109 映画「侍タイムスリッパー」
はいこんにちは。
今回は、次第に話題沸騰してきたこちらの邦画のご紹介。
私も最初は「え、そんな映画あるの?」みたいな認識だったのですが、8月のたった一館での公開以降、だんだんとSNSでのみなさんの「よかった!」のご感想をはじめ、高評価の口コミが多くなってきて全国展開となり、ついにいつもの「塚口サンサン劇場」さまでも上映が始まったタイミングで観てまいりました。
〇「侍タイムスリッパー」
2023年製作
監督・脚本・撮影:安田淳一
出演:山口馬木也 / 冨家ノリマサ / 沙倉ゆうの ほか
日本 131分 G
この「監督・脚本・撮影」が全部安田淳一さんおひとりである、という点からも察せられるとおり、こちらはいわゆるインディペンデント映画(インディーズ映画ともいうらしいです)つまり自主製作の映画。当然、予算もとても少なく、それでも映画の質を極限まであげたいということでパンフレットすらないという状況。
それがここまで口コミから全国展開に広がり、あちらこちらで監督や出演者による舞台挨拶が行われる運びになって、これはもう大成功と言ってよいのではないかと。
そして、口コミでここまでになる映画にハズレなし! というジンクスをまさにそのまま体現したかのような作品でした。
冒頭は、幕末の日本。
会津藩士である高坂新左衛門(山口馬木也さん)は、家老の命令により同僚の藩士とともにとある長州藩士を討つことに。
相手の藩士と切り結ぶも、折悪しく落ちた雷により、いきなり現代へとタイムスリップ!
気を失った高坂が目を開けると、そこは不思議な町。
なんとそこは、現代の時代劇撮影所だったのです。
いやもうここまででつかみは十分!
よくあるタイムスリップもの……と思うなかれ。
なんといっても、高坂役の山口さんが本当に素晴らしいのです。会津弁でしゃべる、朴訥で真摯で誠実で、どこかおかしみもあって可愛い中年の武士という役どころを、「本当にその人なんじゃないか」と思わせるほどの説得力を持って演じておられるのです。
高坂は次第に、140年も前に幕府が滅んだこと、会津藩の悲惨な顛末などを知ってゆき、深く傷つき、悲しみます。一度は自決しようかとすらするのですが、そこを温かく優しい京都の町の人々に救われます。
長州藩士と切り結んだお寺の現代の住職夫婦にひきとられ、高坂は次第に「自分にできることはこれしかない」と、時代劇の中で斬られ役として働くことを決意。
幕府が滅んだことを悲しみつつも、現代人がいかに豊かに暮らしているかを知って落涙するシーンがあるのですが、ここがもうこちらまで涙する。
コメディ部分も本当にキレッキレなので(高坂さんがクソ真面目な顔であれこれ必死で動きまわっていればいるほどおかしい)、劇場でもしばしば、あちこちでクスクスと笑い声が聞こえていました。
大いに笑い、泣けて、主人公を応援したい気持ちになる。
さわやかで、昨今では斜陽といわれる時代劇の世界についても考えを馳せることができる。本当に秀逸!
ぜひぜひ、機会がありましたら一度ごらんください。
ではでは!




