122 映画「サブスタンス」
はい、こんにちは。
今回は珍しく欧米作品のご紹介です。
公開されてのち、SNSでちらほらと感想が流れてきて初めて存在を知ったぐらいなことだったのですが、主演があの「ゴースト ニューヨークの幻」であまりの純粋な美しさで世界に衝撃を与えた俳優デミ・ムーアさんであることを知って、俄然見たくなってしまい……。
とはいえ、事前からすでにこれがホラー系の作品であることはわかっていたので、ちょっと恐る恐るというのか、動機としては「怖いもの見たさ」が大きかったです。
もうひとつ、SNSでこれを観た女性の感想が流れてきたのですが、どうやらその人が観たときには同じ回に複数の男性客がいたらしく。その男性客が、あちこちで笑ったり「ありえへん(笑)」みたいな反応だったことが、その方はとても疑問かつ少し腹立たしく感じられたそうで。
その点でも「いったいどのような映画なのか?」と興味をそそられてしまったわけですね、はい。
では、まず作品のデータからご紹介。
〇「サブスタンス」(原題:The Substance)
2024年製作(日本公開は2025年5月)
監督・脚本:コラリー・ファルジャ
製作:コラリー・ファルジャ / ティム・ビーバン / エリック・ファルナー
撮影:ベンジャミン・クラカン
出演:デミ・ムーア / マーガレット・クアリー / デニス・クエイド ほか
イギリス・フランス合作 142分 R15+
てっきりアメリカ映画かと思っていたら、なんとイギリス・フランス合作。たしかにあの流れはアメリカ映画っぽくなかったな……と今更ながら思ってみたり。
主人公エリザベスは、かつてオスカーも獲ったことのある大変な人気女優だった女性。50歳を迎えるに至って、担当していたダンスの番組をプロデューサーの男によって降板させられることに。
プロデューサーは彼女の前ではさも残念そうに振る舞いますが、その腹の底を偶然にもエリザベスは耳にしてしまいます。要するに「あんな年を取った女にいつまで番組をやらせておくつもりだ! もっと若い可愛い女を見つけてこい!」と部下に叫んでいるのを。
ショックを受けるエリザベス。
そんな時、ひょんなことから「若さ、美しさ、完璧なあなた」が得られるという謎の誘いを受け、それを実現する薬「サブスタンス」を手に入れることに。
最初は半信半疑で躊躇するエリザベスでしたが、やがて遂にそれを注射してみたところ、背中が割れ、そこから「スー」という若さと美貌を兼ね備えた大変な美女が生まれてくるのでした。
「サブスタンス」を提供してくる謎の存在は「あなたは一人だ」と何度もエリザベスに警告。決まりをしっかりと守り、一週間おきに「エリザベス」と「スー」を交代させることを義務づけられます。
ところが、人々の注目を浴び、例のプロデューサーにめちゃくちゃに褒めそやされて有頂天になったスーは(とはいえ中身はエリザベス本人なのですが)次第にそのルールを破るようになり……。
さあ、わかりますよね。
そう、破綻のはじまりです。
そこからはもう、どんどんエリザベスの悲しくも恐ろしい狂気の世界へと転がり落ちていくのですが、もう目が離せません。いやもう凄かった。
なにが凄いって、とにかくグロい。そして非常にセクシャル。
全体を見て「よくデミ・ムーアこれを演ろうと思ったな……」と唖然とするようなシーンの連続。まさに怪演。怪演以外の何物でもないですよ、これは……。
作品は2024年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞。第75回アカデミー賞では作品賞ほか計5部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。
エリザベスを演じたデミ・ムーアも、キャリア初となるゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネート・受賞し、アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされたそうです。いや納得ですよ……。あの体当たりの演技、誰にでもできるようなことじゃないです、本当に。
若々しく美しい「スー」を演じたマーガレット・クアリーは「哀れなるものたち」でも拝見したことのある女優さんですが、いやもうほんっっとうに、美しい!! でもその美しさがどんどんアダになっていき、気の毒というか可哀想というかなんともいえん気持ちにさせられます……。
若さと美しさだけした見ていないこの現実社会の男たちの目線と、それに翻弄されてどんどん狂ってゆく悲しき女性の姿、そして今も続く強力な「若さ崇拝」やルッキズムの愚かしさ、バカバカしさをこれでもかと見せつけられる作品でした。
怖いもの見たさでもいいので、よかったらどうぞ……。
もう一回観たいかと言われると「ノー」と言ってしまいますが、決して忘れられない映画体験ができることは請け合います、はい……。
ではでは。




