれぞれの作品のあらすじのところにURLを紹介しておりますので、よろしかったらご覧下さいませ。
さて、完結した「外伝《黒焔の王》」(またの名を「シスコン外伝」・笑)ですが、「とにかくサーティークとヴァイハルトの殴り合いが書きたい!」の一心で書き上げたものでした。
結果、殴り合いではなくて一方的な形にはなってしまいましたが、ああいう「殴って分かりあう男たち」というシチュエーションがもう、ことのほか好きなもので……。
趣味が暴走していて申し訳ありません(苦笑)。
もともと、多少コメディ仕様でヴァイハルトを「シスコン気味の人」にしていたものが、ムーンライトで連載した外伝の中でしゃべらせてみたところ、かなりシリアスな意味で妹を愛している人、という側面が出てきてしまい、結果的にこちら「なろう」でこのような形になりました。
外伝や後日談は、当然ながら蛇足のそしりを免れないものだとは思っておりますが、本編ではあっけなく死に追いやられたレオノーラにこんな幸せな時代があったんだということも、作者として少しは描写しておいてあげたいなという思いがあったので、私としては良かったかなとは思っております。
また、執筆中に熊本と大分の大地震が発生し、大変僭越なことながら、自分の過去の体験もあったりしまして、「どんな辛いことがあっても、すべてがもとに戻る事はなくても、いつかはきっと笑える日もくるんだよ」ということが、ひとつのテーマとしてリンクしていったような気もしております。
もちろん、評価やご判断はすべて、読者さまがたのものなのですが。
またこれも余談ですが、サーティークとレオノーラの恋愛描写だけは、あまりにも可愛すぎて、書いてるこっちはただもうひたすら、ものすごく恥ずかしかったです……。
いやもうほんと、「何の羞恥プレイやこれ!」って思いながら書きました……。
ともあれ、本編であまり語る場面のなかったヴァイハルト兄様の気持ちを、十分に汲み取って文字として写し取れたかどうかは謎なのですが、本人はまあ「まずまずだな」とは言ってくれたようなので、「キャラクターによる口述筆記型もの書き」としましては、ひとまず安堵しているところです。
きっとまた、涼しげで流麗な笑顔など浮かべて、可愛い(?)甥っ子と今も戯れていることでしょう。
あとの事はもう、読んでくださる読者さまのお心ひとつのことですしね。
ともあれ、こうして長いシリーズの完結を見ることができましたことも、何もかも、日々応援くださった読者さま方のお力あってのことだと思っております。
この場を借りて、心から御礼を申し上げます。
みなさま、まことに有難うございました!
そして、いつかまた、どこかで。
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【作品紹介】
「白き鎧 黒き鎧」
http://ncode.syosetu.com/n7314cw/
「秋暮れて」(BL作品)
http://ncode.syosetu.com/n6726dc/
「白き鎧 黒き鎧 外伝《黒焔の王》」
http://ncode.syosetu.com/n3306dg/
「白き鎧 黒き鎧 【番外編】サーティークの育児日記」(BL作品)
http://ncode.syosetu.com/n4779dg/
「お絵かきの部屋」
http://ncode.syosetu.com/n4428dc/
※「小説家になろう」にて連載したシリーズのみの記載です。