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54 性犯罪を見聞きした人の経験談について

 

 こんにちは。

 今回もまたもや性的な内容ですみません。

 そして今回もまた某SNSで最近炎上していたものがもとになっております。


 わからない方のために、まずは概要を説明しますね。

 とある精神科医を名乗る男性アカウントが、先日このようなコメントをSNSに流しました。


「ずっと昔、1994年のまだ経済学部の学生で4年生だったころに、酒の席で男友達からこんな告白をされた。仮にTとする」

「Tが1年生のとき、同じ大学のサークルの先輩たちが、集団でひとりの1年生の女子学生を輪姦した」

「Tは傍観していただけで加害には参加しなかったものの、とても先輩たちを止められなかったし、その後警察などに通報することもしなかった。ただ黙っていた」

「女性はその後、遺書もないまま自殺してしまい、遺書がないのをいいことに先輩たちと自分は(ナイショの絵文字)の状態でずっと過ごしてきた」


 というもの。衝撃的な内容です。恐ろしいし、同じ娘を持つ親として本当にぞっとするし、許しがたい犯罪だと思います(もちろんSNSで匿名で流される内容ですから、全部がうそっぱちだったという可能性もなきにしもあらずですが)。

 亡くなったお嬢さんの親御さんやそのほかのご家族の心情を思うと非常にしんどい気持ちになってしまいます。


 その後、いわゆる「スーパーフリー事件」(1998年~)も実際に起こるわけで、それまでにもこういう土壌はしっかりと一部の大学サークル内に存在していたことを裏打ちしているのかもしれません。

 それ以前にこうして周囲の男性たちから犯罪が見過ごされていたことで、結局、もっともっとひどい犯罪にまで発展していったのでしょう。


 精神科医を名乗る男性コメント主は続けます。

「いまさら大学名やサークル名をさらすつもりはない。今の自分にできるのは、女性たちに対する注意喚起だけです」と。

 ここまで、あくまでも概要ですので、表現は少し変えております。


 さあ、SNSは燃えました。

 いくら何十年も昔のこととはいえ、そんなひどい犯罪を知らされてコメント主がただ黙っていたこと、ましてや精神科医だというし、この方じつはすでに3人の娘さんたちの父親でもあるというし。今ではアラフィフのいい大人なわけでもあるし。

「そんな立場でありながら、その認識はないんじゃない?」という、主に女性たちからの苦言や批判が集中したわけです。


 過去、若かったころに見過ごしてしまったのは、もしかしたらある意味無理もなかったのかもしれない(でもまあ、「ちらっと大学に通報するぐらいのことはしてもよかったのでは?」と私自身は思いましたけども)。また聞きの情報でもありますしね。

 友人Tにしろコメント主にしろ、そうした事件を見聞きしてしまってだんまりを決め込んだことに対して少なからず後悔だとか、罪悪感を覚えていたのだろうというのも推測できます。

 だからこそ、年数がたってからこうして人に打ち明けるのだろうと思いますしね。少しでも肩の荷をおろしたいからこそでしょう。


 ただその「女性たちに注意喚起ぐらいしかできない」という結論には、私自身、なんだかもや~っとしたものを覚えました。

 あの時、女性を助けるとか、事件後に通報するとかできなかった自分のことを悔やんでいる、今後は同じような場面に遭遇したらきっと助けたいと思うし通報だってする、性犯罪は絶対に許してはいけないと思う……みたいな、あくまでも「男性たちに向けての話」という流れならば、あそこまでは叩かれなかったと思うのですよ。

 しかし実際は「女性たちにむけて」「君たち気をつけなさいね」という結論。これはないわ……。


 さらにこの方、お嬢さんたちの父親になった人とは思えないほど非常に「他人事」。どこまでも「他人事」なのが気になりました。

 案の定というのか、ご自分のお嬢さんたちの写真を載せたコメント(いやこれも、お嬢さんたちのプライバシーを考えるとよろしくないのですが)に対して「この子たちにも、将来遭うであろう性被害に対しての注意喚起をしてあげてくださいね」とコメントをつけられてしまっていたのですが、主さんはそれに対して異常なほどの過剰反応をしました。

「気持ち悪い」と連呼して。


 いやいやいや。

 その「気持ち悪さ」を、女性と生まれたなら多かれ少なかれ味わうのがこの国です。

 輪姦まではいかなくても、日常的に起こっている痴漢行為、セクハラなども含めたら本当に日常茶飯事。

 注意喚起するなんて当たり前のこと。

 いかに「自分ごと」として考えていないか、「自分の家族にも起こりうる災難」だという認識が薄かったかの証左だなと思いました。


 ただ、女性(だけとも限りませんが)に対して注意喚起さえしておけばいいっていうのもおかしくて。

 普通、日本に暮らしている女性なら多かれ少なかれ性被害に対して注意しながら、または怯えながら生活しています。注意喚起しないよりはした方がマシだとはいえ、大事なのは女性たちに注意をうながすことよりも、むしろ加害をする側に注意をうながし、しっかりと「犯罪をしにくい環境」を作り出すことのほうでしょう。

 性被害に遭ったとき、女性はいまだにしばしば「君が悪かったんじゃないの」といわれたり、茶化されたりするという二次被害を(こうむ)ります。被害に遭ったのは、その女性が慎重に行動しなかったからだとか、「汚い」女だったからだとかいうひどい誤解がまだまだ横行しているからです。


「女性に注意喚起しておけばいい」という考え方は、そういうときに女性を責める理由をつくってしまうという危うさもある。「あなたが十分に対策をしなかったから」とか「そんな時間に外を歩いていたから」とか、言おうと思えばいくらで言えてしまう状況を作りかねない。

 それは結局、加害者を擁護しているのと同じになってしまう。

 加害者というのは本当に安易に「だって被害者だって悪かったんだから」という風に自分を擁護し、自分の罪悪感を薄めようとするものだからです。とにかく被害者が悪かったことにしようとする。自分に都合のいい「ストーリー」を作ろうとする。これはいじめでもほかの犯罪でも同様です。

 だからこそ、今回のコメント主さんに批判が集まったのだともいえる。


 その後、この方はコメントを削除してアカウントも消すとおっしゃっていましたが、基本的にあまり女性たちがなぜここまで怒って批判してきたか……という理由にはどうも、相変わらずピンときていないようでした。

 ただただ、お嬢さんたちに関する画像を使って自分は攻撃されたんだ、被害者なのだという意識ばかりだったように見えました。残念なことです。


 みなさまはどうお感じになるでしょうか。

 今回はこのあたりといたします。

 ではでは。


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― 新着の感想 ―
[一言] よくある加害者の 「罪を告白して謝ったから私は許された」 みたいな感じを感じました 被害者は関係ないんです 被害者やその家族の事なんかどうでも良いんです 自分の心が休まらなかったんでしょうね…
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