表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コスモ  作者: 香月 宙
9/10

どこかへ

何も・・・何も考えたくない・・・


ここに存在すること自体を 拒否したいくらいだ・・・


なんだよミュースって! なんだよ 使命って!

勝手に 一方的に こんな事を事実だと突きつけられても

理解なんか できるもんか!! 


父さん・・・父さんは・・僕の父さんなのか・・?

細胞レベルでは 親子 そして魂は・・仲間ってか!!?


なんだそれ!!! 



あと数時間もすれば 母さんやひなが起きてくる。


普通にしていられる自信が無い。

それまでに すべてを受け入れるなんて・・・無理だ・・・


どうすりゃいいんだ・・・


僕は・・・僕は 人間じゃないのか・・・!?

 





このショック状態を怪しまれないよう 周到な計画であるかのように

次の日 静かに父は逝った。

当然のように パソコンも 普通のパソコンに戻っていた。


葬儀の細かい雑用に追われるうちに 少しずつ冷静さを取り戻し

考えるという行為そのものから 開放されつつあった。

今は 自分の運命や周りの環境を嘆こうが 恨もうが 

涙や ため息の渦のなかで 埋もれていられるのが有難かった。


たくさんの弔問客。

忘れたくても 忘れられない事実が そこには待っているはずだ。

どの人が・・・どの人がミュースなんだ・・

僕に近づき 使命とやらを伝えにくるのは・・・どいつなんだ・・・


悲しいのか 悔しいのか 怒りたいのか 自分で自分の気持ちがわからない。

いつしか 恐怖にも似たこの焦燥感を 唯一理解するであろう「その者」を

探す事でしか 自分の居場所がなかった。


しかし 僕の予想どうり あの時の外国の見舞い客を見つけるのはおろか

探せば 探すほど 見知らぬ人々に囲まれ 飲み込まれていった。





夜 ひと段落ついて 母やひなと三人きりになった。


この二人と・・・僕は・・・家族であって 家族でないのか・・・

あぁぁぁ・・・

二人の顔さえ まともに見られない・・・


「太 今日から 三人。頑張ろうね。」母が言った。

「たーくん・・・」ひなは 泣き顔をいっそうクシャクシャにしながら 抱きついてきた


さ・・触らないでくれ・・・

今 ひなの気持ちまで僕に送り込んでこないでくれ・・・

そう思う気持ちが強かったのか その時 僕の「力」は封印されたままだった。

いや・・

僕は 自らこの「力」を使おうとしたあの時から

自分でこの「力」をコントロールできるようになっていたのだ。


「ああ。大丈夫だよ。僕が二人を守るよ。」


そう・・・僕が・・・

守る?・・・はたして そうなるのか・・・






混沌とした気持ちのまま 着替えようとした僕は ポケットにそれを発見した。


パソコンの「メモリーチップ」だ。


誰が・・・・いつの間に・・・・


僕に近づいてきた者は すべて最新の注意を払っていたはずだ。

それでも 気づかないうちにこんなものを・・・・


もう その沢山の人々の顔を思い出す努力なんて やめた。

分からないようにしたいんなら そうすればいいさ。


このチップが また一歩 僕をどこかへ押し出すはずだから。


どこかへ・・・



 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ