小説を書くことに関する本
こちらのエッセイでは、大変お久しぶりです。
一旦「完結」マークをつけていたのですが、今後もたまに思いついたら開いて追加、みたいなことにしようかなと考えております。
今回は、他エッセイ「つれづれ司書ばなし」の方で更新してもよさそうな内容のため、迷ったのですがこちらでの更新といたしました。このまま放っておくと、またどんどん「毎日更新○年目のご挨拶」だけするエッセイになっちゃいますしね(多分つぎはきっとそれです・苦笑)。
さてさて。
というわけで、今回は基本的に本の紹介となります。
いま働いている学校図書館に入れた本なのですが、どちらも小説を書くことについて中学生でも参考にできる資料です。なにかご参考になれば幸いです。
一冊目は、こちらです。
「小説を読むための、そして小説を書くための小説集」
桒原丈和・著 / ひつじ書房(2018)
タイトルそのままではあるのですが、こちらは桒原さんが大学の学生さんたちに対して講義された内容を本にまとめたものになっています。
毎回、過去の小説家の作品をテクストとして挙げてあり、全文が載せられています。選ばれている作家と作品群も興味深いものがあります。
前から挙げていきますと、
江戸川乱歩「二銭銅貨」
エドガー・アラン・ポー「黄金虫」
オイレンベルク(森鴎外・訳)「女の決闘」
太宰治「女の決闘」
太宰治「葉」
この本の中では、
「人は過去に誰か他のひとの作品を読んだからこそ、自分の作品を書こうと思うようになるものだ」
「だから、過去の作品から後年の作家がどのように影響を受け、自分の作品をつくったのか、その具体例を見てみよう」
というのが、最初のテーマになっています。それがちょうど江戸川乱歩の「二銭銅貨」とエドガー・アラン・ポーの「黄金虫」によって端的に示されています。
この本には必ず実践編がついています。こちらの二作品に関して言いますと、学生が作品を見比べて、江戸川乱歩がエドガー・アラン・ポーの作品のどこに影響を受け、どのように自作品へと昇華させていったかを考えるという実践編になっています。
おそらく大学の講義では、それをレポートにするなどして提出させているのでしょう。
その作家がさらに過去の別の作家の作品からどのように影響を受け、自分の気質と時代に合うものへと内容を昇華させていったか、そういう軌跡をたどることができます。
オイレンベルク「女の決闘」と太宰治「女の決闘」の項では、オイレンベルクの作品内では描写されていない部分について、太宰治が自分なりの解釈を交えながら「試しに描写のない部分を書き加えてみたらこんな作品になるよ」……というような、面白い試みをしています。これまた、なかなか興味深かったです。
実践編では学生も、「作者オイレンベルクが敢えて語っていない部分について色々に想像し、試しに書いてみよう」という流れになっていました。
ついでながら、さまざまな事情があって希望する大学に通うことができなかったという人でも、こうした本に触れることで講義の一端を知ることができる。これもまた、読書の素晴らしい面でしょう。
さて、もう一冊紹介したい本があります。
こちらはもう少し具体的な、小説を書くためのテクニックに関する本です。それも特に、ライトノベルを書くための本です。
「絶対誰も読まないと思う小説を書いている人は、ネットノベルの世界で勇者になれる。 ネット小説創作入門」
榎本 秋・榎本海月・榎本事務所・著 / 秀和システム(2017)
こちらはもう、タイトルを読めばそのままなのですが。
キャラクターの作り方、世界観の作り方、プロットの立て方に始まって、ネット上で自作品についてあれこれ言われた時の気持ちの持ちようなんてことまで、こと細かにわかりやすく解説している本です。
こちらは完全に若い方向けだなあという印象です。もはやハウツー本に近いですね。
非常に読みやすいものなので、「小説書いてみたいな」と軽く考えているだけの中学生でも、十分に要望にこたえているのではないかなと思いました。
最初に紹介した「小説を書くための……」のほうには、他にも小説を書くうえで参考になる書籍がいくつも紹介されています。資料としても有意義な本だったので、なにかの参考になりましたら幸いです。