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コスモ  作者: 香月 宙
1/10

 双子

バタン!

「うわぁ〜!!どいて どいてぇ〜!!」

勢いよく飛び出してきた妹と 階段でぶつかりそうになった。

その瞬間に

「痛っ・・・」

僕の肘に激痛が走った。


「うぃってくぃまぁ〜す!!」

パンをくわえたまま走り出す妹の肘に 包帯が巻かれているのを見逃さなかった。

(やっぱり・・)


「あらあら・・気をつけなさいよ〜!!」という母に いつもの笑顔の見つけた。


よかった。たいした事なさそうだな。


「たーくんも早くしなさいよー!!」

「わかってるよ。ひなは朝練か?」

「そうなのよ。昨日肘が痛いって泣いてたくせにね。」

「頑固だからな ひなは。」


いつもの朝 いつもの会話 ・・・

それが徐々に色を変えていることに 最近気づき始めた。



僕は ある「力」を持っているらしい。

それは

双子の妹『ひなた』に起こっている事を 彼女に触れることで瞬時にわかるのだ。


それは 多くの双子にありがちな 

一緒の行動 一緒の感性 一緒の結果だけでは済まされない 

というところまで確信し始めた。


僕がその「力」に気づいたのは 中学生になった頃だった。

それまで 双子であるがために 何をするにもずっと一緒だった生活パターンも 

男女という仕切りで 体育や 家庭科や 部活動など 別々の枠組みになっていった。


体育でころんだ記憶 

家庭科で針が刺さった記憶

テニスで腕が上がらなくなるほどの素振りの記憶 


あるわけがないそんな記憶の数々が 触れたその瞬間に感覚として残るのだ。


最初の頃は 当然理解できずに ≪偶然≫とか≪双子の宿命≫とか 

そんなんで 自分のその「力」をごまかそうとしたし 認めたくなかった。


しかし 時はすぎ 別々の高校へ通うころ

その事件は起こった。


サッカーの練習で遅くなった夜。リビングに入った僕の目に飛び込んだのは

泣きながら母に抱きついている ひなだった。

長かった髪がバッサリと切られ テニスのラケットもガットが切れていた。

一目で「いじめ」だとわかった。


「ひ・・ひな・・大丈夫か?・・」

「あ・・たーくん。」

「うん・・もう大丈夫だよ。」

「そうか・・短い髪もいけると思うぜ!」


 あ・・・・・・・・あああああ・・・・


思わず触れたひなの髪から 

その恐怖 怒り 驚き すべてが僕の中に流れ込んできた。


振り回されるはさみ 

髪を ひっぱりつかんで離さない 日焼けした手

「生意気なんだよ!!」怒鳴る声


目隠されたのか・・

だが・・恨みにゆがんだ女子高生の顔が見える。


あぁ・・・・こいつ・・誰なんだ・・


双子の僕が言うのもなんだが

妹のひなたは 顔は まぁ世間で言う「かわいい」タイプ(ということにしておこう)

で、運動神経だけは なかなかのもんで 

中学時代も数々の校内記録を塗り替えてきた。


その運動神経と 中学からのテニス漬け 負けず嫌いが功を奏し

高校入学すると メキメキ頭角を現し

先輩方を差し置いてのレギュラー入りとなった。


その「嫉妬」って事なんだろうなぁと 漠然と感じた。



その時はそれで終わったのだが

しばらくして ひなのテニス合宿の写真を見た時


こいつだ・・


そして確信した。ぼくの「力」・・・


【サイコメトリー】



双子の妹が 極限の恐怖や怒りを感じた時だけ その「力」は現れるらしい。


・・と思っていたのだが・・・

そんな「力」にも慣れっこになってきた最近

流れ込んでくる ひなの記憶の映像に 「あること」があるのに気づき始めた。


そう最近色を変え始めたという その事実だ。


その「あること」とは

映像として観るその記憶に 何かの文字?らしき物が見えるのだ

象形文字のような 難しい古代文字のような・・


しいて言うなら 『幾何学模様文字』とでもいうようなものなのだ。


だが・・・


違和感が無いのが 不思議なのだ。

むしろ

なつかしい とでもいいたいような感覚なのだ。



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