65 某書籍の出版中止事案ついて
はいこんにちは。
今回の話題はこれ。
これもね~、SNSでかなーり燃えてました。
というか、いまも絶賛燃えさかってますな。
2020年、アメリカでとある本が出版され、話題になっておりまして。
このほど、日本語訳されたものが某K出版社さんから出版されることが告知されました。そのとたん、とある界隈からめちゃくちゃバッシングや反対を受けはじめ、結局K出版社がその本の出版を中止した、という事件。
本の邦題は「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」。著者はアビゲイル・シュライアーさん。
原題は「IRREVERSIBLE DAMAGE」。わかりやすく直訳すれば「不可逆的なダメージ」。
なにが不可逆的なのかというと、特に十代の多感な時代に性別違和を感じる子どもたちに施されたジェンダー医療、つまり体を自認する性に合わせるための手術や投薬によって、あとで気持ちが変わっても、もうあともどりできなくなるということ。
現在では、「元トランスジェンダー」としてティーンエイジャーの頃にそのような手術等を受けてしまったことを後悔している若い人がかなりいるそうで、そのことを取材して本にしたという内容のようです。
「ようです」っていうのは、英語版では読めるとはいえ、今回の騒ぎで日本語版が読めない状況にされてしまったから。
そもそもトランスジェンダーである(と自己紹介する)人たちがこの本に対して「ヘイト本だ」「トランス差別を助長する!」と叫んでいる理由がいまいちわからない。
いやまあ、原題と比べて本の邦題やサブタイトルなどが、かなりこう、挑発的というか、見る人に誤解させる感じなのは否めないとは思いますけどね。とはいえこのタイトルだけで燃え上がっているのだとしたら、それはおかしいなと。
そもそもその方々のほとんどが、その本の内容をきちんと読んですらいないように見えるのも問題に思える理由です。
もちろん欧米でもこの本は賛否両論あったそうなんですが、英タイムズ紙や英エコノミスト誌の「年間ベストブック」に選出されるなど、実は評価も高い本らしいのです。アマ〇ンで英語版が購入できますが、そこでも90%以上が高評価となっている。
この本を日本で出版させまいと活動する人々は、この本が「デマにまみれている」「トランスジェンダーへの差別を助長する」「この本のせいで人が死ぬんだぞ」と半ば脅すようなことまでしており、いろいろと疑問点が多い。なんというか、非常に恣意的な何かが背景にあるのではないかと感じるほど熱狂的に反対している。
とはいえ私も本の内容がわからないので、とりあえず本の内容そのものについてはここまでとします。
今回、私が言いたいのはなによりも「それで著作物の出版が中止されるようなことがあっていいのか?」ということでした。
有川ひろ先生による「図書館戦争」を例に引くまでもなく、出版、本は「守られねばならないもの」です。
その内容や思想がどんなに自分の好みとは違っていても、やはり守らねばならない、そういう種類のものなのです。
私自身も物書きのハシクレとして、今回のことには黙っていられないと感じました。
たとえばフェミニストとか女性たちから嫌われている萌え絵美少女エロ絵みたいなものたちでも、やっぱり表現は守られなければならない。……ま、個人的にああいうものは「もうちょっとゾーニングはしてや」と思いますけども、それでも「出版するな」とまで言うべきものではない。
それをひとたび許してしまったら、どんどんほかの界隈へも延焼してしまう、それはそれは恐ろしいものだからです。戦時中の日本国内の、私人による「言葉狩り」の恐ろしさについて覚えている世代が減ってしまったことも一因なのでしょうか。
民主主義社会にあって表現の自由、言論の自由は絶対に守られなければならないものであり、「聖域」だと言われるのはそういうこと。
今回のことで、SNSで「これで出版を中止するというのは問題では」とつぶやいたところ、トランスを自認するいろんな人からあっというまにかみつかれました。
この本のどこが差別的でどこがヘイトなのか、というそもそも論などなく、いきなり「差別も表現の自由なんですか」「あんな本をよしとするなんて!」「お前は差別を助長する奴だ」という決めつけから話が始まる。
「差別をよしとしたあなたのせいで、私はもうすぐ死にます」みたいな脅迫まがいのことまで言ってくる。
これは完全に言論ではなくてただの脅しであり攻撃だと思いました。
あの攻撃性は、かなり危険なものだとも感じました。
こんなことが平然と許されているようではいけない。
少なくとも私は、くだんの本についてはほかの出版社さんからでもなんでも、とにかく日本語でも出版されたほうがいいと思います。
どんな内容のものだとしてもきちんと読んで、たくさんの人の目で精査され、評価されなければいけない。なにも読んでいないうちから「差別だ!」「出版するな!」という声に納得するのはおかしいし、負けるべきではない。
個々の人が自分の目で確認し、自分の頭で考え、判断する。
それこそが民主主義の根幹をなすもののはずです。
今回はかなりの危惧をいだきつつ書かせていただきました。
ではでは。




