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正義

ある所に正義感あふれる青年がいた。ごみのポイ捨て、信号無視、いじめ、その他もろもろを決して許さないまじめな青年だ。


 青年は今日も不良に説教をしていた。


「おい、じゃまだよ、どけよくず。」

「ああん?おいお前、あんま調子乗るなよ?」

「何だと?今なんて言った?」

「うう、・・・・」

不良は最初の威勢とは裏腹に、青年の今にも人を殺しそうな剣幕に、つい引いてしまった。


「結局ビビッて何も言えないのかよ、チキンが。」


青年は逃げる不良に向かって捨て台詞を吐いた。不良は勝てないと見て、一目散に逃げてしまった。

 

「たく、どいつもこいつも・・・。」


彼は成績優秀、スポーツ万能、知名度の高い名門大学に通う三期生だ。将来の夢は警察官。悪い奴を片っ端から捕まえるのが、彼の野望だ。


 青年はたまたま道端で友人と出くわした。


「なんだどうした、奇遇だな。ちょっと話すか?」


「そうだな、地元まで歩くか。」


彼らは幼稚園からの幼馴染、高校からそれぞれ違う学校に通っているが、いまでもこうして会って話す機会が多い。

 しかし、この二人、会っては喧嘩ばかりしている。原因はお互いの慣性の違いからだ。青年は曲がった事が大嫌いの正義感あふれる青年。友人は自分に甘く、他人に文句ばかり言うだめな性格。


まじめで正義感あふれる青年にとってはどうにも我慢できなかった。


またその日も喧嘩をして分かれてしまった。


毎度の事なのでお互い気にしていないようだが、はたから見れば、なぜそんなに仲が悪いのに一緒になってるのと不思議に思うだろう。

 

青年は苦悩していた。自分は間違ってない。自分のやっている事は間違いなく正義のはずだ。なのに人々から自分の考えは決して認められない。どうしてなんだ。青年は苦悩していた。

 

青年は学校が休みの日にふと散歩に出かけた。特に考えは無い。しかし家にいるのもなんだから暇つぶしであった。


 歩いていると、他大学の学生が道端で騒いでいた。周りに民家もあるので、ここで騒ぐと大変迷惑だ。


しかし青年はその時は多勢に無勢もあってか注意できなかった。青年は何ともいえない葛藤に襲われた。


この大学生たちも、他の奴らが騒いでいたら同じようにうるさいと思うのだろう。自分がやられて嫌なことをなぜ人にやるのだろうか。青年は理解に苦しんだ。

 

彼は電車に乗った。青年は出口横にもたれ掛かりながら周りを見ていた。中では子供が走り回っているのに親は注意していなかった。青年は自分の方に走ってくる子供に対して

わざと足を掛けた。


子供は勢い良く顔面から地面に激突し、激しく泣いた。親は何が起きたのかわからず、子供に駆け寄り無事を確かめた。


周りの人間も一瞬の事なので何が起きたのかわからない。青年の心は何とも言えない達成感で満たされた。


注意できない親や周りの大人に代わって自分が制裁を加えた。彼は自分のやっている事は紛れも無い正義だと確信していた。

 

青年は自分の家の最寄り駅から三つほど離れた駅で降りた。ここから自分の家まで歩こうとした。彼はまたも、自分の心に満たされない何かを埋めるために、歩き出した。

 

次の日、彼は学校に行った。授業を受け終わり、友達と別れて岐路につく。


またも自分の欲望が満たされない空虚感に襲われた。


と、そこに大声で周りを威嚇している自転車に乗った、意気の良い高校生の集団がいた。


昼間とはいえ、住宅街でこれだけ騒げば迷惑だろ、そんな事もわからないのか?この社会の底辺め。


そう考えながら彼は彼らが目の前を通り過ぎるときに、自転車の側面を思いっきり蹴った。


「うわあ!!!」


高校生は勢い良く転んだ。高校生たちも、青年が蹴ってきたことはわかったが、あまりにもいきなりだったのでどうしていいかわからず、とりあえず転んだ高校生に駆け寄った。


青年はまたも心地よい感情に浸った。誰もができ無かったことを自分はした。自分は世の中の為に一役買った。自分のやってることは賞賛されるべき事だと絶対の自信を持った。


結局その高校生たちは、青年の想像も出来ない行動にビビッて何も出来なかった。


青年はまたも満足気に岐路についた。


「おかえり、あんた聞いたわよ、バスケの助っ人で大会出て、全国ベスト4だったんですって?あんた凄いわね!」


「まあね。」


「それに模試でも全国で25位?凄いわね!今後ともがんばってね。」


「ありがとう母さん。」


絵に描いたような完璧人間、おまけに義理に厚い。


「やべ、さつきから電話着てたのか。」


おまけにモテる。まさにすべてにおいて完璧だった。


次の日、青年は彼女と待ち合わせの為、駅前まで歩いていた。


「おい!!!」


彼は突然誰かに呼び止められた。


「はあ?」


どうやら昨日の高校生たちのようだ。


「なんだよクズ、仕返しか?」


「ああそうだよ、随分調子乗ったことしてくれたなてめえ?」


10人ほどの集団が彼を取り囲んだ。


「うげっ」


全員金属バットを持っている。


「おいおい、この人数でしかも武器持ちかよ、てめえらにプライドはn」


「はあ?こっちはてめえをぼこぼこに出来ればそんな物いくらでも捨ててやるよ。」


「うぐっ・・・。」


「おらあああああああ!!!」


青年は金属バットで滅多打ちにされた。


「ぎゃあああああああああ!!!」


おびただしい血しぶきが飛ぶ。


高校生は一通り殴るとすぐさま逃げてしまった。


「ちくしょう!!くずの癖にこの俺になんて事を!!!!!!」


青年は悶絶しながらもまだ自分のプライドは捨てていなかった。


そこにあの友人が通りかかった。


「ああ!お前!いい所に通りかかった!!救急車呼んでくれ!!」


しかしその友人は救急車を呼ぶ動作をしない。


「何を・・・。」


青年はその場で気絶した。


「お前のことだ。また、不良に恨みでも買ったんだろう?お前の考えは間違っちゃいねえ。でも誰もお前のことなんて認めない。お前がまず自分で気づかなきゃな。」


そういうと彼はケータイを取り出し救急車を呼んだ。


その青年は助かったという






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