表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

さらば小学校

作者: akito

 ある小学校に三人の生徒が、複数の男子生徒に囲まれていた。

 この学校は、とても規律の厳しい進学校であったのだ。

 彼らの居るその場所には、粉々に砕かれた花瓶か散乱していた。

 

 事の発端は、三人の生徒が教室でチャンバラごっこをしている最中であった。

「パリ―ン!」

 な、なんだ! 三人はその音のする方を振り返った。するとそこには、割れた花瓶が落ちていたのだった。

 その音に気付いた、他の生徒たちは教室に駆け付けた。

 その生徒たちが見たのは、明人と海斗、綾子の三人がほうきを持っている中、花瓶が床に落ちていた状況だった。

 生徒たちはその光景を見るや否や、三人を問い詰めた。すると、困った三人の後ろからある生とが出て来た。そいつの名前は幸助。

 彼はいつもはその三人と一緒にチャンバラごっこをしている仲間であった。

 しかし幸助はその様子を見るや否や、生徒たちと一緒に彼らを責めて来たのであった。

「お前、なんでそいつらの味方してんだ?」

「うるせえ! お前についていたら、命がいくつあってもたりねえんだよ」

 いつも仲のよい四人だったのに、幸助は明人の事を睨みつけるような眼差しで見つめてくるのであった。確かに、幸助はチャンバラごっこをするときは、いつも明人に細心の注意を払うように言っていたが、彼はそれを全く受け止める様子を見せなかったのだ。

 この学校では、花瓶を一つ割っただけでも退学になるのほどの厳しい小学校である。

 それを危惧した三人は、彼らを口止めしようとしたが、それを全く受け入れてくれない。

「幸助くん……そ、そんなあ」

「海斗、そんな奴ほっとけ!」

「はは、お前たちは見捨てられたんだよ」

「ふん、幸助なんて最初っからいらないんだよ」

 それを聞いた、幸助は少し顔を顰めていた。

「明人、お前……」

「明人くん! まだ話し合えば間に合うよ」

「そうよ明人! なんかの間違いだって」

 そんなこんなで、三人の犯行は全校に噂された。

 そんな矢先、ある一人の男子生徒が、犯人は海斗と綾子だけが犯人だと言う文章が全校の教室の黒板へ書かれていたのだ。

 そこへ、ある生徒がその文章を書いている人を見つけた。

 それはなんと明人であった。

 その話はたちまち広がり、明人に対しての皆の目線は険しい者となる。

 それを聞いた先生は、明人のみを今月中に退学させることにした。それを職員室で告げられた明人は教室へ戻ってきた。

「最初に裏切ったのは明人くんなんだから!」

 海斗が、戻ってきた明人に対して急にそう言い放った。

 そう、実は明人が黒板に二人の犯行文章を書いていたのを見たのは海斗だったのだ。

「ふん……騙されたままなら良かったのにな」

 明人は海斗に悪びれる様子もなく答えた。

 すると、それを聞いた綾子と幸助が近寄ってきた。

「どういうことよ」

「明人は最初から僕らを騙す予定だったんだよ!」

「そう言うことだ! お前ら二人も奴の手のひらで踊らされていたって訳だ」

 三人はそう言うと、明人を軽蔑した目で見てきたのである。

「あ、明人がそんな人だったなんて知らなかったよ」

「ホント、最低ね」

 俯く明人は顔をあげて言い放った、

「お前らさっさと行ってしまへ!」


「ガチャ」

「ああ、せいせいしたな」

 明人が三人に対して罵声を浴びせると、彼らは教室から出て行ってしまった。 



 放課後の休み時間、いつもは明人の周りによってくる仲の良かった幸助、海斗、綾子たちは、他のグループの輪に入り楽しそうにおしゃべりをしていた。

「でさーはは、そうなんだよ――」

 すると急に海斗が明人の隣に現れた。

「お前、なんでこんなとこに居るんだよ」

「……別に」

 海斗は別のグループの人達に呼ばれた、

「まあ、こんな奴ほっとこうぜ!」

 そう言われると、海斗は明人をじっと見つめている。

「海斗なんだよお前」

「…………」

 

「おい、海斗行こうぜ! そんな奴ほっとけ」

「う、うん! 待ってよ皆!」

 再び呼ばれた海斗は別のグループの方へ行ってしまった

 

 ある日の朝の職員室にて

「明人くん、君はホントに行ってしまうのかい?」

「ええ、あんなくそったれな奴らとは、早くお別れしたいですよ」

「そうか……元気でな」

「はい」

 どうやらこの日が明人の退学日らしい。

 彼が職員室からでてくると、そこには海斗か立っていた。

「なんだ、まだ俺に用があんのか?」

「明人くん……君は……」

「何なんだよ!」

 そう言った明人を、いつもはおとなしい海斗が拳を奮わせ殴ってきた。

「ぐはっ」

「お前なんて早くどこか遠くにいっちまえ」

「へっ、やっと本性が現れたってわけか!」

 そこへ、綾子が走ってきた。

「ちょっと海斗、もうあんな奴にはかかわらない方がいいわよ」

「綾子……てめえも何しに来たんだよ」

「うるさいわね! あんたが早く此処からいなくなるのを見届けにきたのよ」

 明人は少し周りを見渡す……。

「……幸助の奴はどこに行った?」

「あんたの顔なんて見たくないってさ」

「そうか……まあ、俺だってあんな奴の顔見たくねえよ!」

 そうやって明人は少し悲しい表情をしながら下駄箱から靴を履き替えると、正門を潜って帰って行こうとした。そのとであった!

「おい、明人!」

「…………」

「お前、どこに行くんだよ」

「どこだっていいだろうが! お前には関係ねぇ」

 そこに来たのはなんと幸助であった。彼は、明人を呼び止めると転校先を聞いたが、答えてもらえない。


「知ってるぜ」

「な、何!」

 幸助は悲しそうな顔をしながら、明人に言った。

「――どこに行っても俺たちは友達だからな」

「な、なんだよ急に……お前が何を知ってるんだよ」

「俺だけじゃねえ、海斗も綾子も知ってたんだ」

 そう、実は明人はわざと海斗にばれる様にして、黒板に文章を書いていたのだ。

 明人は自分だけに罪をなすりつけ、残りの二人を助けようとしたのだった。

 それを知った幸助は、明人の所へ飛んできたというわけだ。




「な、なんで今さら」


「だ、だってよ――」

「ふん、俺は行きたくていくんだよ」

「お、お前……」

「じゃあな、あばよ」

「――俺達の為に行くんだろ?」

「……なんで、それを」

「せ、先生から聞いたんだ……」

 なんと実は、最初に花瓶を割ったのは明人たちではなかったのだ。

 あのとき、教室でチャンバラごっこをしていたときに、幸助たちは他の生徒とサッカーをしており、そのボールが教室に飛んで行ってしまい、花瓶を割ってしまったのだ。

 その一部始終を先生は、教室の監視カメラで確認していたのだった。

「へ、今さら」

 すると、海斗が明人を追いかけて来た。

「明人くん!」

「か、海斗お前までなんで」

「先生から聞いたんだ」

「どいつもこいつも、今さら俺は殴ったお前を許す気はねえよ」

「あ、明人」

「さ、綾子お前……」

「これのせいなんでしょ?」

「良く見つけたな」

「せ、先生が見せてくれて……」

 綾子も明人の方へ向かってくると、先生からもらった監視カメラの映像のプリントを手に持っていたのだ。

 するとそこには、花瓶にボールが当たる瞬間を直視していた明人の姿があったのだ。

「けっ、だから何なんだよ!」

「俺は実は、このプリントの画像を先生からこの前見せてもらったんだよ」

 そう言う幸助に対して、明人は言った。

「じゃあお前はそれを知ってて俺を仲間外れにしてたんだな、ムカつくぜ」

 すると綾子は明人に言った、

「先生はこのこと、幸助には話してなかったって」

「なに? じゃあなんで幸助はこのこと知ってたんだよ」

「……見てたんだ」

「お、お前」

 そう、本当は幸助が蹴ったボールが花瓶にあたった様子を、明人が見ていたことを全て幸助は知っていたのだ。それなのに、明人は幸助の事を先生に話すことなく、自分だけが退学になることを選んだのだ。

 幸助は涙を浮かべながら明人に言った。

「明人、お前って奴は大バカ野郎だ」

「う、うるせええ」

「俺も、きっと行くから待っててくれよ」

「ばかやろう! 来るんじゃねえ」

「私も行くよ」

「僕も!」


「お前ら……」

「俺たち、どこに行っても友達だから!」


「ふ、じゃあな……」

「明人おおお――――」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ