目
あれからずっと パソコンが・・・というより
父が気になって仕方がない。
父が帰宅した時 わざとパソコンの話題に触れた。
「ありがとう。助かったよ。」
「おおそうか。よかった。」
「ところでさ 父さんのパソコンって変ってるね。」
「そうか?お前のと同じ機種だろ。」
「そう・・・じゃ勘違いか・・・」
父の中に何か変化や 動揺がないかと思って注意深く見ていたのだが
いつもと変らぬ穏やかさ 笑顔 なんということもない会話
やはり 僕の見間違いだったのか・・・
ひなたに なんか変とか言われた。
そりゃそうだよな。
あれ以来 父も母もひなも 自分自身にさえ 何か釈然としない思いがあり
注意深く様子を伺ってるような気分だ。
そして そんな平凡な毎日を打ち破るように
ある日突然 父が倒れた。
原因はよくわからないが 意識が戻らない。
何日かして つきっきりの母と交代することになった。
父の顔を見ていると いろんな事が思い出される。
旅行行ったこと 怒られたこと 部活のこと 受験のこと
今思えば どれもこれも 僕のすべてを理解し 包み込んでいてくれた父だった。
早く 元気になれよ!! 心からそう思った。
しだいに 見舞い客がひっきりなしに現れ
なかには 外国からの訪問客というのもあって
父の交友関係の広さに 改めて驚いた。
ところが その外国の見舞い客が おかしな行動をとったのだ。
意識の無い父の顔を じっと覗き込む彼の様子に 何か不思議な感じがし
席をはずすふりをして 視線から外れたところで様子を見ていた。
すると 周りを伺った後 彼は父の手に自分の手をかざし
大きくうなずいた・・ ような気がした。
うなずく?・・・
そして次の瞬間 僕は 彼の「目」をみて驚愕した。
「目」が・・・
止まっているのだ!!
止まっているとしか表現の方法が見つからないが・・・
色も動きも無い 無機質に止まっている道具としての「目」になっていたのだ。
な・・・なんなんだ!? 何をしてるんだ!?
僕はあまりの驚きに立ちすくんだ。
が・・・やがて ハッと気づいた。
あの「力」だ。
『サイコメトリー』しているのだ
なぜ・・なぜ彼が・・なぜ父に・・・
しかし 同じ感覚を持った者として 触れてはいけない部分だと 瞬時に悟った。
彼は帰り際 流暢な日本語で「お大事に」と言い
そして 部屋をでる時 振り返って僕の顔を見つめ ニヤリと笑った。
なんだかわからないが ぞくっとする笑いだった。
彼について詳しく調べよう。そう思っていたのだが
それから先 注意深く様子をみると そんな行動をする人が
代わる代わる現れるのだった。
どうなってるんだ!?
父の周りに 何故こんなにたくさんの「サイコメトラー」が・・・
そして なぜ今ここに父のところに集まってくるんだ・・・
僕は今まで この「力」を認めたくなかったし
自然発生的に起こることで あえて自分からとか
ほかの誰かに試そうとか 全然考えた事もなかったが・・・
僕は決心した。
今夜 父に「サイコメトリー」をしてみよう。